グラフィックアーツ向けマシン開発のパイオニア、96歳で逝去 〜ハンス・ミュラー氏〜
2013年3月13日
ミューラー・マルティニグループの創設者であり、グラフィックアーツ業界向けマシン開発のパイオニアであるハンス・ミューラー氏が96歳で逝去した。
国際的な名声を享受するグローバル企業グループは、1946年、ハンス・ミューラー氏により開発された世界初のパッドおよび製本用綴じ機から生まれた。今日、世界の多くの印刷製本会社がミューラー・マルティニの先進的なシステムソリューションとサービスを活用して印刷産業界でそれぞれ活躍している。
現在も稼働しているミューラー・マルティニのマシンで、創業者ハンス・ミューラー氏の銘板が付いているものがまだ多く見られるという。彼は先駆者として製本加工技術の歴史にいつかの重要なマイルストーンを刻んだ。世界初のパッド綴じ機をつくった黎明期からわずか5年後、初めての無線綴じ機を製作し、さらには1954年、三方断裁機と折丁フィーダを組み合わせた自動中綴じ機を発表した。当時の競合は時間1,000部程度だったが、彼はこの自動中綴じ機でそれを一気に4倍の能力に引き上げてしまったのだ。
1956年には綴じヘッドが折丁と同期して動きながら綴じる「フライングステッチヘッド」を開発、さらなる速度アップを実現して、業界に一石を投じた。
1964年、マールブルグ(ドイツ)にグラッファ印刷機の工場を設立、1969年にはフェルベン(スイス)のマルティーニ社を合併吸収、1998年にはバート・メルゲントハイム(ドイツ)のVBFブックテクノロジー社を合併吸収、さらに主要な世界各国をカバーする販売およびサービスネットワークを確立することで、ミューラー・マルティニグループは、グラフィックアーツ業界におけるリーダー的な地位を確立した。
「ユーザーのニーズに焦点を合わせる」というハンス・ミューラー氏の長年の姿勢が成功のベースになっている。「プロフェッショナルなユーザーに、市場にマッチした最新の技術をマシンという形で提供できたことを大変うれしく思っている。ユーザーからの提案やユーザーとの共同作業で生まれた技術は少なくない」と、かつてのインタビューで彼は語っている。
成功のもうひとつの重要な要因は、社員に対する高い信頼であったのかもしれない。「多くの社員が興味深く仕事に取り組むようにできたことは、非常に喜ばしいこと」。会社と社員への強い思い入れは、彼が高齢となってもゾーフィンゲンの自分のオフィスにほぼ毎日通っていたことでも分かる。ハンス・ミューラー氏の逝去で我々は、何十年にもわたり印刷製本業界の発展に貢献してきたパイオニアをひとり喪ってしまった。