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躍進企業REPORT

セントラルプロフィックス 千葉第一工場:DAC次世代検査装置「Prenity」導入

印刷ジャーナル 2022年1月1日
Prenityを設置した5色機の前で豊洲工場の佐野副工場長(左)と千葉工場の後藤副工場長
次世代オンライン枚葉検査装置「Prenity」
検査レベルも簡単に設定変更が可能

デュアルマスタで夾雑物過検知の問題解決 - 検査精度と歩留まり向上実現


 総合印刷会社として事業展開する(株)セントラルプロフィックス(本社/東京都中央区、田畠義之社長)は2021年8月、ダックエンジニアリング(株)(以下、DAC)の次世代オンライン枚葉検査装置「Prenity(プレニティ)」を枚葉印刷会社として初めて、千葉第一工場(千葉市緑区)に導入し、強みとする安定した品質管理体制をさらに強化した。2枚のマスタを取り込む新機能の「デュアルマスタ」により、マスタを修正することなく、紙由来の「夾雑物」を印刷不良と判断しない検査の実現を可能にした。同社豊洲工場の佐野正浩副工場長は「夾雑物を気にする必要がなくなり、その分、検査精度を厳しくできるようになった」と検査精度と歩留まり向上につながったことを最大のメリットとしている。


事故多発の「素人集団」からスタート


 同社の始まりは1950年。17名の写真製版業者が集い、技術者集団として設立した。当時の社名は「(株)セントラル・プロセス社」だ。しかしMacintoshなどの台頭によるデジタル化で、製版業だけでは厳しい経営環境になってきた。そこでオフセット印刷機を導入し、2008年頃から印刷業への本格的な業態変革を推進した。しかし、「印刷」のノウハウは皆無であったため、「当時は印刷事故を多発する素人集団であった」と佐野副工場長は振り返る。

 そんな同社も、今では安定した品質管理体制を最大の強みとする総合印刷会社に変貌を果たした。そのきっかけとなったのが、2011年に豊洲工場(東京都江東区)に導入したDACのオンライン枚葉検査装置「Trinity(トリニティ)」である。

 「2011年1月に小森コーポレーションの菊半5色オフセットUV印刷機の導入と同時に、さらなる合理的な検査体制を構築するために導入した。DACの検査装置は文字欠けに強く、検査アルゴリズムも簡単と聞いていたことと、印刷専門商社からの推奨もあったことから、数ある検査装置メーカーからDACの検査装置を選ぶことにした」(佐野副工場長)

 第1号機の検査機を導入した結果、品質管理や作業負荷軽減など様々な効果が実感できたことから、「2011年夏には2台のオフセット印刷機にDAC検査装置を追加で設置した」(佐野副工場長)。現在は4台ある豊洲工場のすべてのオフセット印刷機にDACの検査装置を設置している。同社の印刷オペレーターは、「もう検査装置が設置された印刷機でないとこわくて印刷できない」と話しているようだ。


トラブルシューティングのツールに


 同社が豊洲工場にDAC検査装置を導入して10年。この間に実感した最大のメリットは、印刷不良を「見える化」できるようになったことだ。

 「モニターに時系列で欠陥画像が重なって表示されるのだが、どの位置にどのような欠陥が出ているかが一目瞭然で分かる。これにより欠陥検出はもちろん、場合によっては印刷機の不具合を見つけることもできる」(佐野副工場長)

 また、従来は数百枚毎に1枚の抜き取り検査をしていたが、「その直後の印刷物から不良が発生すれば、そのあと数百枚は不良に気付けないし、また印刷後の全量検査も重要となり、かなりのプレッシャーとなる」(佐野副工場長)。検査装置を設置することで、印刷不良が発生すれば「アラート」ですぐに知らせてくれるため、「他の作業をしていても、すぐに画像をもとにヒットした箇所を確認、ナンバリングと紐付けされている用紙を確認し、印刷を続けるか止めるかの判断もすぐに行える。このため、ヤレ紙も大幅に削減できた」(佐野副工場長)

 さらに、佐野副工場長がDACの検査システムで最大に評価しているのが、欠陥データ管理・閲覧システム「Gallery(ギャラリー)」の存在だ。

 「ネットワークでつながっていれば、どのパソコンからでも後から検査内容を閲覧できるので、印刷中は印刷に集中し、印刷終了後にGalleryで確認してジャッジするようにしている。その他、検査中の様々な設定履歴も記録されるため、より適切な検査への管理・分析にも活用している。当社の千葉第一工場では、他の検査装置メーカーも使用しているが、閲覧ソフトの扱いやすさについてはGalleryが断然に使いやすい。抜け、水はね、油はねなど、欠陥のトラブルシューティングとして活用している」(佐野副工場長)

