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吉田印刷所・アグフア、「フレッシュプリントコンソーシアム」設立

2016年9月5日

「世界一無駄のない印刷」普及・啓蒙へ
水が絞れる「アズーラ」が鍵 〜 「乾燥促進印刷技術」で小口分割印刷


fpc_yoshida.jpg (株)吉田印刷所(本社/新潟県五泉市、吉田和久社長)と日本アグフア・ゲバルト(株)(本社/東京都品川区、松石浩行社長)は、「世界一無駄のない印刷」というコンセプトのもと、印刷会社の単なるコスト削減だけでなく、印刷物のユーザーにとっても印刷物がムダにならない仕組みをつくることで、新たな印刷需要を喚起し、大きなマーケットを創造すべく「フレッシュプリントコンソーシアム」を発足させた。この発足にあわせて8月4日に吉田印刷所で工場見学、記者発表及び吉田社長と松石社長による対談が行われた。今回は、吉田印刷所で行われた一連のイベントの様子を紹介する。


 冒頭、開会の挨拶に続き松石社長が挨拶。「吉田印刷所様は元々高い技術力をお持ちということで有名であった。初めてお会いした際、『アグフアのプレートは水が絞れるのか?』という質問を頂いた。当時は、当社のプレート『アズーラ』が水を絞れる特性を持っていることを私自身認識していなかったが、テストをして頂き、アズーラは水を絞れるプレートであるということと、水を絞ることが印刷の乾燥性を劇的に改善し、多大な効果をもたらすことを教えて頂いた。それをきっかけに当社では『アズーラによる速乾印刷』ということを前面に出して啓蒙し、全国で多くの印刷会社様にアズーラをご採用頂くことができた。今回は大変素晴らしい工場と日本トップレベルの技術力をご覧いただきたい」と述べた。

fpc_matsuishi.jpg 続いて、吉田社長が挨拶。「印刷会社が無駄な印刷物を作って環境に配慮しているというのはおかしな話で、納めた印刷物が無駄なく使われているかまで想いを寄せるべきである。このフレッシュプリントの取り組みは日本だけではなく世界の印刷市場をより良い方向に導くと考えており、同じ想いを持った印刷会社様と情報共有しながら新しい印刷の市場を作っていきたいと考えている。工場をご覧いただき、忌憚のない意見をいただきたい」と述べた。

 両社の社長による挨拶の後は2グループに分かれて工場見学を開始。まずショールームでは吉田印刷所かたり部係長の斎藤研氏より、薄紙及び極薄紙の印刷「スーパーライトプリント」や今回のメインとなる「フレッシュプリント」のサンプル・採用事例の紹介があった。参加者は薄紙を手に取り、その薄さと印刷の正確さに驚きを隠せずにいた。続いてアグフアのワイドフォーマットインクジェットプリンタ「アナプルナMw」の印刷実演を実施。いよいよ印刷工場の見学に入った。

 塵ひとつない綺麗な工場に参加者が驚いている中、初めにハイデルベルグ社製Speedmaster XL105-8Pで1万5,000回転での印刷デモを実施。水を極限まで絞ることによるパウダーの少なさと乾燥の速さ、また行き届いたメンテナンスによる機械の状態の良さを実演で体感した。

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 続いて17年前に導入されたハイデルベルグ社製Speedmaster SM102-8Pを紹介。新台と全く遜色ないメンテナンスの良さを確認した後に、同じくハイデルベルグ社製Speedmaster XL105-4Pでの極薄紙印刷「スーパーライトプリント」の実演を実施。プロセスカラー4色で0.024ミリのグラシンペーパーにカラーチャートを印刷し、参加者は極薄紙の安定した印刷に驚き、機械の隅々まで興味津々に覗いていた。

