drupa2012で話題を独占したランダ・ナノグラフィとは?
2012年5月25日
drupa2012で一躍話題を独占したのが、ランダ社のNanographic Printing Processだ。同技術においては、drupa会期直前から小森コーポレーション、ハイデルベルグ、マンローランド・シートフェッドとの提携が相次いで発表され、主要オフセット印刷機メーカーへ技術供与されることが明らかになっている。
また、この技術を採用した6機種のデジタル印刷機が同時発表され、Indigoの生みの親で「デジタル印刷の父」として知られる同社代表のベニー・ランダ氏が自ら行うプレゼンテーションは、一時、予約が2〜3日先まで満席の状態になるなど、大きな関心が寄せられた。
Nanographic Printing Processは、水性インクを使った新しいデジタル印刷技術。その中核をなすのは、数十ナノサイズの顔料粒子であるLanda NanoInkだ。強力な光の吸収体で、均一でシャープなドット、高光沢忠実度、広いCMYK色域を特徴としている。
この技術は、デジタルインク画像を形成するためのインク・イジェクターを採用しており、そのプロセスにおいて、非常に高速に動作して画像を形成する。
まず、NanoInk各色は、紙などの被印刷媒体ではなく、熱をもったブランケットコンベヤーベルト上に吐出されてイメージを形成。描画されたイメージは、インクの水分が蒸発することで極薄のインク膜(オフセット画像のインク膜厚の半分である500ナノメートル)となり、圧胴によって被印刷媒体に転写される。
高い耐磨耗性や耐スクラッチ性を持つだけでなく、コート紙、非コート紙からリサイクルされた厚紙までの幅広い用紙に対応。新聞印刷からプラスチックパッケージフィルム印刷まで、いかなる事前処理やコーティング、また印刷後の乾燥も不要である。
同技術は、前述の通り、極薄のインク膜厚であることから、デジタル画像形成においてページ単価を抑えることが可能で、また水性インクであることからエネルギー効率が良く、環境に優しいプロセスでもある。
発表された6機種のLanda Nanographic Printing Pressは、枚葉タイプ3モデルと輪転タイプ3モデル。4色対応のW50を除いて最大8色印刷に対応。解像度はW50が600×600dpiで、それ以外は600×600/1,200×600dpi。
【枚葉機】
▽Landa S5(商業印刷用):B3(20インチ)、最高印刷速度1万1,000枚/時、片面・両面
▽Landa S7(商業・出版印刷用):B2(29インチ)、最高印刷速度1万2,000枚/時、片面・両面
▽Landa S10(商業・パッケージ用):B1(41インチ)、最高印刷速度1万3,000枚/時、片面・両面
【輪転機】
▽Landa W5(ラベル・パッケージ用):560ミリ(22インチ)幅、最高200メートル/分、片面
▽Landa W10(パッケージ用):1,020ミリ(40インチ)幅、最高200メートル/分、片面
▽Landa W50(DM・トランスプロモ、出版印刷用):560ミリ(22インチ)幅、最高200メートル/分、両面
写真を見ても分かるように、ユニークなグラフィックユーザーインターフェースも特徴のひとつだ。iPadを思わせるような特大のLanda Touchscreenは、右側が主にジョブ管理用エリア、左側が主にマシンの状態を表示するエリアになっている。
また、オペレーターが機械から離れると、表示はVital Signs Modeに変わり、50メートル離れたところからも簡単に読める大きなフォントで表示。さらにタッチスクリーン・タブレットによって、全ユーザーインタフェースを表示することもできる。
1993年にIndigoデジタル印刷機でデジタル印刷革命を起こしたベニー・ランダ氏。「デジタル印刷による印刷物は年1兆ページにのぼるが、印刷市場全体ではわずか2%に過ぎない」と指摘した上で「我々は、オフセット印刷の品質と生産性を有し、デジタルの多様性を提供する当技術によって、残り98%の市場獲得を目指す。そして印刷業界に第2のデジタル印刷革命を起こす」と語っている。