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2010年/2013年 デジタル印刷予測 〜日印産連がアンケート調査

2011年5月5日

 (社)日本印刷産業連合会(猿渡智会長)では、国内の印刷産業におけるデジタル印刷の状況を把握し、さらに活用度を高めていくための対応策を調査研究することを目的に2010年5月、印刷業界におけるデジタル印刷に関するアンケートを実施した。同調査では、有版印刷(通常の印刷)、デジタル印刷(トナー)、デジタル印刷(インクジェット)の3つの印刷方式と印刷付帯サービスを合わせた4項目についての現状と3年後(2013年)の売上予測について質問を行った結果、デジタル印刷(インクジェット機=+4ポイント、トナー機=+3ポイント)と印刷付帯サービス(+2ポイント)の成長が予測される一方、有版印刷は-9ポイント減少するという予測が浮き彫りとなった。
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53社に164台が導入済

 同調査のアンケート票の送付先は、印刷機械を主体的に設備している印刷業界団体である、印刷工業会、全日本印刷工業組合連合会、日本フォーム印刷工業連合会、日本グラフィックサービス工業会、日本グラフィックコミュニケーションズ工業組合連合会、全日本シール印刷協同組合連合会、全国グラビア協同組合連合会、全日本スクリーン・デジタル印刷協同組合連合会の各団体から選んだ合計681社。デジタル印刷機(生産機)の保有状況では、53社に164台が導入されており、1社平均3.1台でカラー機が56%、モノクロ機が44%となっている。取得時期は、5年以上前は12%に過ぎないが、3年以内が42%、1年以内が28%を占めている。
 回答企業の売上高について、構成比率が最も多いのは1億円以上30億円未満の印刷会社が回答企業の57%を占めているが、1億円以下の小規模印刷会社の7%を加えると3/4は、中〜小規模の印刷会社からの回答で、デジタル印刷を小ロット印刷に活用している姿がうかがえる。一方で150億円以上の大手印刷会社は11%であるが、大量のデータプリントなどを高速デジタル印刷機で処理していると推察される。

堅実なモノクロ機と将来性を感じるカラー機
 
 カラー機の収益性については、全体で「儲かる」が37%、「±0」が34%、「儲からない」が29%で、4割弱は収益を得ているが3割は収益に課題があるとしている。またモデル別の回答では、最も普及しているトナー・カット紙・A3フルカラーモデルは、「±0」・「儲かる」・「儲からない」の順番で各々1/3ずつとなっている。
 カラー・ワイドフォーマットでは、大判のポスター、サイン&ディスプレーなどがスクリーン方式からデジタル方式への移行が進んでおり、「儲かる」が41%。「±0」が38%と堅実にビジネスとして成立しているようで、「儲からない」は21%と少ない。
 カラー・ロールtoロールの印刷品目は、シール・ラベル、軟包装などのプラスチックパッケージ、新聞、ドキュメント、データプリント(トランザクション)、トランスプロモなど多岐の品目が混在。多くの品目がデジタル印刷されているが、「儲からない」が50%を占めている一方で、「儲かる」は33%、「±0」が17%となっている。
 デジタル印刷ビジネスにおけるモノクロ印刷の収益性について、「儲かる」が46%、「±0」が34%、「儲からない」は20%と少なく、現状のモノクロ印刷は堅実なビジネスとなっている。
 今後のデジタル印刷機の導入予定については67%がカラー機を導入予定で、モノクロ機の導入はカラー機の半分の33%。カラー機よりもモノクロ機の方が収益性が良いという回答が多いことから見ると矛盾を感じるが、回答者の多くがモノクロビジネスに限界を感じるとともにカラービジネスの将来性への期待を伺わせる。
 なおカラー機の導入予定は1年以内が60%、3年以内を合わせると90%が将来性を期待していることが伺える。一方でモノクロ機の導入時期は1年以内20%、3年以内を含めても60%。
 デジタル印刷で売上が1位の受注品目は、商業印刷、データプリント、事務用印刷(名刺、ハガキ、グリーティングカードなど)、シール・ラベルの4品目が主体を占めている。

ハイブリッドからフルカラーへ
 
 商業印刷の売上比率は、現状で有版印刷78%、印刷付帯サービス13%、トナー機7%、インクジェット機2%であるのに対し、3年後との比較では、デジタル印刷などは増加(トナー機=+4ポイント、インクジェット機=+3ポイント、印刷付帯サービス=+3ポイント)で有版印刷の比率は減少(-9ポイント)と予測されている。
 カット紙への印字、ナンバリング、可変情報出力などのバリアブル印刷における売上比率は、現状でトナー機43%、有版印刷31%、印刷付帯サービス16%、インクジェット機9%となっているが、3年後の比較では、増加が予測されているのはインクジェット機(+10ポイント)と印刷付帯サービス(+2ポイント)であり、有版印刷(-6ポイント)、トナー機(-4ポイント)は減少が予測されている。固定情報を有版で印刷して可変情報をデジタル印刷するハイブリッド印刷から、白紙へのフルデジタル印刷への移行が進むことが読み取れる。
 大判印刷/大判プリントの売上比率は、現状でインクジェット機56%、有版印刷29%、印刷付帯サービス11%、トナー機4%。現状と3年後の比較では、インクジェット機がわずかに(+2ポイント)増加が予測されているが、トナー機と印刷付帯サービスは横ばいであり、有版印刷がわずかに減少(-2ポイント)するとの予測となっている。
 出版印刷(アルバムなどの一部作りを除く)における売上比率は、現状で有版印刷84%、トナー機10%、印刷付帯サービス6%、インクジェット機は0%だが、3年後の比較では、増加はトナー機(+7ポイント)と印刷付帯サービス(+3ポイント)、インクジェット機については現状も3年後もゼロであり、有版印刷は大きく減少(-10ポイント)すると予測されている。
 ブックオンデマンド(BOD)の売上比率は、現状でトナー機71%、印刷付帯サービス29%、インクジェット機0%であり、3年後の比較では、増加はトナー機(+6ポイント)とインクジェット機(+1ポイント)で、印刷付帯サービスは減少(-8ポイント)するとの予測となった。
 フォトアルバムにおける売上比率は、現状でトナー機60%、インクジェット機25%、印刷付帯サービス15%。3年後の比較では、大幅に伸びるのはトナー機(+10ポイント)だけであり、インクジェット機(-7ポイント)、印刷付帯サービス(-3%)はいずれも減少するとの予測である。
 事務用印刷における売上比率は、現状で有版印刷48%、トナー機40%、印刷付帯サービス7%、インクジェット機5%で、3年後の比較では、増加はトナー機(+11ポイント)とインクジェット機(+3ポイント)であり、印刷付帯サービスは横ばい、有版印刷は-15ポイントとの予測である。
 
