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トップインタビュー|コダックジャパン 藤原浩社長に聞く

2020年1月1日

IT技術の有効活用が鍵:他産業との協業に「成長の芽」
SONORA 3割強の拡販へ 〜 パッケージ分野で新たなブランディング


 完全無処理サーマルCTPプレート「SONORA」の拡販で昨年も大きな成果を挙げたコダックジャパン(藤原浩社長)。今年は、中堅以上の印刷会社への訴求に加え、無処理版の課題とされるUV耐刷性、視認性、耐傷性のすべてを高めた次世代バージョン「SONORA CX2」で、さらなるシェア獲得を狙う。さらに、SONORA、PROSPERインクジェット事業におけるパッケージ分野への水平展開も強化していく考えだ。今回、2020年の幕開けに際し、藤原社長にインタビューし、その具体的なソリューション展開について聞いた。

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藤原 浩 社長


──まず、印刷業界の現状分析を藤原社長の視点でお願いします。

 印刷業界の出荷額や売上高、いわゆるボリュームとしてはまだまだ厳しい状況にあり、産業としてこれまでと何ら変わっていないというのが基本的な私の認識である。
 しかし一方で、業界における倒産件数は減少傾向にあり、そこに至るまでに経営者自らの判断で事業を売却するなど、ある意味、健全な産業構造の変化も垣間見られ、経営統合による企業規模の拡大によって経営の効率化も進んでいる。ただ、売上が伸びない中、とくに日本では原材料費をはじめとするあらゆるコスト増が先行きに暗い影を落としている。その中で「如何に生き残るか」が現在の経営者の最大の課題になっている。
 このように印刷業界は厳しい状況が十数年来続いているが「落ちていくスピード」は見えているはずだ。5年先、10年先に現在の仕事がどのようなスピードで減少していくかが見えている間に、次の手を打つ時間を与えられている「恵まれた業界」でもあると私は思う。我々ベンダーも、その次の手で如何に貢献できるかが求められているように思う。

──それでは製品分野ごとに、昨年の取り組みと成果についてお聞かせ下さい。

 まず、プレートについては、無処理版「SONORA」の販売が、前年対比で3割強の伸びを達成した。これまで無処理版について日本は全世界に遅れをとっていたが、昨年でほぼ追いついたと言える。昨年は中堅以上のヘビーユーザーにも導入が進み、販売量を押し上げた。現在SONORAは国内で500社以上に採用いただいており、とくに導入後のユーザーからの評価は極めて高い。「SONORA」は今後も、「経営環境」「労働環境」「自然環境」という3つの「環境改善」が期待できるプレートとして拡販していきたいと考えている。
 次にCTPシステム。この市場は毎年10%ずつ落ち込んでいるが、我々のビジネス自体はほぼ前年並みを維持し、市場の落ち込みに比べて比較的堅調に推移した。ただ、今後も市場規模の縮小傾向は明らかである。
 昨年堅調だった理由のひとつに、製品の幅広いラインアップが挙げられる。「省スペース&省エネルギー」と「高生産性」の両立を設計開発コンセプトに据え、導入コストを抑えたエントリーモデルから高い生産性を実現する「Wスピード」、高度な自動化を実現するマルチパレットローダー(MPL)など、ユーザーが求める生産性や自動化レベルに応じて柔軟に選択できるラインアップは我々の大きな強み。他製品も同様に、自社開発、自社生産、自社サービスの一貫体制から生まれるインテグレーション能力が高く評価されたのだと認識している。
 CTPシステムの最近のトレンドは、機器単体ではなく、工場内の自動化、効率化を実現するソリューションが重視される傾向にあり、この背景には昨今の人手不足や働き方改革への対応などがある。我々も自社製品だけでなく、他社製品を含めたインテグレーションで、お客様に最適なご提案ができる営業グループを組織し、販促活動を進めている。
 一方、ワークフローは、私の目から見るとまだ発展途上である。その理由のひとつとして、印刷業界の中でITというものの価値があまり評価されていない部分があると思っている。しかし、間違いなく今後の印刷業界の成否を決める鍵になる分野だと私は考えている。生産性向上や働き方改革など、様々な課題と向き合う時、必ずITの仕組みに辿り着く。ここを素通りすることはできない状況にある。
 これらの市場の動きを受けて当社がリリースするのが「PRINERGY VME Managed Services」だ。これは、ワークフローソリューションのサブスクリプションモデルで、Microsoft Azureと連携し、ワークフローの中核を成すプリプレスソフトウェアが、24時間365日、最適なレベルで稼働するようにユーザーを支援するもの。コダックはシステムの保護に万全な体制を敷いて、データのバックアップを複数のデータセンターで分散して行う。これにより堅固なセキュリティーに加え、災害時の復旧とビジネスの継続を万全な体制でサポートする。
 ユーザーにとっては、オンプレミスのローカルサーバーの運用・管理・メンテナンスを直接行う必要がなくなるため、サーバー所有コストの削減、管理・メンテナンスの労力の負荷軽減を図れ、自社のITインフラストラクチャーを合理化できることから、システムのコスト面の問題や制約から解放される。
 先日、お客様から「仕事はあるが、人材の確保が難しい。例えばリモートで自宅からでも仕事がこなせるような環境があれば...」という話を聞いた。VMEは、まさにそのような環境にハマる製品。また複数の工場(マルチロケーション)でのオペレーション運用においてもVMEは威力を発揮する。年初からそのようなお客様に活用を呼びかけ、PAGE2020で初披露する予定である。
 インクジェット分野でのトピックスとしては、イタリアのフレキシブルパッケージング業務用機器メーカーであるUteco社とともに発表したラベル・軟包装向けデジタルプレス「Sapphire EVO」の日本1号機の設置を昨年末に終えている。インクジェット技術のパッケージ分野への応用の足掛かりとして期待しているところだ。
 さらに、現在トッパンフォームズ様で5台稼働している商業印刷向けのPROSPER6000Cプレスを昨年末に新たなクライアントへ納入した。まだまだPROSPER6000級の生産性が要求されるバリアブルの仕事が市場にあると確信している。
 一方で、パッケージ分野においては、PROSPERヘッドの活用余地がかなりあり、今後増えていくと見ている。

