GBM、バーコードが剥がれないカード「GBMラミカ」開発
2014年2月5日
ポイントカードのリーディングカンパニーであるゼネラルビジネスマシン(株)(本社/大阪市鶴見区今津北1-4-9、山内栄子社長)はこのほど、デジタル印刷+ラミネート加工を駆使したカード「GBMラミカ」を開発し、1月からサービスを開始している。これは、昨今カードの裏面などに付加されることが多くなったバーコード(可変情報)印字と絵柄印刷をワンパスで行い、その後ラミネート加工で保護膜を形成することで、「バーコード部分が劣化しないカード」を低コストで提供できるというもの。これまで製品ラインアップになかった紙カードの提供も可能になり、新たな需要獲得に乗り出している。
1967年の創業時からカード事業一筋でおよそ半世紀の歴史を綴ってきた同社。現代社会では欠かせないコミュニケーションツールとなった「カード」という商材の製造およびソリューションを通じて、時代に即した技術と運用スタイルを提案することで、その有用性だけでなく夢や楽しさを提供してきた企業である。とくにポイントカード事業では、大型商店街やチェーン店など、全国1万社以上の販売実績を誇る、まさに「リーディングカンパニー」として知られる存在だ。
そんな同社が今回、多様化するカードへの要求に対するひとつの「答え」として開発したのが「GBMラミカ」である。
同製品は、デジタル印刷+ラミネート加工を駆使した新時代のカードとして同社が打ち出すもの。その最大の特徴は、昨今カードの裏面などに付加されることが多くなったバーコードやQRコードが擦れても劣化しないという仕組みにある。
通常のオフセット印刷やシルク印刷によるカード製造の場合、可変のバーコードを付与するにはバーコードプリンタで追い刷りすることになるが、そこで問題となるのが擦れなどによってバーコード部分が欠けたり消えてしまったりするトラブルである。消費者はカードを財布に入れて持ち歩くことから数年の利用でバーコード部分のみが劣化し、情報を読み取れなくなってしまうケースがよくあるという。もちろん、このような従来手法でも保護膜を形成する工程を加えれば解決できるかもしれないが、コストは跳ね上がってしまう。
そこで「GBMラミカ」は、デジタル印刷によって絵柄印刷と可変印字をワンパスで行い、その後ラミネート加工で保護膜を形成することで、「バーコード部分が劣化しないカード」を低コストで提供できるというわけである。
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「GBMラミカ」の生産設備として同社が採用したのは小森コーポレーションのデジタル印刷機「Impremia C80」およびGBC製ラミネーター「620OS」(2台)である。
当初想定していた対象メディアはPET。紙ベースで考えられているトナーデジタル印刷機の運用においては当然ながら様々な試行錯誤が繰り返された。
まず問題となったのは静電気の影響とメディアの厚みや強度による搬送部分での負荷。はじめはやはり傷が入った。そこでデジタル印刷機側に改良を加えるべく、小森コーポレーションおよびOEM供給側のコニカミノルタと検証を重ねたが、メンテナンス面を考慮して難しいと判断。結果、同社は材料側のPETにプライマー(下地)処理することでこれら課題をクリアした。通常、プライマー処理するとフィルムが付かないとされていたが、同社は地道な検証を重ね、傷が付かずフィルムも付く下地剤を見つけ出した。テスト開始から8ヵ月。「GBMラミカ」の生産体制が整った。
デジタル印刷機の機種選択および検証において、同社の居川和義取締役生産本部長は「非吸収素材のカード製造の実績はなかったことから不安は確かにあった。しかし先行者利益を獲得するために互いにリスクを受け入れ、メーカー側と我々の知識と経験を結集して成功に至った」とし、メーカー側の熱意と協力体制を高く評価している。
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同社の山内盛也取締役品質管理部長は「100枚程度が最低ロットになるだろう」と説明。従来のオフセット印刷手法の最低ロットが1,000枚だったことから、これまで受注できなかった需要を取り込めるとしている。
しかし、小ロット多品種を想定していた一方で、意外にも大ロットの案件が多いという。それはやはり「劣化しないバーコード」の効果だ。
通常のバーコードプリンタによる追い刷りは、一般的にカード1枚の状態で印字していくため、複数台で分散処理しても需要が集中するとロットが制限される。今回の設備投資は、オフセットとのハイブリッド運用で大ロットの内製化にも貢献する。
さらに、通常のバーコードプリンタによる追い刷りの不良率は3〜5%と言われている一方、「Impremia C80」による印字不良率は1%を切る。これはコスト、納期に直結するメリットとなる。
一方、これまで同社の製品ラインナップにはなかった紙カードへのアプローチも大きな収穫になりそうだ。
本来カード素材はPVC(ポリ塩化ビニル)や白PETが主体だが、ここ最近の景気低迷を受け、その下の発泡PET、さらには紙が増えつつある。
同社の場合、PVCやPET、IC用シートなどを通しているオフセット印刷機に紙を通すことは、紙粉などの問題から抵抗があったため、紙カードは取り扱っていなかった。紙カードは診察券などで多く使用されており、「GBMラミカ」はコンビニより多いとされる開業医を対象とした市場を取り込むツールとしても期待される。
同社では、カード適性の高い片面光沢・片面マットの紙を採用。厚み別に2種類を用意している。また、ラミネートフィルムは、クリア・マットの2種類。表裏を使い分けすることもできる。さらに、マットフィルムは油性ボールペンで直接書き込むことも可能である。
同社では今後、PVCのデジタル印刷化も視野に入れており、さきごろコニカミノルタが発表した、カード・プラスチック印刷のノウハウを持つMGI Digital Graphic Technology(本社/フランス)との資本・業務提携に大きな期待を寄せている。
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「GBMラミカ開発という事業をきっかけに会社全体が大きく成長した」と山内社長は語る。
「代表になって2年になるが、私はこれまでのトップダウンの体質をボトムアップに変えていきたいと考えていた。今回の設備投資によって、それが実現したように思う。部署を跨いだ活発なコミュニケーションによって、全員が知恵を絞ってひとつの事業を立ち上げたことは、今後の当社において大きな財産になるだろう」