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藤原製本、製本技術で文化・芸術活動支援

SDGsに取り組み「人に優しい工場」へ

 藤原製本(株)(本社/京都市西京区牛ヶ瀬新田泓町6-1、藤原智之社長)は、商業印刷・出版印刷の製本・後加工に対応する企業として、技術向上と体制強化に努める一方、製本技術を若手デザイナーやアーティストの活躍のために提供する活動を展開している。今後は他社とのパートナーシップも構築し、ワンストップサービスの提供でエンドユーザーからの受注拡大に努めるとともに、循環型社会に貢献する企業として、SDGsへの取り組みを開始。「人に優しい工場」を目指していく。

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1万5,000回転/時の高速生産を実現する全国有数の折機を設備

 同社は1949年に創業。商業印刷・出版印刷の製本・後加工のパートナーとして、長年にわたり技術向上に努めてきた。2006年にはPUR製本対応の無線綴じラインを導入。糸かがりよりも安価で、無線綴じよりも強度のあるPUR製本は多くの出版社から好評を得ているようで、藤原社長は「出版社によってはすべてPUR製本というところもある」と話す。

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藤原 社長

​ 今ではPUR製本を得意とする製本会社としての知名度も向上しており、首都圏・近畿地方だけでなく、愛知県など東海地方からの引き合いも増えているという。藤原社長は「当社では製本作業だけでなく、セッティング作業など、それに付随する業務も一手に引き受ける体制を整えている」と話しており、これも取引先から選ばれている要因の1つと言えそうだ。

 一方、商業印刷の後加工企業としては昨今、折り機の設備を増強している。2017年には、1万5,000回転/時の高速生産が可能な海外メーカー製の折り機を導入。藤原社長は「国内でも有数の折り機。オフセット印刷のスピードに対応する折り機として、大量生産に威力を発揮している」と話す。また、今年の春には、高速生産とともに短時間でのジョブチェンジが可能な折り機を増設した。

 藤原社長は「折り加工の会社が減少する中、当社では逆に折り機の設備を増強し、競争力を高めている。このたび、折り部門については朝8時〜夜中の12時までの2交代制にした」。今後、中綴じと無線綴じ部門についても、2交代制にしていく計画だ。

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PUR製本対応の無線綴じライン。他地域から引き合いが増えている


デザイナー、アーティストの活動を支援

 文化庁の京都移転に伴い、京都においてアート活動など文化的な活動が増えているという。このような中、同社の藤原社長は、京都府内の様々な異業種の経営者とともに、アート活動を支援する「一般社団法人 京都芸術文化リサーチ&コンサルティング(KARC)」を立ち上げ、主に若手デザイナーやアーティストを支援する活動を展開している。

 「京都府内の文化施設などで珈琲チェーン店を展開するオーナーの方に声を掛けていただき、その考え方に賛同した。伝統工芸、建築、パッケージなど、様々な業種の若手経営者8名で運営しており、それぞれの強みを生かして若手デザイナーやアーティストを盛り上げるための活動を展開している」(藤原社長)

 そして、この考え方をもとに、2018年に東京都内に独自に開設したのが「カーク・イースト事業部」(東京都千代田区)だ。従来の出版製本などの仕事に加えて、ノベルティグッズや垂れ幕、ポスターなど、若手デザイナーの作品の制作をはじめ、現代アート作家の個展の商材などの制作を行い、その活動を支援している。

 同社は、京都本社にカラーオンデマンド印刷機を設備しており、これによりカーク・イースト事業部からの受注をはじめ、京都本社で受注した御朱印帳や各種ノベルティグッズの名入れなどを行っている。藤原社長は「エンドユーザーからの生の声が聞けるところが直受注の良いところ。今後は他社ともパートナーシップを構築しながら、自社でも大判インクジェットプリンターや撮影機具など前工程の設備を導入し、ワンストップサービスに対応することで、エンドユーザーの受注を拡大していきたい」と話す。エンドユーザーからの生の声を自社の『改善』に反映し、取引先から信頼されるパートナーとしての競争力を強化していく考えだ。

循環型社会に貢献できる企業に

 藤原社長は、京都府製本工業組合の副理事長であると同時に、京都府印刷工業組合でも組織委員会に属しており、「組合員の皆様に、組合に入って良かったなと思ってもらえるような活動を行っている」(藤原社長)と話す。そのような中、感じていることは昔と比べて、取引先である印刷会社から「下請け」ではなく「パートナー」として認めてもらえるようになったことだ。

 「お客様である印刷会社から『どうすれば良いものができるか?』と相談されることが多くなってきた。これからも、製本会社だからこそできる後加工の提案をしていきたい」(藤原社長)

 同社が現在、目指しているのは「人に優しい工場」。循環型社会に貢献する企業として、5年前からゴミの分別回収に取り組んできたが、「今後はゴミの分別回収だけでなく、ゴミを出さないための取り組みも行っていきたい。また、今後も積極的な設備投資で人の負担を減らし、『人に優しい工場』を実現していきたい」(藤原社長)。

 循環型社会に貢献する取り組みを加速させるため、今年からはSDGsへの取り組みも開始するという。同社は、全方位的に先進的な取り組みを進める製本会社といえそうである。

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