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ダックエンジニアリング、顧客に育てられて半世紀...新体制で次代へ

2023年11月5日

「お客様の発展に貢献」〜新社長に髙城氏、氷上氏は会長に就任


 1973年5月に創業したダックエンジニアリング(株)(本社/京都市南区上鳥羽大柳町1-5)は今年、50周年を迎えた。この間、「知能ロボットのダックエンジニアリング」は「画像処理のダックエンジニアリング」に変貌を遂げ、現在はハードウェアをベースにした印刷関連のあらゆる業界に検査装置や画像処理ソリューションを提供している。今年9月には、代表取締役社長に髙城清次氏、代表取締役会長に氷上好孝氏が就任するツートップの新体制で新たなスタートを切った。半世紀にわたりお世話になった顧客に感謝の気持ちを持ち、今後も搬送機などの各メーカーとのタイアップを強化しながら、顧客の発展に貢献できる検査装置の開発に挑戦していく。


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本社受付にて氷上会長(左)と高城社長


 今では印刷業界を代表する検査装置メーカーの1社として成長を遂げた同社であるが、その道のりは決して順風満帆であったわけではない。氷上社長は1984年に、「画像処理を研究開発したい」との思いから同社に入社したが、その3年後に会社は倒産。「DACは研究開発力と技術力はすごいのだが、当時は品質の安定など、ものづくりの体制が上手くできていなかった。それが原因で大赤字となり、一度は倒産の憂き目に遭った」(氷上会長)。

 その後、コンバーテック業界を核としたユニコムグループの傘下となって再起を図ることになったが、入社からこれまでを振り返り、最も思い出深いこととして「無借金になり、黒字経営にできたこと」(氷上会長)と話すのは、偏に当時の苦い思い出があったからに違いない。ピーク時は180名いた従業員は26名にまで減少し、そこからの再スタートになったが、現在は100名の従業員を抱えるまでの企業に成長した。

 そして、氷上会長の入社から1年後に入社してきたのが、大学の後輩でもあったという髙城社長である。電子回路に興味があったという髙城社長は新卒で同社に入社したが、その2年後に会社は倒産。「念願のハードウェア開発部門に配属され、頑張っていた矢先であった」(髙城社長)。入社してわずか2年のことで、転職するかDACに残るか選択肢に悩んでいた時期もあったが、「当時の会長に励まされ、DACで頑張っていこうと決意した」(髙城社長)。

 新生・ダックエンジニアリングとなった後、同社は業績を回復させるため、利益を出せる開発が難しいメカトロニクスの分野からは撤退。「画像処理」に特化した研究開発へと大きく経営の舵を切り、新たな道を進んでいくことになる。


画像処理技術により、ラインセンサをエリア化した検査装置を開発


 「画像処理」に特化したメーカーとして製品開発に邁進していくことになったDACは、エリアカメラを使用した画像処理を中心に、ラベルの検査やボトルの検査を行える「VIPシリーズ」を1988年2月に開発したが、そのような中、印刷シートの検査はできないかとの需要が出てきた。そこでDACでは、ラインセンサでスキャニングしたデータをエリアに変換するという方法を考案し特許を取得。ラインセンサカメラを使用した初の印刷検査装置「VLシリーズ」が誕生した。

 さらに、1995年9月には「VLシリーズ」を一新し、ラインカメラ検査専用システムとしてカラー化・小型化・現場マッチング性を目標に開発した検査装置「Symphonyシリーズ」を発表した。これは、自社設計の画像処理専用LSIを開発することにより、髙速カラーライン/エリア変換検査を可能としたもので、髙精度・髙速検査が可能になったロングセラー製品となった。髙城社長は「Symphonyシリーズの発表まで、私もハードウェアの開発に携わっていた」と振り返る。

 その後、髙城社長は2006年9月に取締役部長に就任。2014年9月常務取締役、2019年9月専務取締役、そして2023年9月、代表取締役社長に就任している。


検査機による生産設備の自動制御で不良率を削減、生産性を大幅に向上


 「世の中にないものを作りたい」。これが技術者であり開発者でもあった氷上会長の情熱である。ただ、先駆者であることは良いことばかりではなかった。段ボール用の検査装置を初めて開発したときは「検査装置のようなものを作られると、顧客からの品質要求がうるさくなる」と追い返されたこともあったようだ。