──コダックジャパンが掲げる2020年の最重要テーマは。

 今年もブレることなく「お客様の経営パートナー」としての地位を深めていきたいと考えている。お客様の成功なくして我々の成功はありえない。お客様の悩み事を解決するポケットをできるだけ沢山持って、提案、サポートしていくことが今年のコダックジャパンのメインテーマとなる。
 とくにSONORAのリーダーシップの揺るぎない地位を磐石なものにしていきたいと考えている。
 SONORAについては昨年同様、今年も3割強の拡販を目指す。まず、前述のように、中堅以上の印刷会社への訴求がひとつ。加えて、昨年11月にリリースした「SONORA CX2」の訴求がある。CX2は、無処理版の課題とされるUV耐刷性、視認性、耐傷性のすべてを高めた結果、印刷市場の9割以上の仕事をカバーできる新製品。特色での耐刷性も高まったことから、既存の商業・出版印刷分野に加え、パッケージ印刷分野にも本格参入する。インクジェット分野も含め、「パッケージに強いコダック」というブランディングにも乗り出す。

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──今年はdrupaの年。出展情報についてお聞かせ下さい。

 まだ、詳細は公表できないが、無処理版では、耐刷性、視認性を高めた次のバージョンが発表されることを想定しており、CTPは高速化、リモートコントロールの仕組みのアップグレードになると思う。
 ワークフローについては、クラウド、サブスクリプションモデルに加え、サービス、機能の充実が計画されている。
 また、インクジェット分野では、次世代インクジェット技術のプラットフォーム「ULTRASTREAMインクジェットテクノロジー」関連の進展がハイライトになるだろう。ULTRASTREAMを搭載したSapphire EVOが発表される予定なので大いに期待したい。

──最後に2020年の幕開けに際し、印刷業界へのメッセージを。

 日本の経済自体は比較的堅調だが、紙の需要における環境の厳しさは依然として続くだろう。
 印刷業界が生き残るためのキーワードは「他産業とのコラボレーション」である。IT分野はその内の最有力候補となるが、ITに限らず、他産業との関わりの中で、協働、開発、ビジネスモデル構築などを進めることで次の成長への道が拓けるのではないだろうか。
 まだまだ、紙の需要は下げ止まりそうになく、暗中模索の状況。そこに光明があるとすれば、それは他産業とのコラボレーショによる成長の芽を見つけることではないだろうか。

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