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躍進企業REPORT

NISSHA:エコリカ高演色LEDランプ683本を亀岡工場に設置

印刷ジャーナル 2023年1月25日
特注の超大型インクジェットプリンターの前で戸田氏
高演色LEDランプの設置で工場全体が明るくなった
検品室にも高演色LEDランプを採用

プリンティングディレクター4名が比較・採点〜「総合力」でエコリカを採用


 NISSHAグループの日本写真印刷コミュニケーションズ(株)(本社/京都市中京区、髙瀨昌治代表取締役)は、2021年8月にエコリカの高演色LEDランプ440本を亀岡工場(京都府亀岡市)に設置。その後も定期的に追加注文を続け、現在683本を同工場に設置している。「クライアントに校正でお見せしたものと寸分違わぬ印刷物をお届けするのが我々の使命。そのためには、適切な光源が欠かせない」と、同社生産管理部 製品設計グループマネージャーの戸田茂生氏。メーカー選定にあたっては、戸田氏を含めた4名のプリンティングディレクターが評価・採点し、最終的に「総合力」でエコリカの高演色モデルに軍配が上がった。「もはや高演色LEDランプはこのモデルしか考えていない」と戸田氏。「色のプロ集団」を納得させた高演色LEDランプとは----。


高精細な入力・出力技術でニッチ市場、コアな部分で勝負へ


 NISSHA(株)(本社/京都市中京区、鈴木順也社長)は、創業93年の老舗企業。連結子会社を含めると全世界で5,800名の社員を有し、今や日本人の社員の方が少ないというグローバル企業だ。日本写真印刷コミュニケーションズはNISSHAグループの中で情報コミュニケーション事業を担当する創業事業として、展覧会図録や写真集など美術系の印刷物や美術品の復刻・複製、美術館や博物館の収蔵品のデジタルアーカイブなどを手掛け、長年蓄積した強みである高い品質が求められる分野を中心に事業を展開している。

 戸田氏は「クライアントからは『品質にこだわるならNISSHA』との評価をいただいている」と自信を示す。そして、それを実現するものとして「高精細な入力技術」と「高精細な出力技術」を挙げる。戸田氏は「高精細な入力は複製に重要なもの。また、高精細な出力としては、オフセット印刷だけでなく、特注のインクジェット印刷機や独自のデジタル印刷技術『NDP(Nissha Digital Printing)』により、デジタル印刷ならではの広色域な領域に挑戦している」と話す。

 そして、これらの出力技術により、見開きB全サイズの「ビッグブック」、屏風の複製、ファブリック系の印刷についても高度なCMS(カラーマネジメントシステム)により、高精細な印刷を実現している。戸田氏は「デジタル印刷はオフセット印刷と比較して独自性を出すのが難しいが、同じデジタル印刷機を導入しても、簡単には他社はできない技術であると自負している」(戸田氏)。設備さえ導入すれば、どこでもできることをやっていても面白くも何ともないというのが同社の考え方だ。「ニッチな市場、コアな部分で勝負していきたい」(戸田氏)。プリンティングディレクターという「色のプロ」としての、こだわりが感じられる言葉である。


クライアントの校正室リニューアルをコンサル


 「印刷のプロ」として技術力、品質に強いこだわりを持つ同社が、「色の見え方」を大きく左右する「光源」である高演色LEDランプに興味を持たない筈はない。高演色の蛍光灯が間もなく生産中止になることから、同社でも2016年頃から高演色LEDランプの採用は検討していた。しかし様々な事情から、切り替えるタイミングが難しかったようだ。

 「千葉県の八千代工場と京都市中京区の本社工場を統合し、2019年1月に亀岡工場に移転するというとき、具体的な話が持ち上がったのだが、工期と費用面で結局、見送りになった」(戸田氏)

 そんな中、2019年2月頃、クライアントから校正室をリニューアルするため、コンサルとして入って欲しいとの依頼があったという。クライアントからの依頼のため、もちろん断ることはできない。しかし、このときの調査が、後に自社で高演色LEDランプを導入する際の知識として役立つことになった。

 「当時市場に流通していた高演色の蛍光灯やLEDランプについて調査し、その中にはエコリカも入っていたが、LEDについてはまだまだ良くなるとの読みがあり、最終的に高演色の蛍光灯を提案し、クライアントも納得して導入した」(戸田氏)

 それから2年後--。

 2021年2月頃、亀岡工場では蛍光灯がポツポツと切れ始めた。同工場の天井は高く、高所作業ができる車でないと交換作業ができない。しかも蛍光灯は注文してもなかなか入ってこなくなった。これを機会に高い品質を維持しつつ、交換回数の少ない高演色LEDランプへの更新を決断をした。


あらゆるメーカーを比較して検証


 「オフセット印刷とデジタル印刷やインクジェットプリンタでは波長が違うと見え方が違ってくるため、それが見え方によるトラブルで一番多い」(戸田氏)

 同社では高演色LEDランプを検討するにあたり、そのようなトラブルが発生しないよう、あらゆるメーカーの高演色LEDランプの演色評価数を慎重に調査。また、設置の簡便さ、価格なども検討材料にした。さらに実際に高演色LEDランプを設置している現場に印刷物を持ち込み、「目視」でも検証した。

 そして、同社の「色のプロ」である4名のプリンティングディレクターが様々な項目を評価・採点して得点化。結果、点数ではエコリカの「超高演色モデル」が第1位となったようだが「当社で納入する本数を考慮すると、予算的にオーバーしていた。最終的に『総合力』でエコリカの高演色モデルを採用することに決めた」(戸田氏)。

 そして、同社は検証開始から半年後の2021年8月、第1弾として440本のエコリカLEDランプを設置。その後も定期的に注文し、2022年12月時点で合計683本を設置した。

 「廊下と刷版室、カレンダーをストックする倉庫を除き、基本的に『色』を見る可能性のある場所はすべてエコリカLEDランプに切り替えた」(戸田氏)。


実績と「改善・進化」する開発姿勢を評価


 高演色蛍光灯からエコリカ高演色LEDランプに切り替えて、現場の反応はどうなのか。戸田氏に聞くと「やはり高演色の蛍光灯は暗かったようで、社員は機械のメンテナンスのときなど、頭にライトを着けて作業を行なっていた。明るさが確保されたことで、そのようなこともなくなり、すごく喜ばれている」とのこと。また、「印刷現場は色だけでなく、ゴミや汚れ、印刷不良も見つけなければならないので、品質保証の上でも適切な光源は欠かすことができない」(戸田氏)と話す。

 亀岡工場のLED化はこれで終了し、次は京都市中京区にある本社の製版現場、そして東京営業所の校正室のLED化を進めるというが、「もはやエコリカ以外は考えていない」(戸田氏)ということだ。
 その理由として、戸田氏はエコリカのメーカーとしての開発姿勢を高く評価し、信頼していることを説明する。

 「実は、クライアントから校正室のコンサルを依頼された際に測ったエコリカの高演色LEDランプの数値が、その後改めて調査したところ数値が改善されていた。メーカーとして改善・進化する努力をしていると分かり、それが信頼につながった」(戸田氏)。

 実績もさることながら、メーカーとしての開発姿勢を高く評価しているようで、取材の最後、戸田氏は「エコリカを採用して本当に良かった」と、しみじみと語っていた。