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デジタル印刷ビジネス成功のヒント ~印刷発注者の意識調査から見えてくるもの~

2010年8月16日

info_yamashita.jpg 印刷発注者は、印刷物に何を求めているのか...。印刷会社は印刷発注者のニーズを的確に捉えているのか...。リサーチ&コンサルティングサービスを提供している(株)インフォトレンズは昨年、印刷発注者と印刷会社を対象にそれぞれ意識調査を実施。その結果から両者の意識のズレが浮き彫りになった。そこで、コダックグラフィックユーザー会で行なわれたインフォトレンズ シニアコンサルタントの山下潤一郎氏による講演「デジタル印刷ビジネス成功のヒント~印刷発注者の意識調査から見えてくるもの、Web to Print活用への期待~」の要旨を抜粋し紹介する(文責本紙)。

いま、Web to Print・デジタル印刷に取り組むべき理由

 日本の実質GDP成長率と国内印刷産業出荷額成長率の推移を比較すると、2010年には実質GDPがプラスに転じる予想である一方、印刷産業の出荷額予想は依然としてマイナス成長が予想されており、印刷産業の業績回復は景気回復に遅行していることが分かる。
 (社)日本印刷技術協会によると、2007年度に7兆1400億円だった国内印刷産業出荷額は、リーマンショック以降低迷を余儀なくされ、2010年度は場合によっては6兆円を割り込み、5兆8500億円になると予想している。もし、これが現実のものとなれば、3年間でマーケットは18%縮小することになる。
 このように、景気回復を待っていても、印刷産業の業績は回復しないことが予想され、業績回復を待つ間にも市場規模は縮小する。
 非常に厳しい状況に直面している印刷産業だが、我々は、いまこそ「待ち」から「攻め」へ転換すべきタイミングだと考えている。その際、Web to Print・デジタル印刷が強力な武器になるわけだ。
 Web to Print・デジタル印刷が印刷会社にもたらすメリットは、小ロットジョブの利益率改善や間接コスト削減、価格競争の回避といった「利益率の改善」をはじめ、既存ジョブ確保および新規ジョブ獲得やオフセットとの融合による「売り上げの拡大」、顧客との「パートナー関係構築」などが挙げられる。一方、印刷発注者は「発注コスト」「在庫・廃棄費用削減」「印刷物利用者の満足度向上」「企業イメージ向上」などが考えられる。
 現在国内では、Web to Printおよびデジタル印刷に取り組んで成功している事例はそれほど多くない。競争力を高め、顧客との関係を強化するという意味でも、いまが絶好のタイミングと考える。

選ばれる印刷会社への変革~競争力を高めるポイント

 インフォトレンズでは2009年5月、印刷発注者と印刷会社を対象にそれぞれ意識調査を実施した。
 まず、印刷サービスに対する重要度/満足度について、発注者は「印刷品質の高さ」「印刷品質の安定性」「納期の確実さ」「人的信頼関係」に関して重要度、満足度ともに高い結果となっている一方、「小ロット対応」「納期の短さ」「価格」「見積もり」「提案力・課題解決力」は、重要度が高いにもかかわらず、満足度は低い。
 一方、印刷会社が考える「自社の強み」では、発注者が重要度、満足度ともに高い結果となった「印刷品質の高さ」「印刷品質の安定性」「納期の確実さ」「人的信頼関係」に関して、印刷会社も比較的「強み」と考えている。印刷会社が考える「強み」が、発注者の満足度につながっていることが分かる。
 しかし、「小ロット対応」「納期の短さ」「価格」なども「強み」と考えているようだが、これらにおける発注者の満足度は低い。さらに、発注者において重要度が高いが満足度が低い「見積もり」「提案力・課題解決力」については、「強み」と考えている印刷会社は少ないという結果が出ている。
 印刷会社が今後強化したいサービスで、最も多かったのは「価格」、続いて「印刷品質の高さ」「印刷品質の安定性」。「価格」はサービスを強化することで、発注者の満足度を高める効果をもたらすが、その他の「印刷品質の高さ」「印刷品質の安定性」については、すでに発注者の満足度は高い。
 一方で、発注者が重要視しているが満足していない「小ロット対応」「納期の短さ」「見積もり」「提案力・課題解決力」については、強化したいサービスに挙げている印刷会社はそれほど多くない。
 つまり、印刷会社は良いものを安く提供することで不況を乗り越えようとする意思が見られるが、これは、必ずしも発注者の満足度を効果的に高める方向性ではないということが分かる。
 また、発注者が受けたい提案、印刷会社が行ないたい提案の調査においても、発注者は、印刷コストなどの「費用削減の提案」が多いのに対し、印刷会社にその意識はあまり見受けられない。
 デジタル印刷に対する重要度/満足度調査でも、「納期」「小ロット対応」「対応用紙サイズ・種類」「画質」「コスト」すべての項目において発注者より印刷会社の方が重要度を低く考えている一方、印刷会社が考えているより、発注者の満足度は高いという結果が出ている。
 これら一連の調査結果をまとめると以下のようになる。
▽印刷会社の強みが発注者の満足度につながっていない。
▽発注者が重要だと考えるサービスを強みとする印刷会社が多くない。
▽印刷会社におけるサービス強化の取り組みは、必ずしも発注者の満足度を効果的に高めるものとなっていない。
▽提案に関しても、発注者が期待するものと印刷会社が考えるものは、必ずしも一致していない。
▽発注者と印刷会社のデジタル印刷の評価においてもズレが生じている。
 しかし、これら分析結果から、小ロット・短納期対応力、営業・マーケティング力、コスト競争力の向上が、今後の差別化ポイントとなることが見えてくる。

