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富士ゼロックス、開発プロセスを見直し真の顧客価値の創造へ

2015年1月1日

顧客視点をベースに開発
プロが求める機能を厳選して搭載

 プロ市場向けに上位機種の機能を厳選してコンパクトなボディに搭載したカラー・オンデマンド・パブリッシングシステム「Versant 2100 Press(バーサント2100プレス)」。幅広い用紙対応力や高生産性・高画質印刷などの機能性を有する同機であるが、その背景にあるのは「顧客視点の商品開発」だ。機能性の向上を追求するだけでなく、あくまでも顧客価値創造に重点をおいた機能は、プロ市場から評価されるとともに、その開発プロセスは環境負荷低減にもつながり、昨年12月には「第11回エコプロダクツ大賞」において最上位の経済産業大臣賞受賞という快挙も達成している。今回、同機の企画・開発責任者である富士ゼロックス(株)の鈴木孝義氏(商品開発本部第一商品開発部ゼネラルプログラムマネージャー)に開発コンセプトの立案から完成までの経緯などについて伺った。

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鈴木孝義氏

 富士ゼロックスが目指す商品開発のポリシーは、「ダントツのCS(Customer Satisfaction)ナンバー1の実現」だ。そのために同社では商品企画・開発プロセスを顧客視点でのベースに見直しを実施。この変革への取り組みこそが「Versant 2100 Press」開発の原点となっている。
 「従来の商品はプロダクトアウト、つまり『他社製品よりも高速』、『他社製品よりも高品質』といったメーカー主導の企画によって製品開発が進められる事が多かった。もちろんこれらも重要なコンセプトではある。しかし製品仕様を重視した製品開発は、顧客にとって本当に使いやすい製品なのか、という点を見直す必要があると考えた」(鈴木氏)
 同社では、「Versant 2100 Press」の開発にあたり、顧客の本当のニーズを聞くため、日本だけでなく米国や欧州、そしてアジアなど様々な国と地域でヒアリング調査を実施。この調査では、マーケティング部門だけでなく開発や品質保証など複数の部門担当者を配置し、色々な視点での顧客の意見を聞きだしている。また、より本音の意見を得るために幅広いセグメントのデジタル印刷機器を利用しているユーザーの調査を行った。

顧客ニーズ実現に向け徹底して行われた技術検証

 リサーチしたユーザーの声をもとに開発スタッフがCS視点から改善項目を抽出した上で部門横断のCS検討会を立ち上げ、改めて各項目に対して検証を実施。開発段階になると、そこで立案したコンセプトを実際の機能として実現するための仮説検証を行い、顧客の声を実際の機能として具現化するために技術として落とし込んでいく作業を繰り返し行った。
 「営業やサービスの担当に試作機を実際に見てもらうことで聞きだしたユーザーの意見が機能に反映されているかをチェックしてもらい、要望した機能とは異なるものであれば、フィードバックして改良を加えていった」(鈴木氏)
 結果として200件以上の要望を新たな機能として実現した。具体例をいくつか挙げるとプリンター本体に対しては「画質調整時間の短縮」「ページ内で均一な光沢再現」「封筒ジョブのサポート」「ジャム時の自動用紙排出」など。またプリントサーバーに対しては「ユーザーフレンドリーな操作性」「従来CPSIでのみ提供していた機能をAPPEでも実現」「バリアブル面付け機能の提供」「バリアブルRIPスピードアップ」など、同社では顧客の声を製品として確立するために1つ1つの課題に対し、真剣に向き合いながら議論・検証を重ねていった。そして、この開発プロセスを経て完成したのが「Versant 2100 Press」だ。


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Versant 2100 Press


求められる機能をコンパクトボディに凝縮 

 上位機種の性能を厳選して踏襲し、デジタル化を加速するためのスタンダードモデルと位置付けられている「Versant 2100 Press」。カラー・モノクロともに毎分100ページの高速プリントを維持しながら、体積・質量を上位機種の約半分に低減。さらに消費電力(TEC値)の半減を達成しており、このクラスでは世界で初めて最新の国際エネルギースタープログラム(Ver.2)への適合を実現している。
 「それまで高速のデジタル印刷機の分野では、RIP機能とプリンター本体のフルシステムでエナジースターに適合した製品はなかった。Versant 2100 Pressでは、この分野でも積極的なチャレンジを行っている」(鈴木氏)
 「Versant 2100 Press」のベルト定着器は、上位機種と比較して大幅な小型化を実現しつつ、用紙汎用性と高速高画質化を継承した新規定着技術を採用。これにより坪量52〜300g/平米の広範囲な用紙で毎分100枚(A4)という高生産性を確保。さらに冷却装置についても大幅な小型化を実現。レイアウトの最適設計により冷却長を上位機種よりも大幅に短縮しつつ、毎分100枚(A4)に対して十分な冷却性能を確保している。
 「この2つの装備は、コンパクトでありながら毎分100枚という基本性能は維持する、というコンセプトを達成するためにシミュレーションを重ね実現できた大きな特徴の1つ」(鈴木氏)
 デジタル印刷機の特徴の1つは「必要なときに必要な部数を印刷」。しかし、その場ですぐに印刷して欲しい、というニーズを実現するためには、プリンター本体とは別にプリントサーバーの機能が重要となる。「Versant 2100 Press」では、そのニーズに対応するために新開発のプリントサーバーも搭載している。

