DAC次世代検査装置「Prenity」導入
デュアルマスタで夾雑物過検知の問題解決 - 検査精度と歩留まり向上実現
「豊洲モデル」を千葉工場に水平展開
同社では、グループ会社の(株)久栄社で受注した映画のプログラムやポスターの他、化粧品や交通広告など、品質要求度の高い印刷物を生産している。基本的には1万枚以下の小ロットを豊洲工場で、1万枚以上の中大ロットを千葉工場で生産しているという。
そんな同社は2011年8月、豊洲工場で使用してきたDAC検査装置「Trinity」の次世代モデルとなる「Prenity(プレニティ)」を千葉第一工場に導入した。通常は、どのような設備であっても導入後はある程度の「調整期間」が必要になるが、同社の場合は10年にわたる「豊洲モデル」の運用方法を水平展開しているため、「検査精度は8月の導入当初から安定していた」(佐野副工場長)ようである。

次世代検査装置「Prenity」を導入した最大のメリットについて、千葉第一工場の後藤和平副工場長は「夾雑物」の問題を解決できたことを挙げている。
「これまでは夾雑物を印刷不良として認識させないため、マスタの修正処理が必要であった。しかし、Prenityの新機能である『デュアルマスタ』は、2枚のマスタを使用し、その1枚に夾雑物があっても、2枚に共通したものでなければ画像として認識されずにキャンセルされるため、夾雑物を認識しない。このため、マスタの修正の手間と時間を削減することができた」(後藤副工場長)
さらに、夾雑物を気にせずに検査できることによる相乗効果として、検査精度を従来よりも上げることが可能になったと後藤副工場長は話す。
「これまでは検査精度を厳しくすると、マスタを修正していても、小さな夾雑物はヒットしてしまうため、検査精度を少し甘くする必要があった。しかし、Prenityのデュアルマスタにより、その必要がなくなった」
また、従来モデルの「Trinity」では印刷不良の種類を個別に検出できる欠陥回路が4つであったが、「Prenity」では6つに増えていることも大きな特長だ。現在は豊洲工場と同じ4つの欠陥回路しか使用していないようだが、「あとの2つについては今後、DACのアドバイスも得ながら有効に使用していきたい」(佐野副工場長)ということだ。
2工場をネットワークで繋ぎ、リモートデスクトップで閲覧・管理へ
同社はDAC検査装置のユーザーとして10年の経験を持つ。そんな同社にDACのメーカーとして評価できる点を聞いてみると、第一に真摯に課題解決に向き合う姿勢を挙げている。
「例えば現在、一緒に取り組んでいることに枚葉紙の『紙の暴れ』についての問題がある。暴れている紙は普通に考えれば検査しようがないのだが、一緒に課題解決に向けて考え、真の『全面検査』に向けて、かなりの線まで進んでいる。まだ途上ではあるが、少しでもそこに近づいていきたい。また、千葉第一工場への"豊洲モデル"の水平展開についても、DACの協力があったからこそ実現できたと言える。ニーズの問題解決に向けての回答が早く、非常に頼りにしているメーカーである」(佐野副工場長)
同社は2021年7月、オフセット印刷に匹敵する品質ならびにオフセット印刷を凌駕する色域を実現するデジタル印刷機「JetPress750S」を導入した。佐野副工場長は「オフセット印刷という、当社の『1丁目1番地』の分野を大切にしながらも、オフセット印刷工場におけるデジタル印刷機の活用という新たな領域にチャレンジし、厳しい経営環境における活路を見出していきたい」と話す。
さらに、将来的には豊洲工場と千葉工場の2工場の検査履歴データ(Galleryデータ)をシステムネットワークでつなぎ、大容量ストレージを新設する予定で、これにより総合印刷会社としてさらなる高みを目指していくという。
同社が製版会社から現在の「安定した品質管理体制」を強みとする総合印刷会社に変貌を遂げた陰には、DACの支えがあったことは間違いない。そして今後も同社の目指す目標の達成にも、DACの検査システムが1つのキーファクターとなっている。同社は今後もDACというメーカーの協力も得ながら目標を達成していく考えだ。今後の動向が注目される。