PJweb news

印刷産業のトレンドを捉える印刷業界専門紙【印刷ジャーナル】のニュース配信サイト:PJ web news|印刷時報株式会社

トップ > 注目コンテンツ > 印刷業界におけるビッグデータ活用の必要性 〜 コダック 福山誠一郎氏に聞く

注目コンテンツ

印刷業界におけるビッグデータ活用の必要性 〜 コダック 福山誠一郎氏に聞く

2014年8月8日

「人材の壁」を乗り越えたビッグデータソリューション本格展開へ

kodak_bigdata_fukuyama_1.jpg 日本のビッグデータ市場は、2012年の1,900億円から2017年には6,300億円に成長すると見込まれており、このビッグデータがもたらす潜在的な経済効果は7兆7,700億円で、うち小売業では1兆1,529億円と推定されている。しかし、これらの多くはインターネットの世界が主役となっており、リアル店舗ではデータサイエンティストの不足などを理由にビッグデータの活用は進んでいない。そんな中、コダック(同)(藤原浩社長)では、印刷会社のマーケティング力強化策として顧客企業のビッグデータソリューション活用の支援に乗り出している。そこで今回、同社マーケティング本部長である福山誠一郎氏に、印刷業界におけるビッグデータ活用の必要性や具体的なソリューションについて聞いた。

印刷業界のターゲットは「購買履歴」

 そもそも「ビッグデータ」とは、ICT(情報通信技術)の進展により生成・収集・蓄積などが可能・容易になる多種多量のデータの総称で、これを活用することにより、異変の察知や近未来の予測などを通じて利用者個々のニーズに即したサービスの提供、業務運営の効率化や新産業の創出が可能になるというものだ。通常のソフトウェアでは扱えない規模のデータで、相関性が整理された従来のデータベースに対して「非構造化データ」と呼ばれ、ソーシャルメディア、マルチメディア、ウェブサイト、センサー、オペレーション、ログ、オフィス、カスタマーといったデータなどで構成される。
 「ビッグデータ」が認知され、一種の流行になったのは昨年頃から。実際には相当前から存在する概念ではあるが、そこまで手が出なかった小売業などでも、この「流行」をきっかけに意識し出しているのが現状である。
 このうち、印刷業界に最も関連するのは「顧客の購買履歴」である。以前は、スーパーで買い物をしてもレジでその履歴が記録されて終わっていたが、ポイントカードなどの普及によって「何時、誰が、何を買ったか」という記録が取れるようになった。いまではその購買履歴の分析をもとに、プロモーションや商品開発を進めていくという流れができている。とくに印刷業界に関連する「ビッグデータ」ということになる。
 購買履歴は、あくまでビッグデータの中のひとつに過ぎない。例えば、インターネットショッピングの大手ECサイトでは、購買履歴にあわせたレコメンドを行っている。インターネットの世界では購買履歴や自社サイトをユーザーがどのように閲覧したかというログ分析が当たり前のように行われている。
 これがリアルの世界では、電子マネーやポイントカードといったものに紐付けられたデータを分析することになるが、やはり規模が膨大で、以前に比べて統計的な要素も加わり複雑化している。いままでのExcelやACCESSでは扱いきれない規模になっているわけだ。
 しかし、いまの段階で本当に小売業に必要な分析は、本来のビッグデータすべてを扱うレベルのもではなく、その手前のものだと我々は考えている。そのひとつがFSP(フリークエント・ショッパー・プログラム)だ。これは「購買頻度の高いユーザーが優良顧客である」という定義のもと、頻繁に買い物をした消費者にクーポンを提供するというようなもの。これがスタートにある。そして、この延長線上に「CRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)の試作」があるが、ここで実際に上手くいっているケースは少ない。扱いやすいソフトが少ないことに加え、データベースの言語(例えばSQL言語など)を使いこなすといった特殊なノウハウが必要だったことが大きな理由である。
 そこでビッグデータ取り組みのステップを整理してみる(図参照)


kodak_bigdata_fukuyama_2.jpg
 まず、いまあるデータをもっと効果的に活用するため、もう一度使いやすいパッケーソフトと方向づけをもってCRMに取り組む。これが第1ステップである。
 次にCRMの取り扱いに慣れてくれば「なぜ、この顧客はこんな購買行動をしているのか」という疑問が出てくる。そこでデータマイニングのソフトを使って掘り下げたデータ分析を行う。これが第2ステップ。そして最終ステップがハイエンド、いわゆるビッグデータとなる。
 厳密な定義で言えば、本来、リアル店舗がやるべき分析は、データマイニング以前のところ。ここが印刷業界のターゲットになる。

印刷業界になぜビッグデータ分析が必要なのか?

 電通が毎年発表している「日本の広告費」を見ていくと、紙媒体によるセールスプロモーションは2005年から2013年にかけて5,139億円減少し、一方でインターネットは4,903億円増加している。これは、プロモーションにビッグデータを有効活用しているインターネットへ印刷発注者のプロモーションコストがシフトしているということだ。逆に言うと、紙媒体は効果的なプロモーションターゲットの選定ができていないということ。まずは、インターネットと同じ土俵に立つことが必要である。しかし、そこにはデータベースエンジニアや分析官といった「人材の壁」がある。そこを我々のソリューションでお手伝いできればと考えている。
 商流的には、クライアント側で分析しているケースと、印刷会社がデータサイエンティストを抱えてデータを預かり分析するというケース、両方ある。
 この分野では欧米は進んでおり、「この人はこの商品を買いそうだ」という統計的な分析をもとにレコメンドしている。しかし日本の場合、優良顧客にDMを打ってそれなりのレスポンスで喜んでいる。優良顧客には買ってもらいやすい。当然のことだが、その優良顧客は「DMを送らなくても買ったのでは?」という疑問が残る。本来、DMを送らなければ買わなかった人に対してプロモーションするのが最も効果があるわけだ。欧米ではそういうプロモーションをワン・トゥ・ワンで行っている。ここが違うところ。
 「印刷会社側が分析を行って顧客に提案してビジネスにする」。将来はそうなるべきだが、現段階では既にあるデータを有効活用するということが先決で、そこで顧客のデータを安全に扱うというスキルと仕組み作りが必要になる。あとはパッケージソフトの機能をもとに分析することで、ビジネスの流れを見抜く力を身につけることも重要だ。それだけでもかなりの効果がある。
 日本では「ビッグデータ関連に投資したら、これくらいの収益があがる」というイメージをもっている経営者は希。しかし顧客はもっときめ細かなターゲティングが必要なことに気付きだしている。いままで通り、優良顧客の抽出しかできないならば、打てるキャンペーンも限られる。より詳細なターゲティングが提案できればキャンペーンの幅も広がり印刷ビジネスも潤うわけだ。

