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躍進企業REPORT

大阪印刷:swissQprint UV IJプリンタ「Oryx4」「Impala4」導入

印刷ジャーナル 2023年12月15日
Impala4(手前)とOryx4の2台を活用
「Impala4」の前で緒方氏
出力サンプルを手に門野氏(左)と生越氏
2023年10月に移転した大阪市西淀川区の新社屋

アクリル出力を「Impala4」に集約〜複数台分を1台で処理


 同人誌印刷やアクリル商品で急成長する大阪印刷(株)(大阪市西淀川区御幣島5-5-23、根田貴裕社長)。コロナ禍の2021年売上は5億2,000万円ほどであったが、2023年は18億円になる見通しだ。同社は今後のさらなる受注増に対応する在庫スペースを確保するため、今年10月に旧社屋の3倍の延床面積のある現在地に移転した。共同経営者で製造部門を統括する緒方人志氏は「人手が足りず、現在も受注をストップしている状況」。そんな同社は2022年5月にswissQprintのフラットベッドUVインクジェットプリンタ「Oryx4」を導入。2023年3月には2台目となる「Impala4」を導入し、アクリル商品の出力専用機として活用している。


 同社は2012年、同人誌専門の「マンガ喫茶」というユニークな事業形態で創業。2014年には、そこに派生する同人誌印刷ビジネスに参入し、印刷業へと一気に業態変革を図った。当初は店舗型のサービスであったが、2017年に印刷通販サイト「OTACLUB」(https://otaclub.jp)を立ち上げ、ネット受注型のビジネスモデルへと経営の舵を切ることで大きく売上を伸ばした。

 創業から10年弱、大阪市浪速区日本橋の地で事業を展開していたが、コロナ禍で周りは40%〜60%も売上が落ちている中、同社は15%程度の落ち込みであった。緒方氏は「アフターコロナを見据えたとき、売上は倍増するかもしれないと考え此花区に社屋を移転したが、そこも在庫のスペースが少なくなり、商品を欠品しやすくなったことからわずか2年で現在地に移転した」と経緯について説明する。同社の従業員は8割が女性で、此花区では商品を高い棚に積み上げることで在庫スペースを辛うじて確保していたが、今回の移転を契機に女性でも脚立などを使わずとも手が届くように背の低いラックに取り替えた。このため、新社屋は従来の3倍となる1,200坪の延床面積があるものの、すでに面積の8〜9割は埋まっているようだ。緒方氏は「すでにフル稼働の図面は見えている。おそらく10年もこの場所にはいられないのではないか」とさらなる業務拡張を予測している。

 通販市場は大きな可能性を秘めているが、そのすべてが成功するという訳ではない。そのような中、同社が急成長を続けている理由として緒方氏は、「複合的な要因があると思うが、担当の社員が仕入れ先と交渉し、原材料費をできる限り落とせるように努力している。これにより、競合サイトと比較して低価格で商品を提供できていることが要因の1つとなっている。また、当社では2台のswissQprint製品のほか、デジタル印刷機『Indigo7000シリーズ』を6台、オンデマンド印刷機が8台、その他、レーザー加工機ほか多様な後加工機を保有しているため、多品種小ロットのニーズに柔軟に対応できていることが差別化になっていると考えている」と分析する。


他社メーカーを凌ぐ生産性と画質を評価。インクコストは5分の2に


 同社では、2022年5月に「Oryx4」を導入するまで、国産メーカーのUVインクジェットプリンタを十数台保有し、キーホルダーなどのアクリル商品の出力に活用していた。ただ、同一メーカーの製品を複数台保有することは、リスクヘッジにはなるが、保守代が高くつくことが気になっていたという。緒方氏は「例えば1台の保守代が年間30万円としても、十数台だと保守代だけで年間300万円〜600万円もかかることになる。ある時、これはもったいないなと思いswissQprintに話を聞くと、ヘッド代は実費がかかるものの、保守代は200万円程度とのことだった。それなら1台に集約するのも方法の1つではないかと検討を始めた」と振り返る。

 そして、swissQprintのUVインクジェットプリンタを検証する中、緒方氏が確信したことは「画質がずば抜けてきれい」であるということだ。「それまで使用してきた国産メーカーのプリンタと比較しても、圧倒的な差があった。これを導入することにより、品質でさらなる差別化が図れると考えた」(緒方氏)。そこで同社は幅2.5m×奥行2mという省スペースを実現しながらも、品質と生産性を両立した「Oryx4」を選択。それまでアクリル商品を出力していた国産メーカーのプリンタを減らし、「Oryx4」での出力を開始。その生産性について緒方氏は「実感でいうと、従来機の12台分の速度はある」。

