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躍進企業REPORT

総合商研:制作部門130名超で全国最大規模の全ジョブ運用[XMF Remote導入事例]

印刷ジャーナル 2021年6月5日
小林専務(左)と熊谷部長
フリーマガジン「ふりっぱー」
若手の選抜メンバーで立ち上げ
すべてのジョブがXMF Remoteに登録されている

 総合商研(株)(本社/北海道札幌市東区東苗穂2条3-4-48、片岡廣幸社長)は、2018年に「XMF Remote」を導入。全国の同社事業所での全面的な運用定着を達成して、印刷事故削減・営業効率向上・新規顧客獲得など様々な形で成果を上げている。全ジョブ運用による具体的な成果、スムーズな運用定着・活用を図る上でのポイントや今後の展開などについて、専務取締役・小林直弘氏および制作本部部長・熊谷雅人氏に伺った。


「社内一貫生産体制」と「顧客の集客に貢献すること」をポリシーに様々な事業やサービスを展開


 総合商研は1969年創業、1972年に株式会社として設立された商業印刷会社で、創業以来「社内一貫生産体制」と「顧客の集客に貢献すること」をポリシーに様々な事業やサービスを展開している。昨年度(2020年7月期)の売上高は160億円、うち約70億円が年賀状事業、残り90億円がチラシ、自社媒体などの商業印刷事業である。

 同社売上の大きな柱となっている年賀状事業は、全国の流通店舗などから申し込まれる年賀状を印刷するサービスだが、この事業も「流通店舗への集客につながる取り組みのひとつとして始めた」(小林専務)とのこと。

 続いて、将来のチラシを代替する販売促進媒体のあり方を展望して新規事業を構想し、地域密着型の自社媒体「ふりっぱー」を創刊した。札幌市の情報を掲載する全戸宅配型のフリーマガジンで、発行部数86万5千部(2018年10月時点)を誇り、札幌市民の誰もが知る情報誌として定着している。総合商研はこの宅配網を自社で構築・運用しているが、「ふりっぱー」創刊の目的のひとつに「『チラシ到達率を高めるための配布インフラ作り』があった」(小林専務)とのこと。さらに同社は地域BWA(Broadband Wireless Access)の無線局免許を取得し、個人向けに有料インターネット接続サービスなどを提供している(対象エリアは札幌市内全区)。「これは、ICTを活用することで、『ふりっぱー』の機能をより強化することを目的としている」(小林専務)。


XMF Remoteのスムーズな定着のポイント「推進リーダーの存在」と「立上げステップ」


 小林専務が最初にWebポータルシステム導入を構想したのは10年近く前の2012年頃。他メーカーのものも含めて比較検討したが、当時はまだ各社製品のUIの操作性、PCの環境面などの問題で時期尚早と判断し、導入には至らなかった。その後、FFGSより最新バージョンの紹介があり、完成度が高まっていると判断できたことで導入に踏み切った。そして、アサプリ(三重県桑名市)や服部プロセス(兵庫県神戸市)といったXMF Remote発売初期に導入して成功を収めていた企業の視察も行い、「当社でも使っていけそうだ」「こう運用すれば成果を出せそうだ」と確信したという。

 XMF Remote導入は、「とても良いタイミングだった」と小林専務は話す。「検討を始めた頃は、まだ当社の主要顧客である流通小売の多くの店舗にインターネット環境がなかったが、導入した2018年には整備され、まず、オンライン校正を提案する環境が整った。また、営業での活用を考えるとスマートフォンでデザリングなどが使えるようになったこともいいタイミングだった」(小林専務)

 同社がスムーズにXMF Remoteを定着・活用できたのは、こうした背景に加え、社内での運用定着を図る上で、活用推進チームを発足させ、ステップを踏んでの計画的な立上げを行ったことが挙げられる。

 熊谷部長がこの推進チームの中心となって、まず制作部門での活用定着を図り、営業はその次という順番で展開した。「お客様や営業に浸透させるには時間がかかると思ったので、まず制作での運用定着から始めた」(熊谷部長)。また、「最初は制作部門の中から選抜した若手チームに徹底的に教え、その後は彼らに広めてもらう」という手法を取ったこともポイントである。まず、熊谷部長が制作部から10名の若手メンバーを選抜してチームをつくり、集中的に操作や利便性などを教えた。そして、その10名に各部署で広めてもらい、熊谷部長は進捗管理とサポートに当たった。その結果、まず札幌と旭川、続いて東北、関東へとスムーズに展開、新型コロナウィルスの影響で遅れていた関西も昨年運用が定着し、現在では同社拠点に在籍する130名超の同社制作スタッフ全員がXMF Remoteを活用するという全国的にも最大規模のXMF Remote全ジョブ運用の事例となった。

