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甲南堂、「EQUIOS Online」でクライアントニーズ解決へ

2023年3月25日

携帯がスマホに進化したような感動〜クライアントも「もはや前には戻れない」


 (株)甲南堂(本社/神戸市東灘区、*本社機能:神戸市中央区、水落翔社長)は2018年3月、全体最適化を目的にプリプレスワークフローシステム「EQUIOS」を導入。2021年7月には、オンライン校正による営業の移動時間のロス削減、社内の制作・検版作業等の効率化を目的に、Webポータルシステム「EQUIOS Online」を導入し、兵庫県内の大手生協や企業を中心とした200社を超えるクライアントの案件をEQUIOS Onlineで管理している。コロナ禍を背景にリモートワークと非対面の意識が急速に拡がる中、EQUIOS Onlineの活用でクライアントの新たなニーズに対応していく。

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EQUIOS Onlineで200社を超えるクライアントの案件を管理


 同社は1929年、神戸市東灘区の地で創業した。90年以上の歴史を誇る老舗の印刷会社である。約120名の従業員のうち、総勢70名を超えるクリエイティブスタッフによる一貫した制作体制を強みとしており、クライアントニーズに応じたベストなチーム編成で企画はもとより、校正・編集・デザイン・Webシステム開発・撮影・映像制作など、幅広いサービスでクライアントの課題解決を実現している。

 2008年には、料理写真に特化したフォトスタジオを新設。「おいしそうに撮る」ことをコンセプトにしている。また2018年には本社機能を神戸市中央区の「モードピア」に移転。2019年には社名を(株)甲南堂印刷から、現在の(株)甲南堂に変更。2022年には水落翔氏が新社長に就任するなど、社会変化に対応すべく企業形態の変革を続けている。


EQUIOSとの親和性で導入を決定


 同社がWebポータルシステム「EQUIOS Online」を導入したのは2021年7月。生産本部の浅野大輔部長は、「入社から10年ほど営業をしていたが、校正紙の受け渡しのためだけに会社とクライアントを何往復もすることに疑問を抱いていた」と当時を振り返る。ただ、その時は1人の若手営業マンであり、何かを変えることもできず、「オンライン校正システム」のような製品も知らなかったため、「時間の無駄ではないか」「もっと効率的に動けないのか」と悶々としながらも、校正紙の受け渡しに車を走らせていたようだ。

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 その後、生産本部の部長という現在の立場になり、様々な展示会を視察する中で知ったのが「オンライン校正システム」の存在だ。会社に検討を打診したところ、その効果の理解を得ることができ、システムを比較検討することになったが、同社はもともと「EQUIOS」を使用していたため、「EQUIOSとの親和性を考えると、EQUIOS Online以外の選択肢は考えられなかった」(浅野部長)と、迷うことなく導入を決定した。

 そして、同システムを運用するにあたり、社内ワークフローの構築に動くことになった。まずはSCREENの3日間の学習会に、リモートも含めて可能な限りの管理職が参加。その後、営業・制作・校正・製版の各部署の代表で本部組織化し、運用案を策定した。次に、企画制作本部 校閲部 シニアアドバイザリーの青木勝宣氏が社内教育の担当者になり、自社に必要な情報だけを抜粋してマニュアルを作成。さらに営業・制作・校正・製版など、カテゴリーでブロック分けして教育した。「役割軸で分け、各部署のリーダー以外のメンバーには全体感を浅く周知した上で、自身が所属する部分のみの操作を習得させた」と青木氏。これにより、拒絶反応を極力少なくしながら運用を進めていくことができた。

 その後、テスト案件を制作各チームで設定。ある程度の実験案件を実施した後、主要案件の「内校で使用」「クライアント校正まで行けそうなもの」の目標をまとめ、月ごとに進捗を確認しながら社内ワークフロー構築を進めていった。

 「現在は大物以外、内校でEQUIOS Onlineを使用する段階まできている」(浅野部長)。今後の課題は、大ページの複数スタッフが関わる案件の実施、そしてクライアント校正の拡大であるという。


