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【対談】アズーラ速乾印刷で実現する印刷会社のダイバーシティ

2017年7月25日

佐川印刷・佐川正純社長 × アグフア・岡本勝弘マーケティング本部長

 佐川印刷(株)(愛媛県松山市、佐川正純社長)は2017年3月に名誉ある経済産業省「新・ダイバーシティ経営企業100選」および中小企業庁の「はばたく中小企業・小規模事業者300社」を受賞した。今回のダブル受賞を受けて、佐川社長と日本アグフア・ゲバルト(株)(東京都品川区、松石浩行社長)の執行役員である岡本勝弘マーケティング本部長に、今回の受賞の背景と佐川印刷のダイバーシティに関する取り組みについて語り合ってもらった。

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印刷産業習慣病にIT技術で

岡本 この度は名誉ある賞の受賞、誠におめでとうございます。印刷業界では非常に数少ない受賞社であり、佐川印刷様の取り組みが認められたのは業界では大きなニュースだと思います。ダイバーシティは社会的にも話題になっており、現在では、どの企業もダイバーシティに取り組む必要性が出てきたと感じています。ダイバーシティ2.0という言葉も出てきており、社員個々の能力を最大限に引き出し、付加価値の創出を目指す取り組みも目立ってきました。印刷業界も例外ではなく、働き方の多様性を求められていると思います。

佐川 そうですね。我々は愛媛県に本社を構え、地域に密着した印刷物作りを続けていました。「印刷を通して地域に貢献する」をモットーにしております。しかし、インターネットの出現により環境は大きく変化し、社会における印刷の役割も変わっていきました。印刷業だけでなく、Web関連業など、マルチサービスの提供に転換し、社会の潮流を捉えた事業を行っておりました。
 そんな中、少子高齢化問題がますます深刻になってきています。これまでお客様目線で事業転換を行ってきましたが、今度は「社員の働き方」を考えることが必要になったのだと感じるようになりました。とくに我々は地方企業ですので、人材確保は大きな課題でした。社員全員が働きやすく、活躍できる職場を作ることは必須だったため、ダイバーシティに関する取り組みは、比較的早くから行ってきたと自負しております。

岡本 印刷業界は他の産業と比較して男性中心であり、「働き方改革」の難しい産業のひとつであると思いますが、近年では組合でもダイバーシティに関するセミナーなど様々な取り組みが行われています。
 そんな中で、今回の佐川印刷様の「新・ダイバーシティ経営企業100選」(経済産業省)、「はばたく中小企業・小規模事業者300社」(中小企業庁)のダブル受賞は業界に大きな影響を与えると思います。とくに「新・ダイバーシティ経営企業100選」に関しては印刷業では今回唯一の受賞社となっております。受賞の経緯を教えていただけますでしょうか。

佐川 これまで当社では当たり前として取り組んできたことが評価され、この度、賞を頂いたことは大変うれしく思います。やはり地方の過疎化や少子高齢化は当社にとって大きな問題でした。そのため、女性の登用や定年退職した社員の雇用も積極的に行っていました。もちろんそれは簡単なことではありませんでしたが社員全員が一丸となって、試行錯誤し、社内の改革を実現し、いまに至っていると思います。
 私は、人間に生活習慣病があるように、印刷会社にも印刷産業習慣病があると思います。印刷産業習慣病とは、これまでの作業を従来のやり方で行うことで積み重なる非効率的な悪習慣のことです。この悪習慣を正すためにIT技術を利用した作業効率改善と働く現場環境の改善に力を入れました。そして、多様な人材が働きやすいよう、多様な働き方を提案できるようにしました。
 作業効率の改善に関しては受注から配送までの各工程の徹底的な自動化に力を入れ、働き方改革に取り組みました。当社は以前よりMISを中心とした当社独自のJDFワークフローを構築しておりますが、集めたビックデータをいかに分析し、働き方改革に結びつけるかが重要だということに気がつきました。印刷会社のあらゆる工程を数値に表し、受注・生産業務を見える化することで、各工程の非効率な作業を発見することができ、改善を行うことができます。この見える化により、営業部門、製造部門によるジョブの適切な取捨選択が可能になり、作業と時間のムダを省くことができるようになりました。
 その一方で、社員同士のコミュニケーションを活性化させ、改善・改革に取り組み、付加価値の高い仕事へと社員がシフトするようにしました。人間は人間にしかできないことをやり、それ以外の作業はコンピューターや機械が行う。たとえば、断裁機は最新の機械を導入して、可能な限りオートメーション化しました。その一方で、機械のメンテナンスや修理は正社員が行うようにしたのです。
 働く現場環境の改善に関しては、安全第一で誰もが働きやすく、安心して活躍できる職場環境を整えることに力を入れました。当社では現場環境の改善活動として早くから現像レスプレートを採用しました。製版工程の現像プロセスは強アルカリを使用し、現場環境が良いとはとても言えません。印刷業界が男性中心の社会と言われるのは、このような強い薬品を使っているからかもしれません。ダイバーシティ対応、とくに女性登用という観点ではこのような強い薬品はなるべく使用したくないものです。当初採用した現像レスプレートは、製版の現像プロセスの改善はできたものの、私の考える印刷現場の改善まではできず課題を残しました。そこで出会ったのがアグフアの現像レスプレート「アズーラ」です。アズーラは印刷現場の課題を解決し、今回の受賞に大きく貢献してくれました。

