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読者負担のない環境整備へ 〜電子出版制作・流通協議会〜

2011年1月18日

 電子書籍元年といわれた2010年。この動きに対応すべく、日本の印刷大手2社の大日本印刷と凸版印刷が発起人となり「電子出版制作・流通協議会(高波光一会長)」が昨年7月に設立された。電子出版産業の発展のため課題の整理と検証、配信インフラ基盤に関わる問題解決、市場形成における検証や電子出版振興に関わる提言等、電子出版の健全な成長を目指し、活動を開始した同協議会の川崎誠一事務局長、池田敬二氏、長谷川智信氏の3氏に、設立から現在までの取り組みや今後の活動計画などについてお話を伺った。

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川崎誠一事務局長(中央)、池田敬二氏(右)、長谷川智信氏


----電子出版への対応に向けて印刷大手2社が協力した背景とは。
 川崎 総務省と文部科学省、経済産業省が2010年3月、ネットワークを使った出版物の利活用について検討する「デジタル・ネットワーク社会における出版物の利活用の推進に関する懇談会」、いわゆる三省懇談会を発足させ、国の施策レベルでも急速な動きがある中、電子出版に関して印刷、流通、IT系企業、出版社等の連携はうまくとれていなかったのが正直なところ。当然、電子出版となると、これまでとは違うプレーヤーも多く参入することもありプラットホームの問題など、多くの課題について議論する必要がある。その観点から大日本印刷と凸版印刷の思惑が一致したことが一番のポイントと考えている。

----設立から約半年、現在の会員数は。
 川崎 当協議会は89社でスタートしたが、現在は160社にまで増加し、印刷業界以外の産業界からの企業が数多く在籍している。それだけ電子出版の本格的な市場参入により、環境がどのように変化するのか関心があるということだと思う。

----電子出版の登場により、「紙の書籍」が衰退するような意見も多いが。
 池田 電子出版だけの問題ではなく、出版業界の本業である紙メディアの書籍ビジネスが曲がり角にきている中、電子出版に取り組まなければならないという動きが活発になったことも事実。また印刷業界も電子出版に対応するといった観点ではなく、紙、電子の双方を使い、読者とコンテンツが出会う環境を整備することで業界全体が活性化するはず。

----電子出版の健全な発展と掲げているが、そのための施策は。
 池田 電子出版の登場により、著者と読者を結んでしまえば、その中間工程は必要ない、という究極の意見まで飛び交っている。実際にそのシステムづくりも進んでおり、もし実現してしまうと印刷〜出版〜流通など、これまで関わってきたすべての産業がビジネス経路を断たれてしまう。そのためにもオープンでフリーなフォーマット、つまり相互運用性を持った中間フォーマットを規格することで、どんな印刷会社でも、その市場に参入できる基盤を整備することが当協議会の役割である。

----やはり標準化が重要ということか?
 長谷川 市場経済の日本において各社が自由に規格を設定し、独自性のあるサービス展開をした方がいい、といった意見もある。しかし以前の家電メーカーで展開された規格競争を思い出してもらいたい。市場に規格が異なる2機種のビデオレコーダーが提供され、結果として勝ち残った機種は普及し、負けた機種は市場から姿を消す。これだけなら単なる企業間の競争だが、負けた機種を購入した消費者にとっては大きな損害である。このように電子出版においても消費者、つまり読者に負担をかけないために最低限のルール、規格が必要であり、そのしくみづくりこそが当協議会の使命である。

----現在の活動状況について。
 川崎 おかげさまで、あらゆる産業界から参加があり、とても喜ばしいことではあるが、その分、各産業によって視点が違うのも事実。ですから当協議会としては、その異なった視点合わせを行い、また同じように電子出版に対する知識レベルにも差があるので、共通認識ができるようにしている。
 池田 委員会としては4つの委員会と特別委員会を設け、特に中心となってくるのは、技術と流通である。ポイントとしては、メタデータと交換フォーマット、コンテンツIDに関する検討を制作・流通の立場から活動していく。各委員会については、毎月定期的に開催されている。また4つ各委員会には、テーマ別の部会やWG(ワーキンググループ)も設け、早急に成果を発表できるよう活動を行っている。この委員会で検討された事項を他の団体とも連携して進めていくことも今後予想される。

----これからの活動予定について。
 池田 2月にシンポジウムを開催し、あらためて電子出版の制作・流通に関する共通認識を持ってもらう。また6月には、年次総会を予定しており、当協議会としてのセカンドステップに向けた事業計画が発表されると思う。また今後は、ニュースリリースの配信による活動状況の報告なども積極的に実施していく。
 長谷川 設立の大きな目的は、業界主導で都合のいい規格をつくるのではなく、最終的なユーザー、つまり読者にとって利便性がある環境を構築することが当協議会の役割であり、この点で大きな誤解を持っている方が、まだ多く存在している。そのためにも今後は、最終ユーザー主導のビジネスモデル構築を支援することを踏まえ、利便性の高いフォーマットの定義に注力していく。
 川崎 さまざまな産業界からの参加によって、意見の方向性を定めるのに苦労しているが、逆に考えるとそれだけ多くの視点から電子出版について議論できる。それも当協議会の特長である。確かに電子出版の発展により紙メディアの衰退を懸念する意見もあると思う。しかしビジネスチャンスと考えれば、印刷産業だけでなく、あらゆる産業にとって事業領域の拡大に繋がるはず。

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