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視点の行方

「国民読書年」は業界PRの機会

印刷ジャーナル 2010年1月15日

 「国民読書年」の2010年がスタートし、各地で読書推進をテーマとした行事が開かれている。日本において年齢や性別、職業等を越えて活字離れ、読書離れが進む中、読解力や言語力の衰退は精神文明の変質と社会の劣化を誘引する大きな要因の一つとなり得るといった危機的意識から、2005年の「文字・活字文化振興法」制定から5年にあたる本年を「国民読書年」と定めることが一昨年に全会一致で決議された。
 (財)出版文化産業振興財団が実施した調査では、「4人に1人は1カ月に1冊の本も読まない」という読書習慣のない現代人の実態が明らかになっているが、活字や本に慣れ親しむ多くの機会が得られる本年は、これまであまり本を読む習慣のなかった多くの人たちが読書の楽しみを知る年となるだろう。
 これまであまり本と親しんでこなかった人たちが自ら書店に足を運んで読みたい本を選ぶとき、重要なのは必ずしも本の内容だけではないはずだ。本の外観である表紙のデザインや装幀はもちろん、文字組みやフォントの美しさ、本を手にした瞬間の感触など、間接的な部分もその人が今後本を好きになるか否かを左右する要因になるのではないか。
 全日本印刷工業組合連合会では「メディアユニバーサルデザイン(MUD)」に意欲的に取り組んでいるが、昨今では色と並んで重要なフォントの分野でも環境は整っている。いち早く普及に努めてきたイワタに加え、モリサワは「モリサワパスポート」によるUDフォントの提供を開始した。また、大日本スクリーン製造はユニバーサルデザイン対応フォントをリリースするなど、万人に読みやすいフォントが出揃っている。
 また、全日本製本工業組合連合会はデザイン業界とのコラボレーションをスタートした。製本業界の技術革新も目覚しく、昨今では広開性や堅牢性に優れた新たな製本方式の「PUR製本」も浸透してきた。「国民読書年」である本年は、文字・活字文化の発展を支えてきた印刷産業が、一般社会へ向けてその真価を発揮する絶好の機会とも言える。
 ケータイ小説の台頭など、読書もデジタルとアナログが共存する時代に突入しているが、実物の本には電子書籍にはない良さがたくさんある。
 世間が読書の大切さについて改めて考えるであろう本年。国民の今後の読書人生を支える業界であるとの気概を持ち、明るい気持ちで新年をスタートしていきたい。