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視点の行方

特殊紙市場に関する調査を実施

印刷ジャーナル 2022年9月15日

 (株)矢野経済研究所は、国内の特殊紙市場を調査し、各品種別の市場動向や参入企業動向、将来展望を明らかにした。

 特殊紙はその付加価値性によって、固定されたユーザー企業向けに安定した需要があり、用途も印刷用途から産業・工業用、各種機能紙と幅広く、需要の変動に対してもその用途の広さからある程度対応が可能な底堅い市場であった。

 一方で、新聞用紙や印刷用紙などの一般紙は需要構造の根本的な変化により減少し続けており、印刷用途で活用されている特殊紙についても同様の影響が出ている。また、産業・工業用途である産業機能紙についても、生産拠点の海外移転による空洞化や大幅な需要環境の変動、価格競争力のある海外輸入品の定着、ユーザーの海外進出先や製品輸出先での海外メーカーとの競争などにより、市場環境の厳しさが増している。

 このように特殊紙市場では、需要構造の変化やグローバル化による世界規模での競争などにより、その付加価値に対するニーズの変化も加速している。これにより、需要の回復が見込めない、または回復が遅れている品種の特殊紙が出てきていることに加えて、世界的規模での新型コロナウイルス感染拡大の影響により、品種間の需要回復の差が一段と色濃くなってきている。

 2021年度の産業機能紙市場規模(国内メーカー出荷数量ベース)は前年度比105%の14万5,410tと推計。内訳を見ると、最も構成比率が高いキャリアテープ原紙は、スマートフォンやタブレット端末、PC向けや車載向けで電子部品の需要が拡大していることから、2020~2021年度は好調に推移。次いで出荷量の多い合成紙については、コロナ禍の影響により2020年度は大幅減となったものの、2021年度は回復基調で推移している。

 環境に対する社会的な意識の高まりを背景に、ここ数年、特殊紙のユーザー企業においても環境配慮に対するニーズが高まっていることから、各品種では顧客のSDGsに貢献する環境配慮型製品の開発も目立っている。

 環境問題の1つである脱プラスチックに対する需要の取り込みに向けて、耐油紙など既存の特殊紙による紙化提案も一部実績が出ている。紙化需要は、主に製品のパッケージやそれに付随するラベルなどがターゲットとなっている。また、こうした市場環境の変化を追い風にすべく、大手製紙メーカーを中心にプラスチックの代替となり得る脱プラ素材の開発も進展している。

 特殊紙市場では需要構造が変化し、コロナ禍で品種間の需要に差が出て、総体的に成長が望みにくくなっており、ユーザーニーズの多様化も進んでいる。
 産業機能紙の主な用途である電子部品関連や自動車関連の部品については、需要自体は高水準にあるため、現状の半導体不足が解消されれば、これらに係わる産業機能紙は再び増加する見込みである。

 電子部品関連は、5G関連需要拡大やデジタル化の加速、カーエレクトロニクスの進展などにより数年は拡大基調が続き、自動車関連についても、電装化需要が引き続き伸びることに加え、中長期的にはHEV・PHEVに続きBEVやFCEV(燃料電池自動車)のグローバル規模での本格的な普及拡大により、さらなる需要拡大が見込まれる。その他、新興国向けの社会インフラ関連や環境エネルギー分野関連の需要拡大も期待できる。

 こうした状況下において、2022年度の産業機能紙の市場規模は前年度比103.1%の14万9,950tを見込み、2023年度には15万4,930t(同103.3%)と拡大基調で推移すると予測している。