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東洋美術印刷、地域ブランディングとプロモーションを支援

2016年5月15日

千代田区の特性を活用 〜 「むらまち」を結ぶ活動を展開

 東洋美術印刷(株)(本社/東京都千代田区、山本久喜社長)は、2004年から地元・飯田橋を中心に地域活性化事業を開始している。そして2015年には、千代田区商工業連合会の有志とともに、一般社団法人「むらまち結び」を設立。視野を日本全国の市町村に広げ、地域活性化の取り組みを展開している。今回、「むらまち結び」の代表理事を務める山本社長と企画・運営などを担当している同社・仲山裕文氏に、「むらまち結び」の取り組みなどについて聞いた。

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山本社長(左)と仲山氏


 東洋美術印刷は、2004年より地域活性化事業をスタート。町会、大学、商店街、区役所などと連携を深めながら、飯田橋から千代田区、文京区と活動の幅を広げてきた。2010年には、文京区の地蔵通り商店街振興組合とともに、一般社団法人「ジェイ・コミュニティサポート」を設立。文京区を中心に、街の地域的課題・欲求を解決することを目的に活動を開始。地域のコトづくりのエンジンとして、地域活性化のための各種施策・イベントの企画・実施、事業のコンサルティング、各種助成金などの申請サポート、安心・安全のまちづくりの支援、地域メディア運営などを展開してきた。
 地域活性事業を開始した経緯について山本社長は「既存の印刷ビジネスとは別に、新たな事業の柱として取り組んだのがきっかけだった」と語る。
 当時の取り組みとしては、地元商店街の支援が中心であったという。「主役はあくまでも地元の方達」と語る山本社長は、地域情報を満載したフリーペーパーを制作するにあたり、取材などを地元の大学とのコラボレーションを図りながら行うなど、地域密着の活動を展開してきた。商店街の活性化からスタートした取り組みは、大きな評価を受け、千代田区、そして近隣エリアへと活動範囲を拡げていくことになる。
 そして2015年、千代田区商工業連合会の有志とともに、一般社団法人「むらまち結び」を設立し、千代田区という立地特性を活用した新たな地域活性への取り組みを開始している。

昼の人口は82万人の千代田区

 この「むらまち結び」とは、千代田区やその周辺の都市型資源(購買力、情報発信力、集客力など)を活用し、日本各地の市町村(むらまち)と千代田区をつなぎ、マーケティングなどを支援していくことを目的としている。
 千代田区の人口は、約48,000人。面積では東京23区で19番目の大きさだ。しかし、この千代田区は昼間の人口が約82万人と、別の顔を持っている。毎日、千代田区に通う、82万人のビジネスパーソンや学生達を「むらまち結び」では、「千代田者(ちよだもの)」と定義している。
 この「千代田者」と、全国の市町村をむすびつけるのが「むらまち結び」の役割だ。
 具体的には、82万人という「千代田者」に対し、全国の市町村が有する特産品などの地域資源を販売するための場を提供し、集客・マーケティング支援などを行っている。
 「千代田区をプラットホームとして、他の地域の方達に市場を提供することをコンセプトとしている。我々は、千代田区と他の地域をつなぐことが主な役割であり、あくまでも黒子としての存在である」(山本社長)
 その取り組みの1つとして「むらまち結び」では今年3月、長崎県壱岐市をプロデュースした「〜まるごと味わう〜壱岐の島ウィーク」を開催した。

壱岐のプロモーションを展開

 長崎県の離島「壱岐の島」は、博多港から高速船で約1時間、長崎空港から飛行機で約30分の場所に位置する。島内には小さな祠もあわせると1,000以上の神社がある。島の特産品は、平成26年4月に商標登録された黒毛和牛ブランド「壱岐牛」をはじめ、「新鮮な海の幸」や「壱岐焼酎」など。また、壱岐は「麦焼酎発祥の地」ともいわれている。
 このイベントの主催者である長崎県壱岐市および(一社)壱岐市観光連盟と「むらまち結び」をジョイントしたのは、同じく地域活性に積極的に取り組む富士ゼロックス(株)だという。
 2015年、富士ゼロックス長崎は、壱岐市と地方創生に向けた連携協定「壱岐なみらい創りプロジェクト」を締結。住民が中心となった対話や体験を通じ、観光客誘致や人口増につながる新産業の育成など、これまで培ったコミュニケーション研究技術を活かし支援している。
 山本社長は、富士ゼロックスの取り組みを以前から認識しており、「むらまち結び」の活動などを説明していた。その縁から今回のイベントプロデュースが決定した。

