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江澤事務器、Bell&Howell社の新型インサーター導入

2023年8月4日

複雑な名寄せ封入を正確、スピーディーに処理〜「名機」の後継機に期待


 メーリング業者の江澤事務器(株)(本社/愛知県清須市、伊藤雄彦社長)は今年4月、Bell&Howell社の新型スイングアーム方式インサーター「Forerunner Excel」の第1号機を、代理店のDMT Solutions Japan(株)から導入した。一通ごとに封筒への封入枚数が異なるランダム封入や、同封物が異なる企業の請求書など、複雑な名寄せ封入を正確、スピーディーに行っていくことが狙いだ。同社では1992年に導入した同機の前世代機である「メールスターMS500」が未だに現役で稼働中であり、伊藤社長は「ガンガン動いてくれる。メールスターはまさに名機と言える」とその封入品質と堅牢性を最大限に評価しており、その後継機である同機に大きな期待を寄せている。

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page2023のDMTブースで展示されたForerunner Excel(右手前はEZフィーダー)

 同社の設立は1963年。クライアントに選ばれるメーリング業者を目指して、メーカーのインサーターを導入するだけでなく、市場には存在しない「こんなのがあったらいいな」という機械を自社開発により生み出してきた。これまでに20以上のパテントを取得しており、「特許庁の特許図書館で私の名前を検索すると、私がこれまでに取得したパテントの内容を確認していただくことができる。今後も購入して使用されているユーザーを守るためにも、特許を維持していきたい」と伊藤社長は開発者としての姿勢を語る。

 これまでに開発してきた機械は、自社で活用するだけでなく、数十社のメーリング業者にも販売しており、活用されていることからも、伊藤社長がいかに便利な機械を生み出してきたかが想像できる。その代表的製品はランダム厚みに対応するカット紙フィーダー「EZフィーダー」。さらに昨今では、インサーターで封入し、フラップを閉じた後に即座にフラップ閉じ検査ができる「フラップ閉じ機構」を開発し、パテントを取得した。

 昨今、同社にはランダム封入や同封物が異なるものなど、他のメーリング業者では技術的に難しく、出来高も上がりにくい仕事が集まってくるという。伊藤社長は「請求書などの仕事は、朝早くデータが入稿されてきて、夕方には郵便局に投函できる瞬発力が求められる。そして、複雑な名寄せの封入でも納期に対応できるメーリング業者としてメーリング市場から選んでいただいている。これに満足することなく今後も研鑽していきたい」と話しており、メーリング市場から、安心して仕事を出してもらえるパートナーであり続けたいと考えているようだ。


「紙は生き物」。オートマチックに頼らないことが技術力の向上に


 「複雑な仕事」ばかり集まってくるという同社であるが、その技術力はどのようにして培ってきたものなのだろうか。伊藤社長に聞くと「昨今はオートマチックでセット替えできるインサーターが増えているが、そんなものに頼っているから上手くならない」と、辛口の返答が返ってきた。伊藤社長は「オートマチックは一見、便利そうであるが、個人的には好きではない。なぜなら、紙は『生き物』であり、同じ紙で同じ封入物であっても、昨日と同じセッティングで良いとは限らない。パレットの上と下の紙でも癖は違うし、とくに同封物ではそれが顕著に現れる」と指摘する。そして「それを合わせていくのがまたたまらない」と、まるで難しい仕事のセッティングを楽しんでいるかのようである。根っからの技術者なのである。

 伊藤社長の技術向上への探究心の高さは、この言葉からも容易に想像することができるが、そしてそれは、企業風土として従業員にも波及しており、それが全社的な技術力向上の底上げにもつながっている。「当社ではジョブ呼び出しからセットアップまでパート社員が行っており、驚かれることがある。他社から転職してきたある社員は、『以前の会社ではそれは社員が行う仕事でした』とびっくりしていた」(伊藤社長)

 そして今回、同社が導入したインサーター「Forerunner Excel」も当然、オートマチックではない。動機については伊藤社長が現在、研究しながら調整中とのことで、「前世代機と比較して、改良を加えられた部分以外の基本構造は同じなので、おおよその想像はつく。私自身が納得するまで腹に落としてから、9月の本稼働を目処にパート社員に引き継いでいく予定」(伊藤社長)。