用途によって異なるインクジェットとトナーの可能性

 ビジネスフォーム(DPS/データプリント)における売上比率は、現状で有版印刷53%、トナー機25%、印刷付帯サービス13%、インクジェット機9%であり、3年後の予測はそれぞれ48%、17%、15%、19%と、有版印刷とデジタルを連携したハイブリッド印刷が多く用いられている。現状と3年後の比較では、増加はインクジェット機(+10ポイント)と印刷付帯サービス(+2ポイント)で、減少はトナー機(-7ポイント)と有版印刷(-5ポイント)が共に-8ポイントとの予測である。データプリントがトナー機からインクジェット機へ、モノクロからカラー出力へ、ハイブリッド印刷からフルデジタル印刷への移行が読み取れる結果となった。
 シール・ラベルにおける売上比率は圧倒的に有版印刷が高く、現状では有版印刷79%、トナー機9%、印刷付帯サービス6%、インクジェット機5%であるが、3年後の比較では、増加はトナー機(+1ポイント)、インクジェット機(+2ポイント)、印刷付帯サービスが(+1ポイント)で、有版印刷のみ-4ポイントの予測である。
 セキュリティタグ、RFIDにおける売上比率は印刷付帯サービスの比率が高く、現状で印刷付帯サービス60%、有版印刷24%、トナー機10%、インクジェット機6%。3年後の予測はそれぞれ60%、27%、8%、5%で4分野の比率に大きな変化はなく、現状と3年後の比較では、有版印刷のみ+3ポイントの増加であるが、印刷付帯サービスは横ばい、デジタル印刷機はトナー機(-2ポイント)、インクジェット機(-1ポイント)と共に減少が予測されている。
 オフセット印刷によるパッケージ・包装・特殊印刷の売上比率も圧倒的に有版印刷が高く、現状で有版印刷87%、印刷付帯サービス11%、トナー機2%、インクジェット機0%であるが、3年後の比較では、増加はインクジェット機(+2ポイント)、トナー機(+1ポイント)、印刷付帯サービスが共に(+1ポイント)、有版印刷のみ減少(-4ポイント)が予測されている。

デジタル印刷で最も重要なのはバリアブル印刷+後加工

 グラビア印刷によるパッケージ・包装・特殊印刷の売上比率も圧倒的に有版印刷が高く、有版印刷93%、印刷付帯サービス7%、デジタル印刷はトナー機、インクジェット機、共に0%。
 現状と3年後の比較では、増加はトナー機(+2ポイント)、インクジェット機(+1ポイント)、印刷付帯サービス(+1ポイント)、減少は有版印刷(-5ポイント)と予測されている。
 フレキソ印刷によるパッケージ・包装・特殊印刷の売上比率も圧倒的に有版印刷が高く、現状で有版印刷98%、印刷付帯サービス3%、デジタル印刷はトナー機、インクジェット機、共に0%。
 現状と3年後の比較では、増加は印刷付帯サービス(+15ポイント)、トナー機(+3ポイント)、減少は有版印刷(-20ポイント)の大幅減、インクジェット機はゼロの予測である。
 特殊印刷/その他の売上比率も有版印刷が高く現状では有版印刷76%、インクジェット機9%、トナー機7%、印刷付帯サービス7%。
 現状と3年後の比較では増加はインクジェット機(+11ポイント)、トナー機(+8ポイント)、印刷付帯サービス(+3ポイント)、有版印刷は-20ポイントの大幅減の予測である。
 新聞印刷の売上比率は、現状で有版印刷86%、トナー機9%、印刷付帯サービス5%、インクジェット機0%だが、3年後との比較では、増加はトナー機(+7ポイント)、印刷付帯サービス(+2ポイント)で、減少は有版印刷(-9ポイント)となったがインクジェット機はゼロのままと予測されている。
 デジタル印刷で最も重視されているのは「バリアブル印刷」で「バリアブル後加工」と合わせると32%と1/3を占める。続いて「オンデマンド(短納期)対応」が22%、デジタル印刷と有版印刷を組み合わせた「ハイブリッド印刷」の14%、「後加工」が4%である。ここまでは印刷と加工という物作りであり全体の7割以上を占める。一方、ソフト分野である「ワンストップサービス」(11%)、「システム提案と構築」(9%)、「クロスメディアの一環」(7%)、「その他」(1%)は全体の3割を切る結果となった。

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