プロネクサス、人的ミスを完全排除〜デジタルコンテンツファクトリー E2E 導入
刷版工程の自動化運用を開始
株券印刷専業会社として歴史が始まった(株)プロネクサス(東京都港区、上野剛史社長)。創業者である上野一雄氏は、「印刷屋と呼ばれたくない」と常々言っていたという。これは印刷の中でも株券印刷というニッチな市場において、印刷技術だけでなく、法令遵守の観点から間違いは許されないという厳格な品質を要求されていることに誇りを込めて言ったとされている。その創業者の想いは、現在も同社の生産拠点である戸田工場(埼玉県戸田市)に受け継がれている。同工場では、その厳格な品質要求をさらに進化させることを目的に2021年3月、(株)SCREEN ICT ソフトウエアが開発したデジタルワークフロー自動化ソフトウエア「デジタルコンテンツファクトリー E2E(以下、DCF)」を導入し、刷版工程における自動化運用を開始した。
同社は、1930年に証券の印刷を専門とする会社として前身である亜細亜商会として創業。終戦後の1947年に事業の再興・発展を目指し、亜細亜証券印刷(株)を設立。現会長(上野守生氏)は、1980年代以降、ディスクロージャービジネスと投資信託関連の分野にも事業領域を拡大。その後、さらなる業容の拡大と発展を受け、2006年に現在の(株)プロネクサスに商号変更。現在では、企業のディスクロージャーやIRを支援する専門会社として高度な実務ノウハウとITを駆使したトータルソリューションを提供。2020年には創業90周年を迎えている。
戸田工場は、2010年に東京都港区から移転し、稼働を開始した同社の生産拠点。データ受け入れから刷版、印刷、後加工、さらに物流までの一貫生産体制を構築している。ミスの許されない株券印刷からスタートした品質管理のDNAを源流にISO9001認証に基づいた精度の高い製造・検査体制を有している。生産する印刷物としては、顧客企業の総会関連の印刷物をはじめ、金融商品関連の印刷物など、主に企業と株主・投資家を繋ぐ開示書類を中心とした印刷物の製造を手がけている。
戸田工場・工場長である西山健児氏は「株券などの印刷は、1枚多くても少なくても許されない絶対品質が求められる。創業者の想いは、現在も我々に引き継がれており、この取り組みを徹底することで、お客様からの信頼を得てきた。生産現場としては、品質で顧客ニーズに応えることが重要である。また、印刷品質や納期だけでなく、総会資料などは、決算情報などが記載されるため、情報漏洩を防ぐためのセキュリティ体制が求められる。お客様の信頼やニーズに対し、当社は、常に絶対的な品質でお応えしている」と、顧客を見据えた品質管理の重要性を強調する。
繁忙期における刷版工程の課題解決へ
上場企業をメインに4,000社近くの取引先を有する同社であるが、そのうち約1,500社の顧客企業の株主総会が毎年6月に開催される。そのため総会関連の印刷物が集中し、同工場にとっての繁忙期となる。
副工場長である住田竜彦氏は「印刷工程や製本工程はもちろんのこと、繁忙期の刷版工程は、まさに激務と言え、生産効率を向上させることが急務であった」と説明する。
同社の刷版チームは4名体制で、面付け、検版、CTP出力を行っており、通常期であれば日勤のみで作業が完了する。しかし、繁忙期には刷版作業が膨大になるため日勤・夜勤の24時間体制で対応している。そのため、通常期から多能工教育を進めて繁忙期にマンパワーが不足しないよう備えている。
生産管理部刷版チームの大山輝也氏は、「教育を受けた社員にもRIPの操作をお願いするが、やはり簡単な作業しか頼むことができない。そのため複雑な作業は当チームの社員が行わなければならない。結果として、当チームの社員の作業負荷を軽減することはできなかった」と、繁忙期の実情を振り返る。
加えて多忙な中での作業は、様々なミスが起きやすい。その中で大山氏が、とくに問題視していたのがヒューマンエラーの発生だ。この課題をSCREEN GP ジャパンの担当営業に投げかけたところ、自動化を基軸とした課題解決提案があったという。その提案こそが今回のDCF導入による刷版工程の自動化だ。