 制作部門での運用定着に続いて、営業部門での定着に取り組んだが、その際も熊谷部長が選抜した若手数名に徹底的に教え、そこから広げていく形をとった。また、展開中に制作課長1名が営業部に異動する人事があり、その制作スタッフが積極的に営業へ広めたことも定着を促進した。

 選抜チームのメンバーには、若手を選ぶことが有効だと熊谷部長は語る。「若手の方が操作をすっと覚えてくれるし、便利さの理解も早い。自分のスタイルが出来上がっていないこともあって、素直に吸収してくれる」

 現在、同社では毎月約1,200のジョブが動いているが、大手流通関係の顧客における多くの関係者が関わる大きなジョブを含めたすべてのジョブがXMF Remoteに登録されている。現状、約30社の顧客が利用。社員数百名が関わるジョブにもXMF Remoteが活用されている。


制作データ起因の印刷事故撲滅・営業効率向上・新規顧客獲得等様々な成果を達成


 「XMF Remote」をスムーズに定着させることができた総合商研では、様々な導入の成果が既に出ている。例えば、導入前にはCTP版出力時に誤って過去版を出してしまったり、制作が誤って修正箇所以外の部分を触ってしまい、修正の必要のない部分を変更してしまったり、といったミスが原因で、1本で数百万という仕事の刷り直しもあったため、年間トータルで相当な金額の損失が出たこともあったが、現在では出力データの管理や制作での修正ミスなどに起因する印刷事故は根絶できたという。「XMF Remoteで履歴管理ができるようになったこと、制作スタッフ全員が自動検版を含めて運用するようになったことで、こうしたミスはなくなった」(熊谷部長)

 また、営業効率も大きく向上した。「流通小売大手のお客様のチラシの仕事では、1つのジョブに店長やバイヤーなど40〜50名が関わっているため、校正紙でやり取りしていた当時は、2名の営業がベタ付きで週5日通っていた。しかしXMF Remote導入後は、1人が週1回か2回訪問するのみ。それだけで工数が10分の1以下に減ったことになる」(熊谷部長)

 営業が制作にXMF Remoteを通じて顧客からの修正指示を伝えられるようになったことも、営業の効率化につながっている。とくに、多くの小組みの広告があり、7〜8名の営業を抱える「ふりっぱー」では、その効果は非常に大きい。

 XMF Remoteは営業活動にも大きく貢献しており、新規案件では必ずXMF Remoteを活用した運用フローを提案している。「例えばページ数150ページほどの通販カタログの仕事では、カタログに掲載する商品を扱うクライアントが何社もいて、そちらも含めた校正や取りまとめが求められた。また、校正も絶対間違いが許されないので、XMF Remoteでこうした期待に応えられることが、高く評価され、受注につながった」(小林専務)。


軸足をしっかり置きながら、顧客の声に応えるツールに


 同社の既存顧客からも、XMF Remoteは「簡単に使える、仕事を効率化できる」と高く評価されている。「最初に説明したときは腰が重たいが、自身で何回か使っていただくと『簡単だね、便利だね』と言ってもらえる」(小林専務)。例えば、チラシの仕事で複数のバイヤーの修正を取りまとめる作業を顧客の販促担当者が担当しているケースがある。XMF Remoteはその作業を大幅に効率化できるため、こうした販促担当者からの評価は非常に高い。しかし、なかには「やることが増える」という認識を持ってしまい、なかなか使ってもらえない顧客もいる。その顧客を如何に説得するか、これは今後の課題のひとつである。「販促担当者からも、使いたがらない周囲のバイヤーに使っていただく方法について相談を受けたりしている」(熊谷部長)。

 小林専務は最後に、「最近では、紙媒体だけでなく、インターネットでの集客についてお客様から相談をいただく。販売の現場の方々は、ネットでの集客ノウハウを持っていない。流通店舗への集客を常に考えてサービスを拡げてきた当社に、今後も多くのチャンスがあると思っている。当社の『社内一貫生産体制』と『集客をする』ことに軸足をしっかり置きながら、顧客の声に耳を傾け応えていくこと。同時に、社内の効率化をさらに進めること。XMF Remoteは、その強力な武器になる」と力強く語った。