車移動は「体感として半分」、校正待ちの時間ロスも激減


 Zoomなどオンラインの打ち合わせが常態化してきたといっても、営業職にとってクライアントと対面しての折衝は不可欠なもの。しかし、単なる「校正紙を持っていくだけ」の移動は、もったいない時間の使い方と言われても仕方のないことだろう。

 同社は本社が東灘区にあるという関係上、クライアントも東灘区近辺が多い。現在、本社機能を置いている神戸市中央区のモードピアからは車で片道30分、往復で1時間。これが1日に何往復というと、かなりの時間ロスと言わざるを得ない。営業本部 係長の平湯史氏は、「校正紙のみの受け渡しのための移動は体感として約半分はあったと思う。かなりの足枷になっていた」と振り返る。EQUIOS Onlineの導入により創出できた時間を有効的に活用し、売上を伸ばしていく工夫をしながら動いているという。

 現在、EQUIOS Onlineは社内ワークフローとしては7割程度の案件に使用しているが、クライアントとのオンライン校正で活用しているのは2割程度。新規クライアントには基本的にオンライン校正での取引を推奨しており、既存クライアントにも「いつでも画面上で即座に確認できて、その場で指示ができるのですごく便利ですよ」とそのメリットを訴求しながら、将来的にはすべてのクライアントとEQUIOS Onlineでの取引を目指していくということだ。

 制作部門のリーダーの1人である澤田八都氏は、EQUIOS Onlineによるクライアントとのやり取りは、作業効率や校正品質の向上など、現場に様々な効果をもたらしているようで、その効果について「携帯電話がスマホに進化したような感動がある」と表現する。

 まず、クライアントと校正紙でやり取りしていたときは、校正紙の回覧が滞り、期限までに戻ってこないことも多々あったようで「関与者が数名いるため、休日の担当者もいる。その点、現在はデータをアップすれば関与者はどこにいても同時に確認できるため、『校正待ち』の時間が激減した」(澤田氏)。営業の平湯氏も「校正紙を持って行っても、担当者が休みで渡せたなかったということもあったが、そのような無駄な時間がなくなった効果は大きい」と話す。時間に関係なくいつもでも見てもらえることは同社だけでなく、クライアントも効果を感じているようで、「もはやオンライン校正なしの頃には戻れないというクライアントもいる」(平湯氏)ということだ。

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総勢70名を超すクリエイティブスタッフによる一貫した生産体制が強み


制作の作業負荷軽減、校正の人為的ミスのリスクも激減


 また、校正紙を保管するスペースとしても、初校・再校・三校と進む中で、校正紙は徐々に増えてくる。何かあったときのため、1ヵ月程度は保管しておかなければならず、クライアントにとっても大量の校正紙は邪魔であったはずである。

 「EQUIOS Onlineは、過去の履歴をすべてデータで管理できるため、校正紙のスペースが不要になっただけでなく、何かあった場合もどこの段階で修正が入ったのかを即座に確認できる」(澤田氏)。

 そして、校正のやり取りでの「不安」を解消できたこともメリットだと評価する。

 「EQUIOS Onlineの導入前は、修正はPDFのメール添付でやり取りしていた。クライアントからは手書きで修正が入り、それを手入力で打ち込むため、人為的ミスが発生するリスクがあった」(澤田氏)

 さらに「真ん中の右下あたりのコメント」などと文章で指示されることもあったようで、「捉え方で差が出る指示は確認しなければならず手間がかかっていた。その点、EQUIOS Onlineでは、指示を正確に把握でき、修正のコメントをコピペできるため、人為的なミスが発生するリスクは激減した」(澤田氏)と、お互いの共有意識をマッチさせることができるようになったことも評価している。

