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ソニー、iGen4によるパッケージ生産を開始 〜 「ソニーストア」限定モデルで採用

2014年8月1日

品質と効率化を高く評価


sony_watanabe.jpg ソニー(株)(東京都港区)は、昨年より同社のヒット商品であるポータブルオーディオプレーヤー「ウォークマン(R)」のソニーストア限定モデルのオリジナルパッケージ印刷の生産機のひとつとしてデジタル印刷機「Xerox iGen4 Press」を活用した。本体の「ウォークマン(R)」だけでなく、パッケージにも特定のアニメキャラクターが印刷されたこの限定モデルは大きな反響を呼んだ。この結果を踏まえ、同社では多品種・小ロット化が進むパッケージ生産の効率化手段としてデジタル印刷機による本格的な運用に可能性を見出した。そこで今回、同社・ビデオ&サウンド事業本部V&S事業部共通設計部の渡辺知宜氏にデジタル印刷機によるパッケージ生産を開始した経緯や成果、そして今後の展開などについて伺った。

 世界を舞台に活躍する同社は、説明するまでもなく様々な商品を取り扱っている。当然、それら商品にはパッケージが必要となる。また同じ商品であってもラインアップ毎にデザインを変えたパッケージ制作をしなければならない。さらに海外向け商品までを含めると、その数は計り知れない。多品種少量対応のため、オフセット印刷で印刷する場合には、版が大量に必要となるためコスト負担も大きく、納期も課題となる。これを解決する手段として同社は、以前から版が不要のデジタル印刷機によるパッケージ生産に関心があったという。そして2012年春、同社は、デジタル印刷機によるパッケージ生産の運用に向け、富士ゼロックス社に相談を持ちかけた。
 デジタル印刷機によるパッケージ生産を検討するに当たり、同社が要望したのは、まず色の再現性であった。
 「当社のパッケージは、写真でなくパステル系の単色ベタといった仕様が多い。そのため色再現性については、強く要望した。またパッケージなので、できるだけ厚い用紙に印刷ができること」(渡辺氏)
 富士ゼロックス社は、この要望を実現するためにデジタル印刷機「Xerox iGen4 Press」によるパッケージ生産の可能性や活用方法について検証を重ねていった。そして検討開始から約1年が経過した2013年夏、同社の人気商品である「ウォークマン(R)」のソニーストア限定モデルのパッケージ印刷に「Xerox iGen4 Press」を採用した。

効率的な生産が可能に

sony_tate.jpg 「最大の魅力は、色校正という作業が簡略化できたこと。オフセット印刷の場合、簡易校正から本機校正と多くの作業工程に時間を費やしていた。しかしデジタル印刷機では、出力された印刷物自体が本製品であり、別途に色校正を確認する必要がない」(渡辺氏)
 この効果は、非常に大きなメリットであったようだ。デジタル印刷機によるパッケージ生産を目指す同社では、海外でのパッケージ生産もオフセット印刷等で行っている今も同様に刷られた色校正紙を国内で確認しなければ、最終的な本印刷を行うことはできない。しかしデジタル印刷機であれば、キャリブレーションも取れており、画面上の確認だけで安心して印刷することができる。この物理的なコスト削減に渡辺氏は、デジタル印刷機による本格的なパッケージ生産の可能性を強く感じたという。
 「また色校正の簡略化が実現できたことで、パッケージ自体のデザイン制作に時間を回せることも大きな魅力。つまり印刷の前段階にかかる時間を有効活用できるメリットができた」(渡辺氏)

デジタル印刷機の性能を引き出すことで生まれる「品質」

 データを入力するだけですぐに印刷。まさにデジタル印刷機の特性が評価されたと言えるが、1番気になるのは「品質」、つまりオフセット印刷とデジタル印刷の品質の相違だ。日本の印刷業界では、デジタル印刷機の普及が進む一方、まだまだその品質に対し、満足していない印刷会社も少なくない。では、実際のユーザーの立場からデジタル印刷機の品質はどう評価されているのか。
 「品質については全く問題ない。当社の場合、デザイン制作の時点でオフセットとデジタルの区別をつけ、制作を行えばよいと考えている。つまりデジタル印刷機の色域にマッチしたデザインや彩色をしている。オフセットとデジタルは、印刷方式自体、全く違う性質であり、オフセット印刷で出来ることをデジタル印刷に求めるようなことは考えていない。大切なのはデジタル印刷機の品質を最大限に発揮できるデザイン制作を行うこと」(渡辺氏)
 つまりデジタル印刷機で生産することを前提にデザイン制作を進めることで、デジタル印刷機が本来持っている機能を引き出し、高品質な印刷が可能になると説明する。
 印刷品質、生産フローとも問題ないことを確認した同社は、すぐに限定モデルのパッケージ生産に取りかかる。そして企画からわずか2ヵ月でオリジナルパッケージを採用した限定モデルを販売。これもデジタル印刷機ならではの特性といえる。

