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ギャンギングで多品種・小ロット対応力強化へ 〜 FFGS 井出覚也氏に聞く

2014年9月24日

ffgs_ganging_ide.jpg 多品種・小ロット化の流れが否応なしに進展する印刷物。そこに新たな「価値」を付加することで利益率向上を図る動きが加速する一方、印刷通販をはじめとするWeb受注ビジネスへの参入などで多品種・小ロットへの対応力を強化する印刷会社も多い。そこには当然のことながら、製版工程の工数削減や自動化、複数ジョブの効率的なギャンギング、印刷〜後加工工程のミス・ロス排除など、コストを極限まで引き下げていく努力が必要となる。このような状況に対し、富士フイルムグローバルグラフィックシステムズ(株)(渥美守弘社長、以下「FFGS」)がひとつの解決策として展開するのが自動大貼り・付け合わせソリューション「XMF Planner」だ。今回、同社技術二部の井出覚也主任に、「XMF Planner」のソリューションコンセプトや特長などについて聞いた。

セミオートの日本仕様

 「付け合わせ」、いわゆる「ギャンギング」のソリューションについて、当社は後発であることは否めない。海外市場ではパートナー企業の「メトリックス」という製品を当社のハイブリッドワークフローシステム「XMF」とセット販売しているが、日本市場の要求には合致しないと判断し、日本での展開は行わなかった。
 そこで、2011年10月に日本仕様に特化したギャンギングツールの開発に着手。印刷通販サービスや多品種・小ロット対応に注力する印刷会社の要求レベルを探りながらブラッシュアップし、2012年8月に「XMF Planner」としてリリースした。
 「XMF Planner」は、MIS(経営情報システム)や受注システムから受け取った受注情報をもとに、「XMF」が作成した単面PDFのジョブを自動で大貼りできるサブシステム。これによって、従来、工務が作成した付け合わせ指示書に従って刷版工程で作業していた大貼りを、工務だけで完結させて工数の削減を図ることが可能なほか、多様なタイプの印刷機に対して、効率的な自動大貼り結果を提供できるため、導入設備に依存することなく刷版・印刷コストを削減できるというものである。
 また、印刷品質を考慮して自動大貼りできるため、従来の品質レベルを落とすことなくコスト削減が可能。作業の標準化、効率的な生産計画の遂行、適切な原価管理にも寄与する。
 現在市販されている多くのギャンギングシステムは、プリプレスシステムに統合され、RIPの一部として稼働するものが多い中、我々が目指したのは、工務や生産管理が、より前側で版面設計できる仕組みである。その意味から、XMFから切り離し、XMFと「連携する」という形を取っている。

ffgs_ganging_1.jpg

多彩な受注システムとCSVデータで連携

 MISからCSV形式で受け取った受注情報を、XMF Planner上で納期や用紙、印刷数量などの受注項目でソートや絞込みを行いながら効率の高いギャンギングを行うわけだが、もともと印刷通販ではこの作業を伝票(紙)ベースで行っていた。それを「PCベースで、ドラッグ&ドロップオペレーションによって、付け合わせるジョブの選択から印刷機選択を容易、かつ柔軟に行えるようにする」というのが、我々が印刷通販の市場調査から導き出した答えだった。つまり、欧州・北米型のフルオート仕様ではなく、セミオートの世界である。
 受注情報をそのままフルオートでギャンギングするとなると、設計的に何らかのコストデータベースを持たせておく必要が出てくる。「刷版の仕入値はいくらで、この紙で印刷する場合は、台を分けてでも印刷通しを少なくするべきか」とか、「この印刷機はどれだけ損紙が必要で、ランニングコストはいくら」という情報を事前にMISに紐付けておかなければならない。欧州ではこのような仕組みが実際に運用されているが、よく聞いてみると「最初の1台目は比較的良好な設計が出てくるものの、その後は、使い物にならない版面設計結果となるケースも多い」という。
 よりコストを重視した無駄のない大貼りが望まれている日本で、そこをフルオート化するのは技術的にも相当困難だと判断した。基本的には「ジョブを選択する」というところまでは工務の仕事とし、それを自動的に版面設計するだけでも充分価値がある。

