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視点の行方

モリサワがUDフォント開発

印刷ジャーナル 2009年2月25日

 株)モリサワ(森澤嘉昭会長兼社長)が、ユニバーサルデザイン(UD)の考えに基づいたフォント「UDフォント」を開発中であることを明らかにし、反響を呼んでいる。
 「環境に優しく(エコ)」「人に優しく(ユニバーサルデザイン)」。社会の2大潮流として欠かせない視点だ。ユニバーサルデザインとは、老若男女といった差異や個人のそれぞれの感じ方の如何を問わず、誰もが安心して利用することのできるデザイン。1985年に米国ノースカロライナ州立大学の故ロナルド・メイス氏(建築家・工業デザイナー)が提唱した考え方である。
 全日本印刷工業組合連合会(水上光啓会長)ではこの思想に基づき、文字と色を専門に取り扱う印刷業界として、「文字の使い方」や「色の使い方」に配慮や工夫を加えることにより、見やすい印刷物や様々なメディアを提供し、より良い社会環境づくりに貢献することを目的とする「メディアユニバーサルデザイン(MUD)」への取り組みを推進。2大事業の一つと位置付け、平成16年度からその研究と普及啓発活動に取り組んでいる。
 色の見え方が違う人は、日本人男性で約20人に1人、女性では約500人に1人と言われている。その数は日本国内で約320万人にものぼり、また色覚は年齢と共にその機能が低下し、高齢者に多い白内障や緑内障などでも色覚機能は変化する。超高齢化社会を迎えた日本では、ますます色覚に対する配慮が必要となってくる。そのような中、印刷産業にも正しい理解と配慮が求められている。
 そこで色と並んで重要な要素となるのがフォント。これまでUDフォントは(株)イワタ(水野弘一郎社長)がいち早く発売し、普及に努めてきたが、印刷・出版・Web・組み込み機器など、多くの市場で利用され、とくに印刷・出版での利用が6割以上とされるモリサワフォントのUD対応が実現すれば、印刷業界のみならず、一般社会に大きなインパクトを与えることになるだろう。
 書体のベースとなるのは、これまでもUDに適した書体として高い評価を得てきた「新ゴ」。携帯電話やモニターなどの電子デバイスで問題となっていた濁音と半濁音の違いの判別を容易にする工夫や、案内表示板などで使用されるウエイトHでは、太さによる文字の潰れを軽減し、視認性を高めている。
 UDフォント開発の経緯について、取締役執行役員 社長室長の森澤武士氏は次のように語る。
 「当社はこれまでも『文字を通じて社会に貢献する』という理念のもと、情報の伝達・記録の手段として重要な文字について『見やすさ』『読みやすさ』を追求してきた。その姿勢の延長線上としてUD開発に着手した。印刷・出版分野だけでなく、電子デバイスなどでも利用されているモリサワフォントがUD対応することで、多くの媒体でのUD化を可能とし、印刷業界のMUD対応も促進されると考えている」
 ゴシック/丸ゴシックファミリーが今秋にリリースされる予定で、現在明朝体も開発中(発売時期未定)。現段階ではモリサワパスポートでの提供を予定している。文字セットはAdobe-Japan1-4(Pro)で、フォントフォーマットはオープンタイプ。