Web to Print・デジタル印刷のメリット

 Web to Printにおいて先進国である米国で行なわれた「Web to Print導入による効果」についての調査では、ビジネス面、顧客面、生産面など幅広い効果が報告されており、とくに「売り上げ」「新規顧客開拓」「商圏拡大」「顧客満足度」「ワークフローの効率化」「ジョブ当たりの所要時間」では、およそ6割が「改善した」と回答している。一方、発注者への調査でも、平均14%のコストダウンが報告されている。
 国内の発注者に対する今後1~2年間における発注量(オフセットを含めた発注量全体)の増減に関する意識調査では、「増加」と応えたのは22%であるのに対し、「減少」と応えたの37%。一方、デジタル印刷の発注量の増減に関する調査では、過去1~2年、今後1~2年ともに、「増加」という結果が出ている。
 これらの結果から、オフセット印刷機とデジタル印刷機を併設し、クライアントからの要望に応じて使い分けること、また、オフセット印刷機にデジタル印刷技術をインラインで搭載し、パーソナライゼーションなどのニーズに応じて、オフセットのジョブにフルスピードで追加印字する、といった取り組みの必要性が見えてくる。デジタル印刷は、既存のオフセット印刷ビジネスを刺激することが可能なのである。
 Web to Printは、「発注者-印刷業者」の関係を「パートナー」へと、前向きな変化をもたらす。Web to Printは、発注者のシステムに直結できる特殊性を持つ。つまりITインフラを一本化し、それを活用してコミュニケーションを密にすることで発注者の課題を共有、解決できる。そこにデジタル印刷が加わることで、より小回りのきいたサービス提供が可能になる。

Web to Print・デジタル印刷 成功の鍵

 Web to Printの普及率を比較してみると、米国56%、西欧30%に対し、日本はわずか4%。日本でWeb to Printおよびデジタル印刷の導入・活用が進まない背景として「ITスキル不足」「営業・マーケティングスキル不足」「発注者におけるデジタル印刷に対する理解不足、間違った理解」などが考えられる。デジタル印刷物を発注していないプリントバイヤーにその理由を尋ねたところ、「価格が高い」に続いて「デジタル印刷を使うメリットが不明」という回答が多かった。
 これらの調査から、インフォトレンズでは、Web to Print・デジタル印刷 成功の鍵は「ITスキル向上」「営業・マーケティングスキル向上」「発注者に対するデジタル印刷のプロモーション実施」にあると考える。これにより、発注者の課題解決・メリットを実現し、満足度を向上させ、発注者との関係を「パートナー」へと進化することが重要になる。また、これら成功の鍵は、調査結果から印刷会社はあまり得意でないことが分かっている。ベンダーや印刷会社同士の協力体制を強化することも、このビジネスを展開・発展させるために重要になると考える。

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