印刷業界に特化したソリューション

 コダックは、印刷会社のマーケティング力強化のひとつとして顧客企業のビッグデータソリューションの活用を支援することを目的に、データ分析やデータベース・マーケティングの分野で豊富な実績を有する企業と提携し、データ分析ソフトを販売。コダックの印刷業界向けビッグデータソリューションの本格展開を開始する。
 このデータ分析ソフトは、企業に蓄積された膨大なデータを統合し、直感的な操作で集計・分析、データ抽出およびレポート作成までを実施することが可能なパッケージソフトウェア。これをビッグデータソリューションのベースとして、データ分析のカスタマイズまでをサポートする。
 カスタマイズビジネスでのコダックの役割は、そのデータサイエンティストに渡すデータの分析の設計やレポーティングとなる。
 さらにデータ分析ソフトからバリアブル印刷ソフトを通じて、ハイエンドデジタル印刷機に繋げていくということも我々の役割だ。通常のインターネット系企業は、ソフトを使ってターゲティングしたら、そのデータをメール配信ソフトに送るわけだが、印刷業界向けでは、そのメール配信ソフトに相当する部分がバリアブル印刷ソフトになる。そこからハイエンドデジタル印刷機に流していく。
 また、データサイエンティストは統計的な知見はあるが、印刷関連の知識はない。そこに「印刷物としてプロモーションに使う」という視点がなければ、使えないケースも出てくる。そういう意味で、印刷業界と関係の深いコダックには「DMなどを送っていくときに、こういう視点で分析することが必要だ」という知見があることが大きな意味を持つ。印刷ビジネスにおけるプロモーション活動を改善できるデータを抽出、分析する上で、我々のサポートは大きなアドバンテージとなる。

消費誘導を考え直す機会に

 今年5月に全国8都市で開催した「経営力増強セミナー」以降、我々のビッグデータソリューションは大きな反響を呼んでおり、すでに数社が実践に移っている。実践企業に共通して言えるのは、これまで上手くいっていたプロモーションが頭打ちになっていることから、詳細な分析を行った結果、実際の消費者との意識のギャップがあることが判明。そこでもう一度、詳細なデータ抽出・分析をもとにした消費誘導を考え直す機会になっている。
 「分析」というとハードルが高いものだと思われがちだが、今回、我々とデータ分析の分野でのトップ企業がタッグを組むことによって、印刷業界に特化した形でお手伝いできるようになった。我々は、リアル店舗に利用されないまま蓄積されている膨大なデータをマーケティングに活用し、印刷物の付加価値を高めると同時に、小売業界のマーケティング効果の改善に取り組んでいく。

【福山誠一郎氏・プロフィール】
 早稲田大学大学院工学研究科修了、バース大学マネジメントスクールMBA。  大手印刷会社を経て、コダックに入社。マーケティングの他、ビッグデータソリューションなど、印刷物の付加価値を高めるソリューションを展開。流通、メーカーの販売促進を数多く手掛けた経験を持つ。
特集
drupa 2024 特集
drupa 2024 特集

世界最高峰の印刷・クロスメディアソリューション専門メッセ「drupa2024」の事前情報(見どころなど)を公開!
(2024年4月2日〜)

販促アイテム 2024
販促アイテム 2024

印刷会社が提案する「販促アイテム」
(2024年3月25日)

デジタル印刷特集 2024
デジタル印刷特集 2024

「生産工程の見直し」あるいは「創注」という印刷経営戦略としてのデジタル印刷ソリューションにフォーカス。
(2024年3月25日)

検査システムによる品質管理 2024
検査システムによる品質管理 2024

システマチックな検査工程で品質保証と効率化を目指す。
(2024年3月15日)

page2024特集
page2024特集

「page2024」の事前情報を配信。開催テーマは「連携」。
(2024年1月22日〜)

2024年 ここに注目!
2024年 ここに注目!

独自戦略でアフターコロナ時代を躍進する企業、新製品、注目技術を紹介。
(2024年1月1日)

ダイレクトメール特集 2023秋
ダイレクトメール特集 2023秋

成長市場を追う─DMを新たな事業領域に。
(2023年12月15日)

印刷会社の創注
印刷会社の創注

「注文が来ないなら、創り出さなくてはいけない」というストレートなテーマ「創注」にフォーカス。
(2023年11月25日)

インクジェット特集2023
インクジェット特集2023

インクジェットテクノロジーが印刷ビジネスにもたらす新たな事業領域とは。
(2023年9月5日)

特集一覧へ
印刷関連のブログ
twitter|@PJnews_headline
twitter|@PJnews_headline

https://twitter.com/PJnews_headline

facebook|印刷ジャーナル
facebook|印刷ジャーナル

https://www.facebook.com/printingjournal