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視点の行方

2011年度の電子書籍市場規模は629億円

印刷ジャーナル 2012年8月5日

 インプレスグループで法人向け情報コミュニケーション技術関連メディア事業を手がける(株)インプレスR&D(本社/ 東京都千代田区、井芹昌信社長)のシンクタンク部門であるインターネットメディア総合研究所は、電子書籍の動向を調査し、電子書籍に関する市場規模の推計結果を発表した。
 それによると、2011年度の電子書籍市場規模は629億円と推計され、2010年度の650億円と比較し、マイナス3.2%と微減となっている。新たなプラットフォーム向け電子書籍市場は対前年比363%増の112億円へと急速に拡大しているが、フィーチャーフォンからスマートフォンへのデジタルコンテンツのシフトがスムースに進んでいないことから、ケータイ向け電子書籍市場の落ち込みを補完できていないという結果となった。
 ケータイ向け電子書籍市場は、480億円と市場の76%を占めており、依然として市場の中心を担っているが、フィーチャーフォンユーザーの減少に加え、広告出稿の減少等の影響を強く受け、前年度比84%と大幅な減少となっている。
 PC向け電子書籍市場は、大手販売ストアでスマートフォンやタブレット端末で閲覧が可能なマルチデバイス化が図られ、新たなプラットフォーム向け市場へとシフトしており、狭義のPC向け市場も大幅な減少となっている。
 新たなプラットフォーム向け電子書籍市場は112億円と推計され、スマートフォンユーザーやタブレット端末ユーザーの増加に伴う拡大や、PC向け市場のマルチデバイス化等を受け、昨年度の24億円から363%増の112億円へと急成長している。しかしながら、コミックのコマ見せを中心としたケータイ向け電子書籍市場の受け皿の整備の遅れや、予想されていた海外事業者の参入が遅れ電子ブックリーダーが普及していないこと、コンテンツの充実が予定通りに進んでいないこと等の影響を受け、ケータイ向け市場の落ち込みを上回る増加には至っていない。
 また、電子雑誌市場はタブレット端末利用者の増加や定期購読による配信雑誌数の増加により、前年度比267%増の22億円となっている。
 2012年度以降の日本の電子書籍市場は、ケータイ向け電子書籍市場の減少傾向は続くものの、新たなプラットフォーム向け電子書籍市場の急速な立ち上がりにより、2016年度には2011年度の約3.1倍の2,000億円程度になると予測される。
 ケータイ向け電子書籍市場は、携帯電話会社から発売される携帯電話のほとんどがスマートフォンになる等、スマートフォンの急速な拡大が続き、公式コンテンツ利用者が減少に転じている。そのため、2012年度以降も減少傾向が見込まれる。
 新たなプラットフォーム向け電子書籍市場は、コンテンツの充実にはしばらく時間がかかると見られるが、2012年度中の米国アマゾン社のKindle等の海外事業者の参入や楽天Koboからの発売等をきっかけとして、今後2〜3年の間にコンテンツの充実や環境整備が整い、2013年度以降に本格的な拡大期に入ることが予想される。また、携帯電話の公式コンテンツ利用者の受け皿となるライトユーザー向けの販売ストアも2012年になってから好調が続いている。これにより、2013年度には先行するケータイ向け市場を上回ると見られる。その結果、日本国内の電子書籍市場規模は2016年度には2,000億円程度に達することが見込まれる。
 また、電子雑誌市場も配信雑誌数の増加やマイクロコンテンツ化等の新たなビジネスの展開も想定され、引き続き市場の拡大が見込まれる。2016年度には350億円程度になると予想され、電子書籍とあわせた電子出版市場は2,350億円程度と予想される。