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とうざわ印刷工芸、伝えたいをかたちに - 創業76年「印刷物+デジタルで生まれる新しい挑戦」

2023年4月25日

創業76年、これまでのとうざわ印刷工芸


 1947年に富山県富山市で創業した、とうざわ印刷工芸(株)。今回のインタビューでお話を伺った東澤善樹氏は、同社の3代目代表取締役である。創業当時は伝票や封筒などの事務用印刷物の製造からスタートした同社。富山県の市場環境の変化に合わせて事業を進化させ、現在はポスターやチラシ・カタログといった商業印刷を中心とした事業を展開し、年間600件以上の顧客と継続的な取り引きがあるという。これまでに強固な顧客基盤を築き上げることができた理由について、同氏は次のように語った。

 「当社は、富山県内を中心に官公庁や新聞・出版社、広告代理店、製造業など、業種や業界に偏らない顧客基盤を築いてきた。多様な業種・業界の顧客と継続した取り引きをできている理由は、他社にない『迅速な対応力』と、取り扱っている印刷物の種類の『幅広さ』だと考えている」


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東澤 善樹 社長


 同氏が言うこの「迅速な対応力」のルーツは、1970年代の富山県の市場環境の変化にある。当時、富山県内ではスーパーマーケットが増加しており、同社でも新聞折込チラシの印刷を扱うようになった。原稿が入ってから納品までの日数が非常に短い新聞折込チラシの印刷に対応するため、制作と製造の工程を納期に間に合うよう最適化していったという。これにより、品質の良い製品を他社よりも短期間で納品できるようになった。この対応力が買われ、1980年代以降は広告代理店からの急ぎのパンフレットやポスターの印刷案件も受注できるようになり、さらに顧客基盤を拡大していく。また、対応できる印刷物の種類についても、例えば大判(B全)ポスターを製造できる印刷機を導入し、観光ポスター分野にも参入する等、徐々に範囲を広げていったのだ。


新規サービス開発と、印刷物+デジタルのサービス提供のきっかけ


 その後2010年代、スマートフォンといった情報機器の普及により顧客の情報発信の手法が変化していく中、印刷業界全体の出荷額は減少。同社も広告宣伝や出版の分野において、年々売上高が減少していくようになる。ただし、当時は既存の顧客からの案件も一定数は安定的に獲得できており、利益は減ったといえど危機的な状況ではなかったことから、大きく受注内容を変えていこうといった動きにはシフトしなかった。

 しかし、2020年に新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、主軸としていたチラシやパンフレットといった大量印刷、観光ポスター等の大判印刷の受注が大幅に減少し、これまでにない大きな変化に直面したのだ。

 「とくに2020年4月以降の緊急事態宣言下では、企業の展示会や営業活動で使用される製品紹介のカタログ類、地域のお祭りやイベントで配られるパンフレットやグッズ類、そして観光関係であれば駅貼りの観光ポスター等の受注が消滅した。これまで行ってきた通常の印刷受注が消滅したことから、とにかく自社で持ちうる設備と技術で、コロナ禍で求められているものを作ろうということになった」

 新しいサービスの開発に取り組んでいくことになった同社は、コロナ禍においても顧客から選ばれるサービスを模索していく。例えば、ソーシャルディスタンス用足元ステッカーは、同社の制作部の社員により生まれたアイデアだ。イベントが少し復活したときには、「はなれてすわりましょう」シールの印刷と設置作業まで受注できた。また、オンラインショップは、コロナ禍で一気に進展した。それまで直接販売か書店への委託販売だけだった「立山連峰のオリジナルカレンダー」を、オンライン上で販売。全国のファンから購入があったという。その後も模索を続けていたある日、同氏のもとにクラウドサーカス(株)(以下「CC社」)から、印刷物に付加価値を付けることが可能なサービスとして、AR制作支援ツール「COCOAR」「LESSAR」と、電子ブック制作ツール「ActiBook」の提案があり、導入することとなった。

 「導入の決め手はやはり、デジタルだけで完結するのではなく、印刷物と親和性のあるツールであったことが大きい。もともとARや電子ブックは、リアルとネットを繋ぐものという印象で、例えばARだと印刷物にマーカーを設定し、利用者にスマートフォンでかざしてコンテンツを楽しんでもらうことができる。これが仮にVRだったとしたら、印刷物とは直接的に関わらないので、導入には至らなかった。CC社のサービスを利用すれば、印刷物とデジタルがお互いに高め合っていけるだろうというイメージが湧いたからこそ導入を決断できた」

 このようにして、「印刷物にデジタルで付加価値をつけたサービス」の提供という新しい分野に、同社はさらに挑戦していくこととなる。


「印刷+デジタル」の売上目標150%達成、お客様との関係性にも良い変化が生まれる


 CC社では、実際に印刷物+デジタルの案件を獲得・受注するための支援として、サービス導入後に専任担当者(カスタマーサクセス)が1名つき、定例で案件相談やサンプル作成、事例提供といったサポートを行う。同社からは営業担当者2名が参加し、1年半程活動を続けてきた。実際に導入してからの成果について、同氏は次のように語る。

