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躍進企業REPORT

スキット:アヤト(富山)グループ会社化で封筒・伝票部門強化

印刷ジャーナル 2020年10月5日
綾藤顧問と田村社長(右)
富山県小矢部市のアヤト本社
封筒・伝票部門を強化する

営業ノウハウ吸収し直受注拡大めざす

 スキット(株)(本社/福井県福井市、田村美津雄社長)は、富山県の印刷会社である(株)アヤト(本社/富山県小矢部市)を8月7日にM&Aし、同社をグループ会社化した。製版会社出身のスキットは、印刷・関連業界が取引先の中心となっているが、官公庁をはじめ一般企業の取引先を多く持つアヤトの営業ノウハウを吸収し、直受注の取引先拡大を目指していく考えだ。また、封筒・伝票類を得意とするアヤトの生産機能により、スキットにおける同部門の事業を強化する。一方のアヤトには、スキットが持つ豊富な営業アイテムの技術ノウハウを提供する。グループ化によるシナジー効果で企業としての成長のスピードを早めていく。

官公庁・一般企業への企画提案力に魅力

 アヤトは1954年に創業した印刷会社。富山県小矢部市のランドマークとなっている「クロスランドおやべ」までは徒歩10分というアクセスの良さだ。「未来を彩る印刷・情報企業」をコンセプトに、販促物から書籍・冊子、事務関連、大判プリント、ARなどの事業を展開している。

 一方のスキットは、1976年に創業した製版会社出身の印刷会社。印刷・関連業界を取引先の中心としながらも、受け身体質からの脱却を図り、2010年から通販事業に参入。現在は、ポケットフォルダー/選挙印刷/圧着DM/ノベルティ制作/封筒印刷/車両広告の6つの商品展開型の通販サイトを運営している。そして、受け身体質からのさらなる脱却を図るとともに、売上市場エリアの拡大と新事業への参入などを効率的に進めるために開始したのが「M&A事業」への取り組みだ。

 「今年1月に開催した経営計画発表会において、経営者が執れる戦略としてM&Aによりグループ企業を増やしていくことを宣言した。そこでマッチングサイトに登録したのだが、当社のグループ企業として一緒にやっていくのに最適なアヤトという企業と出会うことができた」(田村社長)

 スキットがM&Aの相手先企業に求めた第一の条件は、「企画提案力のある印刷会社」。通販事業を除いて、同社の取引先のほとんどは印刷・関連企業であるため、「仲間仕事のノウハウはあっても、例えば官公庁に対して、どのように営業をかければいいのかも分からない」(田村社長)ため、官公庁や一般企業に多くの取引先のあるアヤトからこのような直受注の営業ノウハウを吸収し、通販事業以外でも取引先拡大を目指していくことを今後の狙いとしている。

将来的にはPP封筒にも対応する工場へ

 そして、スキットがアヤトに魅力を感じたもう1つの理由は「封筒・伝票類」の印刷を得意としているところだ。スキットではこれまで、封筒印刷についてはオンデマンドによる少部数のデザイン封筒・オリジナル封筒を得意としてきたが、カラーや特色、大ロットになると外注に頼らざるを得なかった。その点、アヤトでは封筒専用印刷機を設備しているため、今後は封筒印刷についてはアヤトの生産設備を活用することで、グループ化のメリットを最大限に活用していく。

 さらに、「将来的にはPP封筒にも対応していく。アヤトの工場に設備を導入する予定」(田村社長)としており、これにより封筒事業を強化していく考えだ。

アヤトにはスキットの持つ豊富な営業アイテムの技術ノウハウを提供

 今回のM&Aによって綾藤社長は顧問に就任し、スキットの田村社長がアヤトの4代目社長に就任した。アヤトの従業員は現在13名いるが、営業・現場ともに若手の多いスキットと比べるとベテラン社員が多く、社長交代という新たな風は社内の空気を一変させ、企業再生の刺激的なカンフル剤となっているようだ。

 「田村社長は現在48歳。若手社長へのバトンタッチにより、社内には良い意味での緊張感が生まれている。若手社長ならではの、大胆かつパワフルな経営に期待している。今回、身内に後継者がいないことからスキットに株式を譲渡しグループ企業となったが、今後のアヤトの経営を任せられる優秀な若手経営者だと確信している」(綾藤顧問)

 スキットとアヤトの両社の社長となった田村社長は現在、アヤトの幹部社員にスキットの組織図やルール、評価方法などを教育しながら、営業面においてはスキットの持つ豊富な営業アイテムのノウハウを提供している。これにより、アヤトでは提案営業の幅が広がることになり、グループ企業化によるシナジー効果を最大限に活用できるようになる。

 「まずは、約半年間をかけてアヤトの幹部社員を教育し、親会社であるスキットを超える社員集団に成長させていきたい。そして今後も新商品の開発を続け、営業・技術ノウハウでコラボレーションしながらグループ化によるシナジー効果で両社の事業領域を拡大していきたい」(田村社長)

さらなるM&Aで成長のスピードを加速

 「M&A事業」への挑戦を開始した背景について田村社長は「アヤトの売上は約1億5,000万円ある。これだけの売上を新たに作っていくには長い年月が必要になる。企業の成長のスピードを早めていくことを考えたとき、M&Aは必ずしも近道ではないかも知れないが、マイナスではないと考えた」と説明する。

 M&Aにより、企業としての成長を加速させていくスキットグループの今後に業界の注目が集まりそうだ。