 また、他メーカーの検査装置と比べて、DACの検査アルゴリズムは非常に理解しやすいことも評価のポイントとなっているようだ。

 「例えば、現状の検査の設定では見逃してしまった印刷の汚れを検出させたいという場合は、RGB濃度差変化と縦横のサイズを調整して検出されるようにする仕組みのため、その設定変更についても明快である。ブラックボックス化しやすいメーカー推奨設定を、自社に合わせてカスタマイズすることも他メーカーのものと比べて容易である」(佐野副工場長)

 もちろん、これはユーザー企業の環境や相性などによって違ってくるものだが、同社にとってDAC検査装置は本当に使いやすいものなのだろう。佐野副工場長のコメントからは、その思いがひしひしと伝わってくる。


「豊洲モデル」を千葉工場に水平展開


 同社では、グループ会社の(株)久栄社で受注した映画のプログラムやポスターの他、化粧品や交通広告など、品質要求度の高い印刷物を生産している。基本的には1万枚以下の小ロットを豊洲工場で、1万枚以上の中大ロットを千葉工場で生産しているという。

 そんな同社は2011年8月、豊洲工場で使用してきたDAC検査装置「Trinity」の次世代モデルとなる「Prenity(プレニティ)」を千葉第一工場に導入した。通常は、どのような設備であっても導入後はある程度の「調整期間」が必要になるが、同社の場合は10年にわたる「豊洲モデル」の運用方法を水平展開しているため、「検査精度は8月の導入当初から安定していた」(佐野副工場長)ようである。

 次世代検査装置「Prenity」を導入した最大のメリットについて、千葉第一工場の後藤和平副工場長は「夾雑物」の問題を解決できたことを挙げている。

 「これまでは夾雑物を印刷不良として認識させないため、マスタの修正処理が必要であった。しかし、Prenityの新機能である『デュアルマスタ』は、2枚のマスタを使用し、その1枚に夾雑物があっても、2枚に共通したものでなければ画像として認識されずにキャンセルされるため、夾雑物を認識しない。このため、マスタの修正の手間と時間を削減することができた」(後藤副工場長)

 さらに、夾雑物を気にせずに検査できることによる相乗効果として、検査精度を従来よりも上げることが可能になったと後藤副工場長は話す。

 「これまでは検査精度を厳しくすると、マスタを修正していても、小さな夾雑物はヒットしてしまうため、検査精度を少し甘くする必要があった。しかし、Prenityのデュアルマスタにより、その必要がなくなった」

 また、従来モデルの「Trinity」では印刷不良の種類を個別に検出できる欠陥回路が4つであったが、「Prenity」では6つに増えていることも大きな特長だ。現在は豊洲工場と同じ4つの欠陥回路しか使用していないようだが、「あとの2つについては今後、DACのアドバイスも得ながら有効に使用していきたい」(佐野副工場長)ということだ。


2工場をネットワークで繋ぎ、リモートデスクトップで閲覧・管理へ


 同社はDAC検査装置のユーザーとして10年の経験を持つ。そんな同社にDACのメーカーとして評価できる点を聞いてみると、第一に真摯に課題解決に向き合う姿勢を挙げている。

 「例えば現在、一緒に取り組んでいることに枚葉紙の『紙の暴れ』についての問題がある。暴れている紙は普通に考えれば検査しようがないのだが、一緒に課題解決に向けて考え、真の『全面検査』に向けて、かなりの線まで進んでいる。まだ途上ではあるが、少しでもそこに近づいていきたい。また、千葉第一工場への"豊洲モデル"の水平展開についても、DACの協力があったからこそ実現できたと言える。ニーズの問題解決に向けての回答が早く、非常に頼りにしているメーカーである」(佐野副工場長)

 同社は2021年7月、オフセット印刷に匹敵する品質ならびにオフセット印刷を凌駕する色域を実現するデジタル印刷機「JetPress750S」を導入した。佐野副工場長は「オフセット印刷という、当社の『1丁目1番地』の分野を大切にしながらも、オフセット印刷工場におけるデジタル印刷機の活用という新たな領域にチャレンジし、厳しい経営環境における活路を見出していきたい」と話す。

 さらに、将来的には豊洲工場と千葉工場の2工場の検査履歴データ(Galleryデータ)をシステムネットワークでつなぎ、大容量ストレージを新設する予定で、これにより総合印刷会社としてさらなる高みを目指していくという。

 同社が製版会社から現在の「安定した品質管理体制」を強みとする総合印刷会社に変貌を遂げた陰には、DACの支えがあったことは間違いない。そして今後も同社の目指す目標の達成にも、DACの検査システムが1つのキーファクターとなっている。同社は今後もDACというメーカーの協力も得ながら目標を達成していく考えだ。今後の動向が注目される。