 最後に粉塵を防ぐための仕切りもなく印刷機の隣に置かれているCTPとアズーラ用クリーニングユニットを見学。吉田社長は「アズーラは素晴らしいプレートであり、水を極限まで絞れるという特長により乾燥時間が早くなりパウダーを減らすことができる。今後印刷会社が生き残っていくためには設備を揃えるのではなく、技術を磨いて新しい機能を印刷物に吹き込むべきで、単に刷り易さを求めて水幅の広いプレートを使うのでは技術は蓄積されない。アズーラはプロ用のプレートだ。我々は印刷のプロである以上、プロ用のプレートを使うべきだ」とコメントし、工場見学は終了した。

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 工場見学後は松石社長が再び登壇。「吉田社長は、2007年に機上現像タイプのケミカルフリープレートが市場に登場した時、環境に優しいという面からいち早く採用した。しかし、機上現像タイプでは水を余分に使わなくてはならないため、吉田社長の目指している水を絞った印刷に適していなかった。その後、我々の現像レスプレート『アズーラ』の水を絞れるという特長を気に入っていただき採用頂いた。現在ではアズーラが吉田印刷所様の全体のプレート使用量100%を占めている。水を絞れるプレートは、実際にはメリットが多いが、なかなか現状を変えることに踏み切れない方もいる。小ロット多品種化が進んだ今、水を使った従来の印刷では、無駄をなくし、コストを削減していくことはできない。フレッシュプリントは、現状はもちろんその先の印刷業界の状況を考慮したものであり、印刷物を利用するお客様のことを最優先に考えた取り組みである。是非ご賛同いただきたい」と参加者に呼びかけた。

 続いて、吉田社長が登壇。「まず初めに一度も使われずに廃棄される印刷物がなぜ発生するのかということを考えた時、めまぐるしく変化する情報に対して印刷物が対応できていないことが原因だという考えに至った。さらに印刷業界全体でもこの無駄な印刷物が発生することについて無視し続けていた。このような状況を改めていかない限り、印刷業界は衰退していく他ないと思った。これからは印刷物を余すことなく使い切る仕組みを業界全体で提供していく必要がある。フレッシュプリントで印刷物を小口に分割するには、アズーラで極限まで水を絞って印刷工程の無駄をなくしていかないと、分割すればするだけ無駄が発生してしまう。フレッシュプリントにはアズーラは必要不可欠である。逆を言えばアズーラを使えばフレッシュプリントの実現は可能だということでもある。この取り組みは印刷会社の今後の発展に大きく寄与するはずであり、お客様やお客様のお客様はもちろん、計画的な生産ができ、情報更新という機能を持たせられるという自社へのメリットも大きい。だが、1社でフレッシュプリントを行うよりも業界全体で行う方がより効果的であるため、松石社長にお声掛けし、フレッシュプリントコンソーシアムの立ち上げに至った。この取り組みに共感いただき、同志の方々と一緒に実現できればありがたい」とフレッシュプリントへの熱い想いが語られ、この後、対談へと移った。


【対談】
廃棄要因は「情報の陳腐化」〜賛同呼びかけ、業界の大きなうねりに


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松石 お客様の多くは、印刷物は結局無駄になるという諦めがあり、余分に注文してストックするのが当たり前になっている。そんな中でフレッシュプリントのような逆の発想は今までなかったので、非常に面白いと感じた。

吉田 廃棄される要因はなんといっても情報の陳腐化である。とはいえ印刷物は一度印刷してしまえば内容を直せないじゃないか、という声があるが、分割すれば分割した回数分だけ直すことができる。直せる条件を整えれば、廃棄を減らすことは可能であると考えている。今までのやり方が正しいという考えはそろそろ捨てなければならない。

松石 先日、2017年にはインターネット広告支出がTV広告支出を上回る可能性があるというニュースがあった。これはTV広告の内容がいつも同じで、インターネットは今日の情報が広告として入ることが要因のひとつであると思う。これは印刷物も同じであり、お客様には常に新しい情報を提供し続けるようにしなければならないと感じた。

吉田 飽きられてしまったり、興味がなくなってしまうことが一番怖いことである。広告が売上と利益を求めるためのツールであり、お客様にとって投資である以上、効果を求めなければならない。現状では印刷物は価格だけに目が向いており、その印刷物が果たすべき情報という役割が十分に機能していない。確かに印刷会社にとってフレッシュプリントは厄介ではあるが、そこにビジネスチャンスがある。今後安泰な印刷物はどんどん値段が下がっていくはずで、柔軟に、今までと違うことをやらなければ生き残ってはいけないと思う。

松石 「薄紙の印刷はグラビア印刷またはフレキソ印刷もしくはオフ輪だ」という概念があるが、枚葉で薄紙が印刷できれば需要が大幅に拡大するはずであり、小ロットの薄紙が実現できるということをクライアントが知れば、飛びついてくるのでは?