 氷上会長はDACに入社する以前、家庭用給湯器のメーカーで開発に携わっていた。そして、それがDACに入社後、生産性を向上させる検査装置の開発にも生かされていたという。氷上会長は「家庭用給湯器のメーカーで『量産化』の技術を学んだことは、DACに入社してからの研究開発にも生かされてきた」と振り返る。

 そのような過去の経験を回顧しながらも、氷上会長は「昨今はスマートファクトリー化が理想とされているが、検査装置がなければ無人化はできない。検査装置で不良を見つけたら除くという従来の方法から、不良を見つけたら検査装置が生産設備を自動制御し良品に変えることで、オフセット印刷であれば不良率は10分の1になり、段取り時間は5分の1、生産性は3倍になる」と、検査機を使用することによるトータルメリットを強調している。

 しかしながら、検査装置は欠陥商品を市場に出さないことを使命とするため、検査レベルの設定など、場合によっては歩留まりが落ちてしまうという懸念がある。髙城社長は「欠陥商品を出さずに生産性も向上させていくには、検査装置だけでなく、いかに生産ラインに検査装置を上手に組み込んで融合させ、合理化していけるかがポイントになる。機械メーカー様と協力して取り組んでいきたい」と話しており、搬送機などの各メーカーとの連携を強化しながら生産性を向上させる検査機の開発に努力していく考えだ。


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本社外観


現場は「先生」。顧客の声を「引き合い」で聞き出した製品を開発


 よく聞く技術者が陥りやすい失敗として、実際の「現場」を知らない技術者が、自身の知識と技術だけで「これは売れるだろう」と自己満足の製品を作ってしまい、結局は売れないという話がある。そのような過ちを起こさないようにDACが長年にわたり心掛けているのが、「現場は先生である」(氷上会長)との認識のもと、営業が聞き出してきた現場のニーズや困りごとを製品開発の最優先の参考にしていくということだ。氷上会長は「現場が楽になるにはどのような製品を開発すればよいか、また海外でも使えるにはどのような製品を開発すれば良いかということを常に考えている」と話す。

 また、髙城社長は「当社では現場の意見を営業が聞き出し、会社に報告する『引き合い』を長年にわたり続けており、現場が求める製品を開発するための大きな参考としている」と説明しており、これはDACがメーカーとして製品開発力、技術力を向上させ、成長していく上で、大きな助けとなったという。

 「営業が持ち帰ってきた引き合いの中には、当時の技術では困難な課題も多かったが、それがDACのメーカーとしての製品開発力の向上にもつながったと認識している。現場のニーズをもとに開発された製品であるので、当然、開発できれば売れる製品ということになる」(髙城社長)。氷上会長は「いわば、現在のDACの製品開発力は、お客様に育てていただいたようなものである」と感謝の思いを語っている。

 また、氷上会長は「私は何が現在の社会にマッチしているのか、何が正しいのかについて常に考えるようにしている。そして、SDGsや働き方改革、スマートファクトリーなどを実現する当社の製品は結果として広く受け入れられてきた」と話す。国内で1,500社弱のユーザーとも取引があり、さらに海外約20カ国に向けて製品を展開していることからも、同社の検査装置がいかに現場に受け入れられているかは容易に想像することができる。


潜在需要にも対応できるメーカーへ。競争力強化で100年企業目指す


 そしてさらに、同社は今後、「現在」のニーズだけでなく、顧客自身も気付いていない"潜在的な要求事項"にも応えていけるメーカーを目指していく考えだ。先頃に出展した「JAPAN PACK2023」では、多くの来場者と商談する中、潜在的なニーズの手応えも感じることができたようである。

 「新社長に就任したご挨拶もあったが、JAPAN PACKでは多くの名刺交換をさせていただくことができた。これからもお客様のお困りごとを聞き、それを一緒に考えながら実現していきたい」(髙城社長)

 「創業50年を迎えることができ、これから70年、100年企業を目指していく中、我々がやるべきことは、検査装置の開発も含め、新しいことにチャレンジしていくことが重要であると考えている。会長職になり、会社の『今後の道筋』を立てていくための時間も取りやすくなったので、その意味からも今回、ツートップ体制になったことは当社に大きなメリットを与えられると考えている」(氷上会長)


 DACは今後、ハードウェアによる検査装置の開発というオンリーワンの強みを生かし、これにAIやIoTを融合させることで、さらに競争力を強化した検査装置を開発していく。創業50周年と同時に、新体制により次世代に対応できる検査装置メーカーとして邁進するDACの今後に注目したい。

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