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壱岐全景


商品をPRするのではなく地域の魅力を発信

toyobijyutu_3.jpg イベント開催にあたり、壱岐市側からの要望として挙げられたのは、壱岐産のゆずを使用した加工食品のPRであったという。
 従来であれば、PRしたい商品のポスターやチラシ、また、店頭に飾るPOPなど、印刷会社としては、得意分野のプロモーションである。しかし、「むらまち結び」が提案した計画は、単なる商品販売ではなく、壱岐自体をプロデュースするものだ。
 「ゆずの加工食材だけにフォーカスするだけでは、単なる特売展示会になってしまう。打ち合わせでは、壱岐市の魅力を聞き出すことができたので、その多くの魅力をパッケージとして紹介することで、ゆずの加工品販売だけでなく、観光にもつながるようなPRを手がけるようにした」(仲山氏)
 そこで「むらまち結び」では「東京にいながら、長崎県壱岐の自然の恵みを堪能する一週間」(3月11日〜18日)とテーマを設定し、イベントを開催した。
 まずは毎週金曜日に東京駅前・行幸地下通路で定期開催されている市場「丸の内行幸マルシェ×青空市場」に出店し、「千代田者」を対象に壱岐のプロモーションを展開。都内では流通することが少ない壱岐の食材を使った特別メニューの提供や観光PRなどを実施。
 また、女性販売員に巫女の服装で接客対応させることで、壱岐の魅力を視覚的に表現するとともに、購入者を対象に、島内の神社から譲り受けた「おみくじ」を引いてもらうなどの工夫もしている。さらに、壱岐のゆるキャラ「人面石くん」を会場に登場させたことで、より多くの集客を図っている。

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盛況だった行幸マルシェ

多彩な独自企画を併催

 ゆずの加工食品については、今回のイベント用に開発された「ゆべしソース」をかけた壱岐野菜の試食を行うとともにアンケート調査も実施。さらに、通常は島内でしか流通しない焼酎を特別に取り寄せ、目玉商品として販売も行っていった。
 また、特別企画として、壱岐産のゆずの加工食品「不思議調味料ゆべし」「島の柚子ごしょう」「島のゆずシロップ」と希少性の高い壱岐牛を使ったスペシャルメニューを、神田の人気ビストロ「東京オーブン」と共同でイベント限定の特別メニューを開発し、ランチタイムとディナータイムで提供した。この限定メニューは好評で、ランチ・ディナーで提供された4種のメニューはいずれも完売となった。
 このメニュー開発にも「むらまち結び」が関わっており、仲山氏は「単に壱岐牛にゆずの加工食品を組み合わせるのではなく、ゆずの加工食品3点をうまく調合したものを提供したかった。そのため、試食にはかなりの時間を費やした」と振り返る。
 ランチ・ディナーのメニュー開発支援もプロモーション活動として捉えていることは、「むらまち結び」の強みといえる。
 ちなみにこのゆず加工食品を調合した特性ソースは、多くの方の評価を得ており、正式な商品化も検討されているという。

目指すのは出口戦略〜販路拡大を支援〜

 さらに3月16日には、記者発表会を開催し、今回のイベントの概要を説明するとともに、ゆず加工食品の特長やコンセプトなどを紹介した。また、フェイスブックなどのSNSを活用し、情報の拡散も図っている。
 同日には、飲食品業界向けに、ゆず加工食品の新たな販路開拓を目的に商談会も開催。普段では出会うことが少ない生産者とバイヤーに商談の場も提供している。
 単なる物産展として企画するのではなく、イベントの告知や販路拡大の機会を提供、そして、その地域の魅力を配信するプロモーションこそが、「むらまち結び」の大きな特長の1つだ。
 「我々としては、単発のイベントとして企画・運営するのではなく、継続することで、成果を残していくことが重要だと考えている。今回のイベントでは、いろいろな角度から壱岐を紹介することができたと実感している」(仲山氏)
 最後に山本社長に今後の展開について伺った。
 「全国の印刷会社では、地域活性に取り組んでいる会社も多いはず。我々としては、それらの地域活性資源の販路拡大、つまり出口戦略として千代田区を活用してみませんかというのがコンセプト。ぜひ、地域の魅力をさらに多くの方達に広める手段として、我々を活用してもらいたい。また、富士ゼロックスとは、今後も協力関係を築いていきたいと考えている」

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