吉田 薄紙の需要というのは確かにあるが、小ロットが可能になるというだけで飛びついてくるというわけではない。しかしこちらから色々な提案を行い、一度オーダーしてもらうと、リピートを頂くことは多い。実際に始めた当初は超薄紙の仕事などなく、かなり投資して技術を習得した。薄紙印刷のビジネスもまた厄介なものであるが、やはりその先に大きなビジネスチャンスがあると私や社員も皆思っているし、間違いなく徐々に実績が上がってきている。

松石 薄紙を印刷するのはもちろん、プロセス4色で印刷されていることに大変驚く方が多いと思う。

吉田 白・金・銀以外はすべてプロセス4色で印刷しており、文字だけの包装を掛け合わせで印刷したこともある。

松石 もうひとつ感銘を受けたのが、時節柄仕方なくPODを導入したという印刷会社が多い中、逆手に取って、PODを活かしてオフセット印刷とのシナジーを生み出そうとする発想。どうしてそういう発想が生まれたのか?

吉田 PODを研究した結果、思っていた以上の色再現ができた。PODであれば1冊からの極小ロットにも対応可能であり、紙媒体全体としての価値を上げるためには必要な取り組みであると思った。

松石 そろそろまとめに入りたいと思う。均一な品質を小ロットでヤレ紙を少なく印刷できることで、貴社の挙げる5つのソリューションが実現可能になり、さらに極薄紙への印刷技術により、薄紙の分野でも新しい市場を開拓されたということになるのか。

吉田 以前、分厚いカタログを薄くするために、ライトプリントという薄紙の印刷に取り組んだ。その先の技術がこのスーパーライトプリントである。

松石 この取り組みは、印刷の技術レベルが上がることで、同時に印刷会社の営業の提案できるレベルが上がり、お客様が驚くような提案が可能になると思う。実際の効果はどうか?

吉田 営業のレベルは間違いなく上がっている。クライアントは印刷物が廃棄されている量を知ると愕然とするのではないか。我々のお客様のところで聞き込みしたが、廃棄されている印刷物の量を把握しているところはなかった。だからこそどれだけ余っているのかを知る仕組みを一緒に提案することで、印刷の実態が見え、改善方法が分かる。

松石 決して値段の下げ合いをするのではなく、印刷物の価値を上げるとろこをクライアントに分かってもらわなければならない。それを伝えることができれば、目からうろこではないだろうか。

吉田 実際に吉田印刷所から仕入れたカタログは1冊たりとも無駄が出ていないと言って頂けるお客様もおり、すべてのお客様からそういう声が聞こえてくる仕組みを作っていかなければならない。市場は間違いなく縮小傾向で、小ロット化はさらに進んでいく。しかし、印刷会社が今まで提供していなかった市場は間違いなく存在し、それをひとつひとつ掘り起こしていかなければならない。今ある市場で売り上げるのは難しいのだから、潜在的な需要を掘り起こしていくことが重要であると思う。無駄をとことん排除し、印刷物を利用するお客様に喜ばれる仕組み作り及び新たな市場の開拓を目指したのが、「フレッシュプリント」のコンセプトである。
 これを吉田印刷所1社の力だけでなく、全国の印刷会社の方に賛同頂き、印刷物、印刷市場のあり方そのものを変える大きなうねりにしていくことを目指し、今回「フレッシュプリントコンソーシアム」という形でアグフアさんと2社で立ち上げた。
 フレッシュプリントを実践・広めていくためのノウハウは惜しまず伝授する。是非多くの印刷会社の方にご参加いただきたい。

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