 「1年目は、デジタル単体では目標数字までは少し届かなかったが、『印刷物+デジタル』での売上は大きな受注になっており、目標数字の1.5倍の受注に繋がった。期待していた印刷とデジタルとの相乗効果が生み出せたものと思っている。また、現場レベルでも変化はあり、お客様との関係性の構築や、営業が話す内容が変わってきていると感じる。例えば、これまでは印刷物を『納品しました』で終わりだった営業担当者が、電子ブック制作ツール『ActiBook』やAR制作ツール『COCOAR』『LESSAR』であれば閲覧者の行動ログを取得することができるため、その結果を持って訪問するというサイクルが作りやすくなった。顧客との接点を生み出し、顧客の要望を早めに引き出せることで継続的な受注にも至っている」


「印刷物+デジタル」で実現した成果事例2つ


 受注した案件の中でも、同氏にとって印象的な案件が2つあったと語る。ひとつ目は、北日本新聞社のARスタンプラリーの案件、もうひとつは私立学校の学生募集案内を「印刷物+デジタル(電子ブック)」で提案し、受注に至った案件だ。


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北日本新聞社のARスタンプラリー


 「北日本新聞社様のARスタンプラリーの案件は、最初の受注にして、地元最大手の新聞紙面の掲載であり、富山と岐阜にまたがる地域という規模感から非常に印象的だった。また掲載された頃は、時期的にはまだまだ感染拡大期にあり、不要不急の外出を避けるようにと叫ばれていた頃だったので、北日本新聞社様はとてもタイムリーな企画をされたと感じている。私立学校の学生募集案内の案件については、以前のままであれば印刷物をお届けしたら仕事完了であったが、現在は営業担当者が先方の担当者様に毎月アクセスログ結果を準備し訪問。1ヵ月のうち、いつ、どのページに、どれだけのアクセスがあったかなど、受注2年目の今でもご報告を兼ねて訪問し続け、2年目の制作からはアクセス履歴を参考に案内内容も組み替えたとも聞いている。当社での印刷営業や制作提案のやり方を変えた意味で非常にインパクトがあった」


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※ログデータはイメージ

成果に繋がった要因と、その背景にあった苦悩


 ここまでの成果を残している同社だが、成功の背景には、課題と苦悩もあったという。とくに「営業部への浸透」と「全社への浸透」については、印刷物+デジタルへの取り組みを加速させるため、社員を巻き込みながら施策を実行していった。印刷業の営業スタイルは、顧客との対話においても「印刷物をいつまでにどれだけの数を納品するのか」という受け身のスタイルが多いという。いわゆる提案型の営業スタイルを浸透させていくために、同氏は導入当初から営業担当者へのヒアリングも怠らなかった。

 「営業担当者に話を聞いてみると、ARや電子ブックのサンプルが必要とか、得意先に突っ込んで聞かれても答えられないから不安だ、といった保守的な要望や意見も多かった。しかしそのような意見や要望を1つひとつ確認して解決していくうちに、先端的に走ってくれていた営業担当者2名が突破口を開き、ARスタンプラリーを受注したり、提案書を作り営業部内で共有する動きを見せてくれた。これにより、営業部内で徐々に波及効果が表れ、例えば『ある団体で広報予算の使い道を検討されていたので一案として提案してきた』といった話が営業担当者間で出てくるようになった」

 また、全社への浸透において悩んでいた際には、CC社の専任担当者から紹介のあった「社内アイデアコンテスト」を同社はすぐに実践している。「印刷物+デジタル(ARや電子ブック)」の企画を全社で募集し、期間は2週間程度だったが約50件のアイデアが集まったという。

 「コロナ禍で印刷受注が減り、なんとかしなければという切迫感があったが、それだけだとただ追い立てられているような気持ちになってしまうので、同時に『何か面白いことをやろうよ』という気持ちもあった。アイデアコンテストでは、営業や制作以外からも提案が集まり、社内で面白いことをやってみたい人はたくさんいるのだと実感した」


今後の展望、伝えたいをかたちにできる企業を目指す


 今後の同社について、まず営業担当者全員が提案型営業を実践できる環境を作っていくことが重要と語る同氏。印刷だけでなく、デジタルも含めた様々な提案を1人ひとりができる、顧客が困った時にすぐ相談できるコンサルティングのような立場になっていきたいという。また、CC社のサービスであるマーケティングオートメーション(MA)の「Bow Now」を導入し、MAの導入を自社で成功させることができれば、顧客にもその取り組みを提案することで、マーケティング支援にまで事業を広げていきたいと話す。

 「顧客自身が伝えたいと思っていることを、伝わりやすいようにカタチにすることで、ユーザーの心を動かしていく、そういった役割を担える企業として貢献していきたい。印刷物だけ、デジタルツールだけという固執はせずに、双方のやり方をミックスすることで、面白いモノは面白く、真面目なモノは真面目に、印刷会社として信頼のおける内容で正しく伝わるやり方を模索していきたい。そうして、顧客にまず一番に声を掛けてもらえる会社、案件の企画からデジタルと印刷を組み合わせた提案までトータルで支援できる会社を目指していきたいと考えている」

 中長期の展望として、このように語る同氏。今後の同社のさらなる成長に注目である。

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