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視点の行方

急展開迎える電子書籍市場(1)

印刷ジャーナル 2010年2月5日

 電子書籍市場をめぐる動きが活発化している。
 (株)インプレスR&Dのシンクタンク部門であるインターネットメディア総合研究所によると、日本の2008年度の電子書籍市場規模は、前年比31%増の464億円。前年と比べると伸びは鈍化しているものの、順調に成長している。
 電子書籍市場の火付け役として知られるのが世界最大のインターネット書店である米アマゾン・ドット・コムの電子書籍端末「キンドル」だ。2007年11月の米国発売以降、世界にその販売を拡大し、日本でも昨年10月から購入できるようになった。そして現在、その日本語版発売も噂されており、日本の電子書籍市場を大きく左右するものとして関係者らはその動向に注目している。
 そんな矢先に飛び込んできたのが、新しいタブレット型多機能携帯端末「iPad」の発表だ。アップルでは、世界で最も人気のあるオンラインコンテンツ配信サービス「iTunes Store」内に、いわゆる電子書店「iBookstore」を開設し、iPad向けに大手出版社および独立系出版社の様々な書籍を提供するという。
 iPadは3月下旬から全世界で発売され、今後、市場をリードしてきたアマゾン、ソニーとともに、電子書籍端末のシェア争いでしのぎを削ることになる。
 特有の複雑な書籍流通システムなどを理由に、電子書籍では出遅れていた日本。しかし、これらインフラの進展に加え、出版不況が深刻化する中、講談社や小学館、集英社など大手出版社21社は、書籍のデジタル化に向けた一般社団法人「日本電子書籍出版協会」を2月に立ち上げ、拡大が予測される電子書籍市場に対応する。
 このように、電子書籍市場をめぐる環境は急展開を迎えており、2010年はまさしく「電子書籍元年」との見方も多い。
 一方、インターネットメディア総合研究所の調査によると、2006年度以降、電子書籍市場を牽引しているのは携帯電話向け。その2008年度の市場は国内市場全体の86%を占める402億円にのぼる。
 そんな中、この市場活性化に向けた電子書籍ビジネスソリューションがモリサワから発表されている。PAGE2010では、「iPhone 小説編」として参考出品された。
 これは、印刷用に作成された小説のDTPデータを簡単にiPhone用データに変換するツールと、変換されたそのデータをiPhoneに表示するためのビューアで構成される。電子書籍コンテンツ制作におけるコスト、ノウハウなどの参入障壁が格段に低くなることから、出版・印刷業界に新しいビジネスチャンスをもたらすことが期待される。