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原色美術印刷社、創業70周年「サービス業へ転換」〜3つの改革で利益率改善

2023年4月5日

 広島県にある印刷会社が、「デジタルで付加価値をつけたサービスの開発」「提案型営業スタイルの導入」「営業管理体制の改革」を実践し、成長を加速させている。2023年3月26日に創業70周年を迎えた(株)原色美術印刷社(本社/広島市西区商工センター7-5-48)だ。これまでチラシやDM等のオフセット印刷を事業の柱としてきた同社が70周年という節目を経て、「製造業からサービス業へ」という方針を掲げ、「クライアントの販売促進における課題を、印刷+αのサービスで総合的に解決できるサービス業」として業態転換を進めている。コロナ禍で紙媒体の減少が進み、印刷業界全体で売上高減少が進む昨今において、状況を打破すべく田尾社長自ら取り組み始めた改革について、その内容とこれまでの軌跡を伺った。


創業70周年、これまでの原色美術印刷社


 1953年、広島県広島市で設立された原色美術印刷社。今回インタビューした田尾直也氏は、同社の4代目社長である。今では印刷事業だけでなく、Web制作や動画、電子ブックといったデジタルの領域を含む12の分野でサービスを提供する。しかし、2013年に同氏が代表取締役社長に就任した当時は、事業内容も創業から大きく変わらず、チラシやDMといった紙媒体を中心とする印刷事業を手がける企業だったという。

 「就任当時は、クライアントからいかに大型の案件を多く獲得するかということに注力していたが、印刷業界全体のトレンドもある中、当社の印刷事業の売上も減少傾向にあった。今後のさらなる変化を見据え、それまで取り組んできた領域以外で案件獲得や売上の拡大に挑戦していく必要があった」

 当時を振り返り、こう語る田尾社長は、注力していた営業方針と合わせて新しい取り組みを始めることで、同社の売上の拡大を実現していく。なかでも、大量ロットではないがコンスタントに案件を獲得できるという観点で、印刷事業におけるカーディーラーへの拡販を、西日本および関東地方を中心に強化していった。クライアントに選ばれた理由は、同社が有する「自動車の販売促進における独自のノウハウ」だった。営業も制作も自動車の販売促進の分野に精通しており、またクライアントからの相談にはすぐに対応できる体制をつくっていた。この拡販が、後々同社のさらなる業態転換のきっかけとなっていく。


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デジタル化への対応と、印刷+αのサービス展開に踏み切ったきっかけ


 その後、時は経ち2020年。当時、すでにメインクライアントだったカーディーラーでは、新型コロナウイルス感染拡大を受けて、販売促進の手法が大きく見直される。紙を中心とした折込チラシやDMの中止・削減が起こったのだ。クラインアントは、エンドユーザーとの接点を、スマートフォンといった情報機器を中心に据える方針で、販売促進の手法をメールマガジン等のオンラインで発信できるものに切り替えていった。同社の売上も大幅に減少し、再びさらなる変化を求められるようになった。

 「非常に大きな危機感を持った。それまでも売上が減少するといった事象はあったが、自社の技術やノウハウを活かしながらも、印刷+αのサービスの提案や、デジタル化への対応を進めて行かなければならないと強く感じた」(田尾社長)

 同社は、紙以外の販促手法の導入を推進するクライアントにも選ばれる、付加価値のあるサービス開発と、またそれらを自主提案することができる営業スタイルの導入を急務として進めていくことになる。


サービス開発と「Cloud CIRCUS for Creative」


 当時同社は、新規サービスの開発について、「印刷技術や独自のノウハウに+αで提案できるサービス」「過剰な設備投資をせずに新規参入を検討できるサービス」という2つを軸として検討を進めた。例えば、印刷技術を活用できる観点で導入した立体物への印刷。UVインクを使用し、アクリルや木材・金属など様々な素材への印刷が可能である。これにより、ノベルティ領域へ参入した。また、協力会社との360度パノラマコンテンツ事業の立上げや動画制作など、クライアントの販売促進の課題解決に繋がる事業に挑戦していった。


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 そんな最中、田尾社長の目にとまったのが、クラウドサーカス(以下「CC社」)が提供する印刷会社向けのデジタル提案支援サービス「Cloud CIRCUS for Creative」だった。

 このサービスは、印刷会社の「商談創出」に繋がるツールと「単価・利益率改善」に繋がるツール(電子ブック等)の提供がセットになったもの。また、ツール導入後も、専任担当者による定例会議や研修を通して、目標設定や案件および企画の相談、価格設定といった、提案型営業の実践において必要なアドバイスや営業管理支援を行う。このようなコンサルティングも通常サポートとして組み込まれている。

 当時同社は、紙と親和性の高いデジタルツールであれば取り組みやすく、かつ印刷+αの提案ができることで、将来的には印刷案件の受注にも繋げていくことができるだろうという狙いから、「Cloud CIRCUS for Creative」の導入を決めた。