速乾とパウダーレス化は「印刷維新」

岡本 当社の現像レスCTPプレート「アズーラ」が今回のダイバーシティ実現や働き方の改革に貢献したというのは大変ありがたいことです。佐川印刷様は業界に先駆けて現像レスプレートを採用しておられましたが、当初使用されていた現像レスプレートで解決できなかった課題をアズーラではどのように解決し、今回の受賞を実現できたのか教えていただけますでしょうか。

佐川 当初使用していた現像レスプレートで「強アルカリ現像をなくす」という製版プロセスの改善はできたものの、印刷環境の改善まではできませんでした。当時の印刷環境は多くの水を使い、インキの乾燥性も高くなく、使用するパウダー量も非常に多かったです。ここが私の解決したい課題でした。アズーラは強アルカリ現像がいらないだけでなく、その特殊な砂目構造で実現できる速乾印刷が非常に魅力的でした。ここが採用の一番のポイントです。
 アズーラでの速乾印刷によるパウダーレス印刷を実現したことは城で言う「土台の石垣」の部分だと思っております。JDFワークフローでいかに受注・生産管理を実現し、最新の断裁機を導入しても肝心の印刷物が乾いていなければ、後工程に影響し、生産効率の向上は期待できません。アズーラによる速乾印刷が実現できているからこそ、JDF運用を最大限に活用することができたと思っています。アズーラを使い、速乾印刷に取り組むことは、現像液の管理、CMS、乾燥不良というあらゆる問題から解放されることになり、しかも印刷の原理原則を見直し、社内の働き方改革を実現するきっかけのひとつになりました。

岡本 アズーラはその特殊な砂目構造から水を絞って印刷できます。結果的に乾燥性が高くなり、印刷後のプロセスの効率化にもつながるということですね。アズーラは水を絞れる反面、ときに汚れやすいというお言葉をいただくこともあります。しかし、佐川印刷様ではそのようなお言葉はなく、難なく速乾印刷を実現されていらっしゃいます。アズーラの性能を最大限に引き出す佐川印刷様の印刷技術も非常にすばらしいと感じます。

佐川 アズーラは一般的なプレートと比べて水幅が狭いのは事実です。ですので、一般的なプレートに慣れてしまった人には初めは刷りにくいプレートかもしれません。しかし、高い印刷技術を持つオペレーターから見れば、アズーラは水を極限まで絞った究極の速乾印刷を実現することができるプレートだと思います。当社の目指す通常のオフセット印刷における速乾とパウダーレス化は印刷の古い常識を覆す「印刷維新」だと考えます。当社は「印刷維新」を実現するために印刷設備の定期的なメンテナンスはもちろんのこと、様々な社内の改善活動で印刷の原理原則に立ち戻った技術向上を図っています。そのことをアズーラは気づかせてくれました。