 ここにも伊藤社長の技術者、そして開発者としてのプロ意識を見ることができる。ハンコを押すだけの経営者が「せっかく高い機械を買ってあげたのに、使いこなせないではないか」と社員を責めてしまうということはあるあるかも知れないが、そうではなく、どのような機械であっても、まずは経営者である伊藤社長自身がその機械のことを習熟した後、社員に渡すことを基本としているという。なぜなら「そうしないと、何かトラブルが発生したときに、自分自身が原因を突き止めることができない」(伊藤社長)からだという。


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「デュアルデッキ」により、複雑な仕事でも迅速な処理に期待


 同社では「Forerunner Excel」の前世代機であり、伊藤社長が「名機」と絶賛する1992年に導入した「メールスターMS500」が未だに現役で活躍中である。すでに30年以上使用していることになる。今回、「Forerunner Excel」を導入した理由について伊藤社長に聞くと一番に、「メールスターが、さらにどのような進化を遂げているのか、それが知りたかった」という答えが返ってきた。そして実際に導入後の感想を聞くと「クオリティーと短納期を両立できる、スイングアーム機としてはまさに最高グレードのインサーターである。少々高価であっても、導入する価値は十分にある」と断言している。

 このように伊藤社長が絶賛する「Forerunner Excel」であるが、その中でも新機能としてとくに評価しているのが「デュアルデッキ」の機能だ。これは、名寄せをする「アキュームレーター」の機構が上下2段になっているため、難しい名寄せでもスムーズに作業を行えるという機能である。「バケツリレーに例えるなら、バケツを置く場所が2箇所あるため、通常は前の用紙の処理が終わり、用紙を排出してから次の用紙の処理を始めるが、デュアルデッキでは、前の用紙の処理が途中でも次の用紙の準備ができているため、機械の停止時間を短くでき、生産性の向上が期待できる。前世代機と比べて、どのくらいの差が出るのか、今から楽しみである」(伊藤社長)。

 そして、同社がこれまでに使用してきた「スイングアーム方式」であることも導入を後押ししたという。「パート社員に使わせる以上、初めての機械は、操作を戸惑わせることになる。スイングアーム方式なら慣れていて愛着もあるし、Bell&Howell社は草分けのメーカーでもある。スイングアーム方式のインサーターは他にもあるが、私も製品の開発者なので分かるのだが、やはり業界に先駆けて開発するメーカーは、あらゆることを試しており、その歴史が開発力に現れてくると感じる。Forerunner Excelは、その歴史を踏襲したインサーターとなっている」(伊藤社長)


何億通の仕事ができるのか。一通単価で判断するなら「決して高くない」


 「Forerunner Excel」は、スイングアーム方式で業界最速を誇り、最高1万3,000回転/時を実現する。厚めの封入物でも力強く掴むことができる空気圧方式グリップアーム、名寄せの多いジョブも高い生産性で処理することができるデュアルデッキアキュームレーターを備えており、伊藤社長は「イニシャルコストは決して安くはないが、それでもあえて買う理由がある機械だ」と話す。

 「難しい仕事でも迅速に処理できるため、当然一通あたりのコストは安くなり、この先、メールスターのように何十年後も『ガンガン』動くであろうと期待している。そのように考えると、これから先、何億通の仕事をしてくれるのだろうかと今から楽しみである。早いということは、空いた時間に違う仕事を入れられるということであり、数十年先を見据えて考えたとき、Forerunner Excelは決して高い機械ではないと言えるだろう」(伊藤社長)

 伊藤社長は今後、Forerunner Excelをとくに難しい仕事の専用機として活用していく考えで、「これからは難しい仕事ほど欲しい。目標は、江澤事務器の仕事はミスもないし、一見同じような仕事でも、他社と比較して付加価値が高いと言われるサービスビューローでありたい」としており、今年9月からの本格稼働に向けて仕事を入れ始めているということだ。今後も「選ばれる会社」を目指し、クオリティーと生産性の向上を追求していく。

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