データ処理機能を刷新し真の高効率化を達成

 新開発のGX Print Serverは、画像アーキテクチャーを刷新。超高速連帳機に搭載していた高速RIP技術をベースに、独自の中間データフォーマットによる画像処理、RIPアクセラレーターボード等により大容量のバリアブルデータのRIP処理を高速化し、従来の約4倍となる1,200×1,200dpiの高解像度画像を高速に出力することが可能。
 さらに鈴木氏が「プリントサーバーだけが高速化してもエンジン側とつないだときに高速処理できなければ意味がない」と説明するように今回、高速シリアル伝送技術を開発し、GX Print Serverからの大容量データを高速にプリンター本体に伝送し、素早く高品質な印刷が行える技術も採用されている。
 「当社のアーキテクチャーは、RIP済データに対し、基本的に非可逆圧縮をかけないことが特徴。非可逆圧縮によって生じる何らかの画像劣化の可能性を懸念する顧客も少なくない。PX Print Server及びGX Print Serverでは、可逆圧縮を用いてデータ欠落のない状態で描画処理・伝送できるため、画像劣化などの心配もない」(鈴木氏)
 幅広い用紙に対し安定した出力が可能なことも「Versant 2100 Press」の魅力の1つだ。それを実現する技術が「ベルト定着器」であるが、今回はその小型化も実施している。
 「シンプルな固定パットに変更したことで圧力のかけ方が均一になり、用紙へのストレスが軽減され、これまで課題であった封筒のシワの発生も抑制でき、さらに幅広い用紙にも対応できるようになった」(鈴木氏)
 また、BTR(Bias Transfer Roll)を活用した新2次転写技術を採用。BTR径、転写部からの用紙表裏の剥離位置と排出角度を最適化し、薄コート紙への対応力を強化している。
 「これまで薄紙の場合、ベルト接触時にそのままベルトにくっついて搬送され、ジャム発生の原因になっていた。しかし新技術では、ベルト接触後にもきちんと用紙が剥離され、搬送できるようになった」(鈴木氏)
 さらに、リードゲートに対し用紙を搬送方向に押しつけるスキュー補正技術「Gate Aligner」を新たに採用。屈曲用紙経路において、薄紙から厚紙まで安定した用紙搬送およびスキュー補正を可能とするとともにアライニング機構を約半分のサイズで実現している。
 これら新技術により薄紙から厚紙までの多種多様な用紙への印刷が可能。ハガキや封筒といった印刷物だけでなく、長尺印刷やバリアブル印刷を組み合わせることで新たなアプリケーションとして提供することができる。

1時間当たりの生産性へのこだわり

 そして鈴木氏は、こだわった機能として生産性を挙げる。それは1時間当たりの生産性だ。従来、デジタル印刷機では「100枚/分」といったように1分間当たりの出力数をその生産性の指標として掲げている。もちろん「Versant 2100 Press」についてもスペック上では、同様の表記がされている。しかし1分間当たりの生産スピードは、実際の印刷現場において真の基準値と言えるのか。その点について鈴木氏は「デジタル印刷機は稼働時も画質やレジ調整を行う関係で1時間当たりの生産性で見ると、その機能の100%を発揮することができない。Versant 2100 Pressでは、この課題にもチャレンジしており、100%に近い生産性を実現している」と、実稼働を踏まえた「Versant 2100 Press」の生産性に自信を持っている。
 気軽に導入できるデジタル印刷機。鈴木氏は「Versant 2100 Press」をそう表現する。
 「デジタル印刷機を設置したいが、価格面から導入を躊躇するお客様も多い。また実際に導入しても稼働させるほど受注があるか心配と思われるかもしれない。しかしVersant 2100 Pressは、導入コストの問題を解消するだけでなく、どんな仕事に対しても柔軟にかつ気軽に利用できる。印刷品質については、上位機種と同等の品質を提供でき、さらに提供できるアプリケーションが増えることで顧客のビジネス領域の拡大に貢献できるはず」(鈴木氏)


富士ゼロックス、エコプロ大賞で経産大臣賞を受賞

 富士ゼロックス(株)(本社/東京都港区、山本忠人社長)のカラー・オンデマンド・パブリッシングシステム「Versant 2100 Press」が、エコプロダクツ大賞推進協議会主催の第11回エコプロダクツ大賞において、エコプロダクツ部門の最高賞である「経済産業大臣賞」を受賞した。

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表彰式には山本社長ほか鈴木氏ら開発メンバーも出席

 「Versant 2100 Press」は、エントリープロダクション市場に向けて昨年5月に販売を開始。毎分100枚の印刷生産性と小型化を両立したベルトロール定着器を新開発することなどで、従来機と比較し約50%の体積・質量を実現したことが評価された。この質量削減分をCO2排出量に換算すると1台あたり3,738kg-CO2の削減となる。
 また同社が長年取り組んできた資源循環システムや、今回の受賞製品をはじめとするデジタル印刷機の特徴である必要な出力部数を必要なタイミングでプリントできることで印刷物の在庫低減が可能となり廃棄する用紙が抑制できる点も評価を受けた。
 なお、同社が「経済産業大臣賞」を受賞するのは2007年のオフィス向けデジタルカラー複合機5機種での受賞以来、2度目となる。

【審査委員コメント】
 「従来商品とほぼ同等の機能を保ちながら、新開発の小型ベルトロール定着器を搭載し、高生産性と小型・低コスト・軽量化を実現したデジタル印刷機である。独自の資源循環システムによるリユース・リサイクルを徹底させ、個人向けの印刷など多様なニーズに合わせた少部数印刷が可能なオンデマンド印刷の需要に応えることができる。オフセット印刷するほどの量には達しない必要部数を高速で効率的に印刷でき、用紙の削減につながる。多品種小ロット印刷の需要が高まる中、印刷市場のデジタル化を加速し、日本だけではなく、経済発展が著しいアジア・パシフィック各国にグローバルに展開しているなど、優れたエコプロダクツとして高く評価できる」

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