印刷品質を担保する数々の機能

 今後、バージョンアップを重ねることで、現在1台ずつセミオートで行っている作業を、コストデータベースを活用したフルオートへの展開へともっていきたいとは考えているが、それで精度が落ちれば意味がない。
 日本の印刷会社の場合、不特定多数のクライアントのジョブをギャンギングすることに対し、品質保証の面から否定的な意見も多い。そのため、XMF Plannerでは、自動大貼りのシミュレーション条件に、紙目、外揃え、吸引車のドブ、絵柄面積の考慮など、日本の印刷事情に即した実践的な条件を搭載。とくに特許技術である「絵柄面積の考慮」は、データ読み込み時に画像面積率を読み込んで、重たい絵柄部分を版の中心、クワエ付近に自動的に集めてくるという機能である。印刷の立ち上がり時間短縮、色の安定性確保などで威力を発揮する。
 また、大貼りシミュレーション時に、付け合わせに最適なジョブがない場合、仮の空白ジョブを設定する「JOB待ち機能」も他にない特長のひとつ。納期直前まで新規ジョブ受注を待つことが可能となり、「どれだけ原価を下げられるか」を追求する印刷通販では欠かせない機能となっている。
 また、片方向でCSVを受け取り、それをソート&絞込みでギャンギングするだけでなく、そのギャンギング結果をMISにフィードバックすることで、原価計算やジョブ単位での利益計算が按分できるようになっている。印刷通販では原価が見えにくくなりがち。面積率も出すことができるため、そういった情報から原価案分してコストを弾き出せる設計になっている。これは非常に重要なポイントで、XMF Plannerが評判の良い理由のひとつでもある。
 版面設計した後に、ある程度、オペレータが編集できるという部分も重視した。これが簡易編集機能である。

ffgs_ganging_2.jpg

きめ細かなシミュレーション表示と簡易編集

 前述のように、XMF Plannerは自動的に重たい画像を中心に寄せるなどの機能があるが、日本の印刷には、「この絵柄はここにしたい」「ここは毛抜きで作っているので見当を合わせやすいように中心にもってきたい」というこだわりもある。そういった日本特有のこだわりに応えるため、最終的に手動で簡単に編集できる機能を付加している。シミュレーションした後に、そのジョブを開き、例えば表裏の入れ替えや表裏の絵柄の均等化、絵柄の置き換えなど、最終的にオペレータの判断で調整できる。
 一方、後加工でのミス・ロスを防止するための機能も好評だ。自動大貼り結果のプレビューにジョブの受注番号を付けてプリントアウトすることが可能で、名刺やチケットいった同じような絵柄が並ぶジョブでも、指示書にこの出力物を添付することで取り違えなどのミスを防止できる。

W2PやIJ分野への展開も

 XMF Plannerを活用した全体フローのポイントは、事前に工務や生産管理が業務フローの全体設計を行い、その後の工程はできるだけ標準的な流れにするということ。ここが、他にない設計思想で、とくに印刷通販ビジネスのウエイトが高い印刷会社に受け入れられている理由でもある。
 MISの導入が加速する昨今、ギャンギングへのニーズも確実に高まっている。これは多品種・小ロット化に対し、単一のジョブの原価を見ないと利益が取れない時代になっているということ。そこでギャンギングソリューションを採用し、ひとつひとつの受注は赤字でも、付け合わせた平均、つまり台単位で利益が取れるチャンスがあるということだ。
 今後、さらにWeb to Printの仕組みで受注したものをXMF Plannerでギャンギングするというケースも考えられる。特定クライアント向けソリューションにはなるが、Web to Printによる印刷物制作支援ソリューション「iAutolay Magic」とXMF Planner、XMFを活用し、原価を抑え、納期短縮に繋げるという形も見えてくる。
 さらに、インクジェットでのギャンギングもある。難易度は高いが、ひとつのロールに対してどれだけ無駄なく付け合わせられ、シートカットしたものを加工に回せるかということ。また、B2サイズの枚葉機でもニーズが出てくるだろう。
 今回の提案は、設備があればできるものではなく、運用設計そのものをドラスティックに再構築しなければいけない。我々は、そういう面でもこれまでのノウハウを活かしたサポート、提案ができると自負している。

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