 また、PDF校正の場合は、データ容量の都合で画像が粗く表示されるため「この写真で大丈夫なのか?」と不安になるクライアントもいるという。その場合、実際に使用するjpegのデータを別途で送るという二度手間が発生していたようだが、「カタログの仕事のときなど、何百点もの写真をまた送るのかと思うと、ため息が出そうになった」(澤田氏)。そのような不安と作業負荷から解放されたメリットは計り知れない。

 一方、製版では、制作から送られてきたデータは印刷用としての完全データではないため、EQUIOS Onlineの導入前は、製版工程で校了データをもう一度確認する必要があった。例えば、制作からきたOKデータにアウトラインをかける際、一文字ごとにグラデーションが入って判読不能になるといった不具合などもあったようで、照らし合わせて差分をあおり検版する必要があったという。製版のリーダーである徳廣良太氏は「ページ数にもよるが、1ページあたり確認に1分弱の時間がかかっていたため、160ページだと単純計算で160分もかかっていたことになる。この作業がすべてなくなった効果は大きい」と評価する。EQUIOS Onlineには「差分表示機能」が搭載されているため、作業効率は4割以上は上がったということだ。校閲の青木氏も「差分表示機能で校閲もやりやすくなった」と評価する。

 「これまではクライアントがOKしたデータをそのまま印刷できるという保証がなかったが、EQUIOS OnlineはRIP済みのデータで校正するため、エビデンスがとれるようになった。級数が小さい、線が細い、インクが多いなどの製版のプリフライトチェックの機能も便利」(徳廣氏)


進捗状況の可視化で作業効率アップ、仕事量も一目で確認可能


 また、最初は意図していなかった課題で、EQUIOS Onlineを活用する中で見えてきたのが、進捗状況が可視化できるようになったことだ。「製版という部署柄、校了までの流れが不透明で見えていなかったが、EQUIOS Onlineにより校了までの動きが誰でも、どのタイミングでも確認できるようになったため、進捗状況を加味して仕事を運べるようになり、作業効率向上につながった」(徳廣氏)

 また、同じクライアントでも様々な媒体の受注があるため「メールでは自分が今、動かさなければならない仕事は可視化できないが、EQUIOS Onlineは視認性に優れ、今、自分がやるべき仕事を一目で確認できる」(澤田氏)。媒体別にアイコンで見られるようになっており、アイコンに鍵マークが付いているものは「待ち」の状態、鍵マークのないものは自分がやるべき仕事だと一目で判別できる。

 校正画面で質問事項も記入できるため、その都度メールしなくてもチャットのように会話でき、リアルタイムに進行できるのも便利な機能のようで、「漢字が間違っていると思うのですが...などと質問できる。クライアントからもすぐに返事をもらえるため、校正をスピーディーに進めることができる」(澤田氏)。

 そして、これらの機能による作業の効率化により、「1日あたり1時間以上は作業時間の短縮につながっていることは間違いない」(澤田氏)。

 さらに、EQUIOS OnlineはiPadにも対応している。「例えば、休日に出先でクライアントから問い合わせが入ってきても、すぐに情報を確認できる」(澤田氏)


今後も「守りのDX」として社内意識の醸成にも活用


 EQUIOS Onlineにより、大きな成果を上げている同社だが、成功した要因の1つとして、SCREENの「運用サポートプログラム」により社内ワークフローをスムーズに構築できたことを挙げている。

 「定期的な会議やヒアリングでサポートしてくれるものだが、その中でも他社の成功事例の紹介は、運用を構築するにあたって非常に参考になるものだった」(浅野部長)。今後は同社も新たなユーザーに「成功事例」の1社として紹介されることは間違いなさそうだ。

 浅野部長は「今後も世の中では『非対面型ビジネスモデルへの転換』が求められることが予想されるが、当社はEQUIOS Onlineを『守りのDX』として活用しながら、クライアントの新しいニーズに対応していく。クライアントの課題解決と同時に、社内意識の醸成にもつなげていきたい」としている。同社にとってEQUIOS Onlineは、単に校正作業の効率化を推進するツールではない。会社を変革させる機能を備えたシステムとして、その力を最大限に活用していく考えだ。

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