 そして、緒方氏が導入してから気づいたメリットとして評価していることは、インクコストが従来の5分の2に削減できたということだ。緒方氏は「無駄なクリーニングがないので、その差が出ているのではないかという印象である。これまで1ヵ月に50万円から100万円かかっていたインクコストが30万円〜50万円以内に収まっている」と説明する。

 プリンタの価格は従来機とは比較にならないが、これらを総合して判断しても「コスト的にはトントンというイメージ」(緒方氏)。さらに十数台を保有していた従来は3人のオペレーターが必要であったが、「Oryx4は1人のオペレーターで対応できるため、人件費としても効果を発揮している」(緒方氏)。


急増するアクリル商品の受注に「Impala4」で対応


 同社は「Oryx4」を導入後、半年後に同サイズながらも2倍の生産能力を有する「Impala4」の導入を決定した。2023年3月から稼働を開始し、急増するキーホルダーなどのアクリル商品の専用機として活用している。「Oryx4」は現在、A3よりもワイドフォーマットのパネルなどの出力に活用しているとのことだ。

 「Oryx4」「Impala4」を操作するオペレーターの生越氏は、swissQprintUVインクジェットプリンタの魅力について、「従来使用していたプリンタは、1枚1枚のセットに時間がかかり、セットした後も、埃や静電気が発生するためそれを除去し、高さを合わせてから、ようやくデータを飛ばして出力を始めるという流れであったので、すごく手間がかかっていた。これに対してswissQprintは一気に複数のデータを送ることができ、また、空気を噴射して埃を払う設備も付いていてすごく便利」と、実際の印刷速度が圧倒的に早いだけでなく、印刷に入るまでの手間や時間が少なくなったことを高く評価している。

 また、もう一人のオペレーターである門野氏は、画像の綺麗さを特に評価している。「印刷もブレが少なく、色の振り幅が少ないので、常に良好な品質の印刷を実現できている。粒子感もないため、近くで見ても滑らかな印刷であることを確認できる。様々なメディアにダイレクト出力できることもメリット。また、受注した商品を少しでも短納期で高品質に仕上げてお客様のお手元に届けるという現場の立場からすれば、印刷速度が早いということは高く評価できる」と話している。また、アクリル素材は静電気を帯びやすく、反り返ることもあるため、特許取得済の「ワンタッチバキュームシステム」の便利さも評価していた。


「ユーザーのことを考えてくれる」。日本法人の頑張りを評価


 インクジェットヘッドには寿命があるため、少しずつ劣化し、それにともない画質も落ちてくるのが通常である。ただswissQprintの場合、少々事情が違うようだ。緒方氏は「パスの回数を増やすことにより、元々の100点の画質に戻せる能力がある。なので、スジが出て終わりというのではなく、劣化してきたら現場である程度判断し、最後まで使い切ることができる」と説明しており、「寿命がきたので交換しましょうというのではなく、消耗品について、ユーザーの費用面のことまで考えてくれていることが感じられる」(緒方氏)と、企業としての姿勢を評価している。

 さらに緒方氏は、swissQprintの日本法人である「swissQprint Japan」の頑張りを高く評価しているという。「日本法人は十数人の規模で経営されていると思うが、ユーザーのために、できる限りのことはやっていこうという姿勢を感じることができる」(緒方氏)。

 同社は加工機なども含め、国内外の多くのメーカーと取引があるが、その中でもサービス面では上位ランクの評価ができるということだ。


上流の自動化はすでに実現。今後の課題は「下流の自動化」


 今後の課題として緒方氏は「売上に対して人手が足りない。これをいかにして回復していくかが重要」としており、そのためには「自動化」の推進が不可欠であることを強調する。

 同社では毎月、「OTACLUB」を通じて毎月約2万件の受注件数があるが、そのデータ処理は8人のスタッフで対応しており、上流の自動化はすでに実現できているようだ。緒方氏は「下流の自動化を進めることが人手不足の課題を解決するためのポイント」であると話す。そこを実現できれば、やむなく「受注をストップ」ということもなくなり、その勢いはさらに加速していくことは間違いない。今後の展開が注目される。