「Cloud CIRCUS for Creative」導入&実践までの4ステップ


 同社がCC社の専任担当者と開催している2週間に1度の定例会議で受けているサポートの内容について、大きく4つに分けて紹介する。


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(1)目標設定

 「ありたい姿」と「目標」の設定を行う。日々の営業活動における提案数や提案内容を管理しやすく、またサポートしやすくするため。同社は2025年以降のありたい姿として「印刷メディア・Webメディア・ドローンを3本柱としてクライアントの課題解決を行う会社となる」を設定しており、管理指標として印刷+αにおける「提案数」や「商談数」といった数値を、月次単位で設定している。

(2)デジタルツールについて理解を深める

 CC社が運営する専用の学習動画で、制作方法など提案に必要な基礎知識を習得する。講習では、各サービス2時間ほどかけてツールのコンセプトや機能の理解、制作方法の学習、サンプルの作成を行っている。

(3)提案型の営業スタイルの理解と実践

 専任担当者による提案型営業の基礎研修を実施。ヒアリングのコツから、課題把握に必要な質問の流れ、既存サービスとデジタルツールを組み合わせた提案内容も考案する。

 同社は、カーディーラーに提案していたDMを電子ブックで代用するという提案内容を考案。カーディーラーでは、販売促進の手法がオンラインに置き換わっていたものの、コンテンツを作成する工数や費用が高額になっており、紙のDMをそのまま電子化できる電子ブックはフィットする提案だった。サンプル品とともにクライアントにプレゼンする提案資料と、他社の相場を含めた提案金額の設定まで行い、本番の提案に備えている。

(4)クライアントに提案、定例会議で案件を確認しながらPDCAを回す体制


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 案件状況の管理のため、営業担当者1人ひとりが案件管理表を作成。同社の定例会議では、この表の情報をもとに、チーム全体でクライアントの課題について仮説を立て、受注に向けたアドバイスを互いに行っている。これにより、提案活動のボトルネックを早期に見つけることができる体制を構築している。同時に、本来1営業社員のなかで完結しがちな案件情報が、定例会議参加者全員に共有されるため、失敗と成功のノウハウがチーム内に蓄積され、全体の受注確率も向上しているという。


「提案型営業スタイル実践」の苦労


 こうして提案型の営業スタイルの導入に踏み切った同社だが、その浸透には苦労もあった。印刷業自体が、もともとクライアントからの発注を起点に案件に対応する受け身の営業スタイルが中心のため、営業担当者自ら提案し、案件を創出することで受注に繋げていくという能動的な営業スタイルに不慣れな社員も多かった。田尾社長はデジタルツールへの理解や提案スキルの習得はもちろん、社員に対して「印刷+αで、付加価値をつけた提案を行うこと」に対する意識づけを継続的に行うことも重要だと語る。

 「提案型の営業スタイルを実践でき、かつ業績を上げている営業担当者の特徴は、『お客様の課題を解決したい、役に立ちたい』という意識が非常に高いことだと感じている。その意識を起点に制作部隊などもうまく巻き込み、クライアントの課題に刺さる質の高い提案ができている」

 将来的には、全営業担当者が、同じスキルと意識のもと、提案型の営業スタイルを実践できることを理想とし、今後も意識づけや教育にも継続的な努力が必要だと語る。


導入から3ヵ月で20件の受注に成功!会社全体の利益率が4%改善


 CC社との定例会議を繰り返し、積極的な提案活動に踏み切った同社。営業チーム全体でクライアントの課題に対して仮説を立てる中で、もともとカーディーラー向けの提案として考案していたCC社の電子ブックサービスを「WeBook!」という自社サービスとして展開することで拡販できるのではないかと考えた。早速、「WeBook!」の提案を始めたところ、すぐに受注へ発展し、結果的には他のデジタル関連のサービス含め、3ヵ月間で20件の受注に成功した。


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 2022年度2月時点では、提案型の営業スタイルを実践している営業担当者個人において、最高で利益率15%の改善に繋がっており、また企業全体で見ても4%の利益率改善に繋がっているという。受注数や売上だけでなく、昨今の印刷業の経営における重要な論点のひとつである利益においても成果が出てきている。


田尾社長の語る「業態転換による挑戦的未来」


 「紙の役割も変わり、あらゆる事業領域も益々ボーダレスになってきている。これからは、印刷会社の競合は、もはや印刷会社ではないかもしれないと考えながら、事業に向き合っていく必要がある」と語る田尾社長。印刷物を通して、クライアントの要望に答えていくことも重要であると述べつつ、時代の変化や印刷需要の低迷を考慮し、売上や利益率改善を図る観点でも、今回の業態転換は重要だったと話す。

 今後は、開発した新しいサービスやCC社のデジタルツール等を今以上に活用し、印刷物については外部のパートナーでの製造も取り入れ、印刷+αにおける領域で、よりクライアントの販売促進の課題解決のパートナーとして躍進していく。今後の同社のさらなる変化に注目していきたい。

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