限定モデル4シリーズでiGen4を採用
 
 昨年10月からこれまでにまでに4つの企画で「Xerox iGen4 Press」によるオリジナルパッケージ印刷を実施。オリジナルパッケージの第1弾では、キャラクターを表・中の両面にわたり印刷し、限定モデル専用のパッケージとしてのプレミア感を演出するとともに採用されたキャラクターのファン心理をかき立てる工夫がなされている。表面加工については、PP張りを採用。渡辺氏は「量産化という意味では、表面加工の方式は、今後の課題となるが、パッケージ自体はオフセット印刷と比較しても遜色ないクオリティを実現している」とその仕上がりに満足している。
 これまでも同社では、「ウォークマン(R)」のソニーストア限定モデルを販売していた。しかし販売される限定モデルは、オーディオ端末自体に限定モデル専用の加工が施されているが、パッケージに関しては、量産モデルと同じ箱に梱包されていた。
 同社でも「パッケージについてもオリジナルデザインを」といったニーズがあることは十分に認識しており、実際にゲームや携帯電話等の限定モデルでは、専用パッケージも作っている。しかし今回の「ウォークマン(R)」のように生産台数が少ない限定モデルについては、コスト的な問題を含め、専用のパッケージ制作は、出来ないものとしてあきらめていたという。x_igen4_sony.jpg

商品販売を左右するパッケージの役割

 パッケージは一般的に商品を保護する役目のほか、店頭で消費者に対し、その商品をPRし、購入意欲を誘うことが求められている。では、同社がパッケージに求めることとは何か。
 「当社は、アウトオブボックス・エクスぺリエンス(OOBE)、つまり箱を開ける時の楽しみを重視している。今回の限定モデルでも、特定のキャラクターやミュージシャンを採用しているが、それらのファンが見ても満足できるようなデザインを印刷することで、購入することの喜びを与えられるのがパッケージである」(渡辺氏)
 従来であれば商品購入後、中身の商品を取り出したあと、パッケージはその役目のほとんどを終えている。しかし今回の限定モデルは、当然ながら量産パッケージと異なり、アニメキャラクターなどが印刷されており、本体とは別の商品価値を生み出している。自分の好きなキャラクターがパッケージにも印刷されているというプレミア感は、消費者の購入意欲をかき立てるに十分な効果を発揮した。

最終目標はデジタル印刷機による量産モデルパッケージ生産

 またオリジナルパッケージへの変更は、新たなソニーファンを呼び込むきっかけにもなった。
 「今回、採用したアニメキャラクターのファンにとっては、好きなキャラクターが印刷された限定グッズとして購入した方も多い。もちろん当初は、グッズとして買ったものだが、使ってみて『ウォークマン(R)』の良さを感じてもらったと思う」(渡辺氏)
 その成功を契機に同社は、限定モデルについてデジタル印刷機によるオリジナルパッケージの生産を決定。さらに付加価値を盛り込んだ企画も展開してく方針だ。
 「デジタル印刷機によるパッケージ生産の最終目的は、量産モデルパッケージへの展開である。もちろん、これを実現するには、まだまだ課題が山積しているが、デジタル印刷技術は日々進化しており、それほど遠くないことだと考えている」(渡辺氏)
 今回のプロジェクトに関わった富士ゼロックス社・勝野敏弘氏は「サイズや特色対応など、まだまだ課題があるが多品種・小ロット化が進む市場において、Xerox iGen4 Pressによるパッケージ印刷の可能性を証明できたと思う。また今回の場合、数量限定の小ロットでの運用であったが、その品質は消費者にも満足してもらえることができたはず」と述べている。

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