ダイバーシティには「風土の醸成」

岡本 アズーラの性能を最大限に引き出すには、今までの印刷機のオペレーションに関する考え方を変える必要があると思っております。今まで長年行ってきた印刷手法、環境を変えることを嫌がられる印刷会社は多くありますが、アズーラに適した印刷手法、環境の構築は速乾印刷実現ばかりでなく、まさにそのままで理想的なオフセット印刷を実現することになります。御社は印刷技術を貪欲に追求され、アズーラの性能を最大限に引き出すことで速乾印刷を実現されていらっしゃると思います。
 ところで、御社は女性社員も積極的に登用されています。印刷・断裁現場では男性が担当されているイメージがありましたが、実際に断裁作業も女性社員の方が担当されているのには驚きました。

佐川 当社では断裁作業を含む後加工を女性のパート社員が行っています。これはこれまでの印刷会社の常識を打ち壊したと言われています。これまでの後加工現場は印刷工程でパウダーを降ってしまうと加工機械はもちろん、床や制服はパウダーまみれになってしまい、清掃に時間がたくさん取られていました。それがアズーラでパウダーレス印刷を実現したことによって、このような汚れがなくなり、無駄な清掃時間がなくなったため綺麗なところをさらに磨く状態になりました。事実、当社の後加工現場の床は輝いています。また、印刷後の印刷物もスケジュール通り乾燥してくるので、スケジュール通り後加工をすることが可能です。家庭で家事を担っている人が多い女性パート社員の方にも無理なく働くことができるようになりました。乾燥時間という管理が難しい無駄な待ち時間がなくなったと言うことです。アズーラ速乾印刷は現場の働く環境を改善し、女性登用に大きく貢献しました。

岡本 まさに多様な人材がそれぞれにあった働き方ができる職場づくりが実現しているわけですね。アズーラ速乾印刷が印刷会社のダイバーシティ対応に貢献するという理由がよく理解できました。
 今後、ダイバーシティ実現を目指す印刷会社は多いかと思いますが、なかなか古い慣習が抜けず、実現できないという声も聞くことがあります。実現に向けて何か大事にされていることはありますか?

佐川 まず何より「風土の醸成」が大切だと思います。どの企業でもダイバーシティの実現で立ちはだかる問題というのは女性がライフステージの変化によってキャリアを失ってしまうこと。また、制度を導入してもなかなか浸透していかないということだと思います。当社がこのように働き方の改革が進み、ダイバーシティが浸透しているのも「ヒューマンステージ」という社員同士の共通認識があったからだと思います。
 「ヒューマンステージ」は当社の経営理念のひとつとして謳われているもので、社員同士の関わりの基礎を築くものです。この「ヒューマンステージ」をベースとして我々はどうすれば実現可能か維持できるかなどについて、両立支援を必要とする社員だけでなく経営者や現場の関係者など様々な視点で考え抜き、互いを大切にしていく風土を醸成してきました。
 そして、ベースとなるヒューマンステージの上で多種多様な人材が活躍できる環境整備を印刷会社としてどのように実現していくかが重要だと思います。環境整備にあたりシステム構築やアズーラなどの資材の選定は非常に重要な要素だと考えます。

岡本 当事者だけでなく、会社全体で解決策を考えて、取り組むことが大事ということですね。佐川社長の取り組まれているIT技術による各工程の見える化は、風土の醸成にあたっての大きなポイントとなりますね。
 アズーラによる印刷現場環境でのダイバーシティの実現は我々も今回非常に勉強になりました。アズーラの高い印刷性能をうまく経営に反映した素晴らしい事例だと思います。

佐川 現在、当社ではそれぞれの部署が自部門の取り組みをプレゼンテーションができるように指導しています。例えば工場では「工場の誇りを佐川の誇りに」をスローガンに「パウダーまみれだった工場がアズーラ速乾印刷に取り組み、パウダーレスを実現できたことが工場のプライドを育んできた。それを佐川全体の誇りにつなげて欲しい」。こういった部署の取り組みを自分で紹介すること、他部署の取り組み、課題や努力を知ることで、一体感が生まれますし、新しい目線で物事を考える力もつきます。社員全員が「いつもの事をいつも通りきちんとやる」、それだけで満足せずにさらなる高みを目指すことが大事だと考えています。
 我々は富士山ではなくエベレストを目指す。ただその足取りは1歩1歩ですが、そこにまた学びがあります。

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