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いこい、ビビッドインクによるRGB色域の再現性で受注拡大[HP Indigo 7900導入事例]

2020年11月9日

[HP Indigo 7900導入事例]同人誌に写真クオリティ - メディア対応力で新たな可能性も

 同人誌専門の印刷通販サイト「おたクラブ」(https://otaclub.jp)を展開する(同)いこい(本社/大阪市浪速区日本橋4-11-6、根田貴裕社長)は今年1月、「HP Indigo 7900 デジタル印刷機」を増設した。7色構成のうちの2色にHP Indigoの特殊インキであるビビッドピンクとビビッドグリーンを搭載することで、同人誌には欠かせないRGB色域をより豊かに表現。そのざらつき感のないスキントーンなどの評価が口コミで広がり、大きく受注を伸ばしている。

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フル稼働する2台のHP Indigo デジタルオフセット印刷機

同人誌専門のマンガ喫茶から印刷業へ

 同社の創業は2012年。もともと同人誌専門のマンガ喫茶というユニークな事業形態から、そこに派生する印刷ビジネスに新規参入した新鋭企業だ。そのきっかけとなったのはマンガ喫茶内に設置していた1台のコピー機である。これは同人誌の作者が自らデータを持ち込み、フィニッシャーの機能を使って本をつくれるという、あくまで付帯サービスとして設置していたものだが、マンガ喫茶自体の事業がなかなか軌道に乗らない中でも、このコピー機だけは高い稼働率を弾き出していたという。「自分の本を手軽にその場で作れるところを探していた」という利用者の声に商機を感じ取った同社は、早速トナー系のオンデマンド印刷機と小型の無線綴じ機および断裁機を設備し、同人誌印刷を専門とする印刷業へと一気に事業転換をはかった。これが創業から2年後、2014年のことである。

 当初は、顧客に店頭でデータを入稿してもらい印刷し、その場で手渡すという店舗型のサービスだったが、4年前に事業拡大を目指して印刷通販サイト「おたクラブ」を立ち上げ、ネット受注型のビジネスモデルへと舵を切った。これを機に大きく売上を伸ばした同社では、印刷事業開始からの6年でライトプロダクション系のトナー機9台のほか、UVインクジェットプリンタや大判出力機、昇華転写プリンタなど、グッズやノベルティ用の生産機も設備するなど、飛躍的な成長を遂げている。

キャラクターの肌の表現力で受注が急増

 そんな同社の新たな転機となったのが、デジタルオフセット印刷機「HP Indigo」の導入である。同社では3年前に中古の「HP Indigo 7600」を導入していたが、さらに今年1月には新台の「HP Indigo 7900」を増設している。これら一連のIndigoへの投資について、同社の共同経営者で製造部門を統括する緒方人志氏は、「機種選択については決め打ちだった。以前、Indigoを設備している印刷会社に外注した際の金赤ベタの写真クオリティが鮮明に記憶に残っており、私の中で、大型機を設備するにあたりPOD機とはまったく異なる高品質が得られるIndigo以外の選択肢はなかった」と振り返る。

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緒方 氏

 当初はIndigoのオフセットライクな品質が、同人誌の顧客にどこまで理解され、評価されるかは未知数。それだけに「どこまでこの品質が伝わるか試してみたい」という好奇心のようなものが緒方氏の中でも湧き出てきたという。

 「100万部刷るも10部刷るも作者の思い入れは何ら変わらない。その思いに我々がどう応えるか。その答えがIndigoだったということ。トナー機のテカリに対して、IndigoはUVオフセットのようなマットな質感が出る。『しっとりとした仕上がり』という感じだろうか。とくにマット系の用紙に対して、その傾向が顕著である」(緒方氏)

 同人誌の制作はタブレットなどを使ったRGB環境がほとんどである。同社の真骨頂は、このRGBデータの印刷にある。その色域の再現性をさらに向上させたのがビビッドインクの採用だ。現在2台のIndigoは、いずれもCMYK+ビビッドピンク+ビビッドグリーン+プレミアムホワイトの7色仕様となっており、ユニークなビビッドインク2色の搭載によってRGB色域の再現性がより豊かなものになっている。

 「同人誌の場合、キャラクターの描画が多用されているため、肌の表現、いわゆるスキントーンが重要になる。Indigoのざらつき感のないスキントーンの品質評価は口コミで一気に広がり、発注が急増した」(緒方氏)

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おたクラブのサンプルカラーブック

ダウンタイムは最大の敵

 Indigoで生産する受注ロットは30〜50部程度。多い時には2台で月間5,000ジョブを3交代制でこなし、200時間の連続稼働も珍しくない。この状況に対し、繁忙期の瞬発力と機械の堅牢性にも緒方氏はIndigoに高い評価を示している。

 「我々にとってダウンタイムは最大の敵。Indigoは、その堅牢性はもちろん、メーカーのメンテナンスサービスに依存せず、トレーニングによって資格を得た従業員が自らブランケットやドラムのフィルムの交換ができる。結果、オペレータの急な残業も発生せず、労務的にもメリットがある」(緒方氏)

 今年5月に開催予定だったコミックマーケット98が新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けて中止されたことで、経営に多少の影響を受けた同社だが、10月には前年並みの受注を見込むまでに市場が回復。すでに2台のIndigoはキャパいっぱいの状況にあるというから驚きだ。

 一方、様々な用紙や素材に印刷できるというメディア対応力も高く評価する緒方氏。クリアファイルやキャンバス地、パール系など、HPのワールドワイドでの認証メディアからおもしろいものがあれば積極的に取り寄せて採用し、同人誌はもちろん、グッズやノベルティの展開の可能性を常に追求している。

 「トナー機が『サービス』であるのに対し、Indigoは『製造』。よって、そのオペレータも生産機として真剣に向き合える人材が必要になる」と訴える緒方氏。人材育成にも注力する一方、HPのビジネスパートナーとしての対応も高く評価している。

 「サービス、提案、要望への対応など、HPは機械の納入後も、我々と一緒になって市場やビジネスをともに作っていこうという姿勢がある。単なる納入業者ではなく、ビジネスパートナーとして大きな期待を寄せている」(緒方氏)

BtoBを次の成長エンジンに

 今後同社では、生産機であるIndigoを核とした自動化を進めていく方針を打ち出し、入稿後のプリフライトチェックおよびPDF化を自動化するとともに、ホットフォルダー運用による印刷指示の自動化にも着手する考えだ。

 その背景について緒方氏は「当社は、まだまだ若い会社。企業の成長をさらに高めるためには、1人あたりの労働生産性を最大化する必要があると考えている。結果、そこで生じた余剰労力をクリエイティブや企画の分野に適正配置することで、次の時代の成長エンジンにしたい」と将来の方向性を明確に語っている。これは、現在、営業部隊を持たず、受注は100%オンラインである同社にとって、法人営業の可能性を示唆するもので、さらなる事業拡大に向けて、BtoB事業への備えでもあるようだ。

 「ある調査機関によると、同人誌の市場規模は、小売金額ベースで820億円程度(2019年)とされているが、我々の印刷ビジネスに当てはめると150〜200億円程度だろう。現在、当社の売上はおよそ6億円だが、現状の印刷通販によるBtoCの同人誌印刷事業でも10億円の売上は可能だと考えている。その先の成長を考えると、やはりBtoBに着手する必要がある。そこでも生産手段として中核を担うであろうHP Indigoに、今後も期待している」(緒方氏)

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