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躍進企業REPORT

国府印刷社:設立以来、一貫して勝田断裁機を活用 〜「櫛」の堅牢性を評価

印刷ジャーナル 2021年1月25日
勝田断裁機の前で有定社長
20年前に導入した断裁機も「断裁品質には全く問題ない」と鳥居工場長。PODの化粧裁ち専用として活躍する
作業性に配慮した導線を勝田製作所が提案(印刷機→紙揃え機→断裁機)
コロナ禍で開発した企画商品

作業性に配慮した導線などの提案力も

 (株)国府印刷社(本社/福井県越前市、有定耕平社長)は、越前和紙を使用したマスクケースや色こより綴じ、印刷物を動画で再甦するサービスなど、新事業を生み出しながらコロナ禍に挑戦している。そんな同社が昭和56年の設立当初から一貫して使用しているのが勝田製作所の断裁機だ。全5台の断裁機の中には20年前に導入したものもあるが、鳥居寛智工場長は「断裁精度に衰えを感じたことはない」。筐体の頑丈さ、とくに断裁精度の要となる「櫛」の構造と強度を評価している。

企画部「とりい工房」で様々な新規事業を企画

 「2020年はこれまでにない、様々な事業に取り組んだ」。有定社長は昨年についてこのように振り返る。これまでは新たな事業への取り組みに決して積極的とは言えなかったが、コロナ禍により従来の受注が落ち込む中、否が応でも変革する必要性を迫られた訳である。

 そこで同社は2020年、社内に企画部「とりい工房」を設立。鳥居工場長を責任者として、デザインや制作、営業、製造現場の各部門から候補者を選び、主に新規事業について定期的に企画会議を開催している。その中で生まれたのが昨年9月、初めて出展した東京での展示会「プレミアム・インセンティブショー」で注目を集めた、越前和紙を使用した「抗菌マスクケース」と和紙の「色こより綴じ」である。

「東京の顧客から、オリジナルの箔押しをして記念品のマスクケースを作りたいという受注につながった。また、色こより綴じについては、伝統技術により開発された人と環境にやさしい製本が可能になっており、少しずつ受注をいただいている」(有定社長)

出展テーマにも掲げていた「和ごころ」が日本人の心の奥にまで届いたことが感動を呼んだ商品と言えるだろう。

 また、同社はコロナ禍の環境を考慮した企画として、既存のチラシやパンフレットなどの印刷物の内容を動画で再甦(ReBorn)するサービスを開始した。「コロナ禍の現在は、打ち合わせもできないため新しいチラシやパンフレットなどを作成することは難しい。そこで、既存の印刷物をもとに動画で分かりやすく商品をアピールできるサービスを開始した。これにより新たな取引先を拡大し、印刷物の受注にもつなげていきたい」(有定社長)

有定社長の発案「ボルガライスラリー」も好評

 福井県越前市(武生)で生まれたソウルフード「ボルガライス」。オムライスの上にトンカツが乗せてある(店によって味や内容は異なる)ものだが、同社は昨年、飲食店を応援するために何かできないかと思い、有定社長の発案により日本ボルガラー協会と協力して「ボルガライスラリー」のイベントを企画した。

 これには、ボルガライスを提供する武生のレストランや喫茶店など16店舗が参加。ボルガライスを注文すると、その店でしか手に入らない特性の「ボルガカード」を入手することができ、全店舗をコンプリートすると抽選で2名に武生出身の漫画家・池上遼一氏のサイン入り色紙とポスター4枚セットがプレゼントされるというものだ。

 各店舗限定100枚で2020年9月〜2021年2月までの期間で実施の予定であったが、好評につき、ボルガカードが早い段階で、配布終了となる店舗もあり、有定社長は「もう一度、別の形で開催することも検討したい」とのこと。同社ではこの企画により、今まで取引がなかった飲食店との繋がりができたことや、印刷会社がこのような企画を自ら作り出せるという自信に繋がったと振り返っている。さらに、今後も新しい企画にチャレンジしていきたいと考えているようだ。

操作性は「断裁機と一体になる」感覚

 さて、そんな同社が設立当初から活用している勝田断裁機。他メーカーの断裁機も使用した経験もあるという鳥居工場長は、勝田断裁機の特長について「筐体が丈夫」であることを第一に挙げている。

 「とくに紙を背に当てる『櫛』の構造と強度はかなり優れている。私は他社メーカーの断裁機を使用したこともあるが、たいてい10年もせずに精度はくずれてきた。いくらタッチパネルに表示される数値が正しくても、櫛がずれていればタッチパネルの数値と実際の断裁値は違ってくるため命取りとなる。また、押え櫛の補助板を外す作業がワンタッチで行えることも評価できる」(鳥居工場長)

 さらに、勝田断裁機は使用する際の「心地良さ」があるのだという。

 「これはニュアンスの問題なので説明しにくいが、紙を押さえるバーの強さや紙に対してのクランプの当て具合などが肌に合うというか、それが足に伝わるような感じがあり、微調整もしやすい」。いうなれば、断裁機と一体になったような感覚になるのかも知れない。この微妙な操作性の心地よさにより、「位置手順の何秒かの省力化につながっている」と鳥居工場長。この断裁機と一体になる感覚は、勝田断裁機を使用したオペレーターにしか分からないものなのであろう。

20年前の断裁機も断裁精度は「問題なし」

 現在、同社は全5台の勝田断裁機を設置。このうち、一番古い機種は2000年に導入したもの。実に20年以上にわたり使用しているが、これについても「断裁品質などはまったく問題ない」と鳥居工場長。オンデマンド印刷の化粧裁ち専用機として活躍しており、これが堅牢性を評価する所以なのであろう。これまでの20年間でも、「大きな故障は数えるほどしかない」(鳥居工場長)ということだ。

 また、7年前には菊全サイズのUV印刷機を導入。同社はこれに合わせて菊全対応の断裁機を導入したのだが、このときに勝田製作所を再評価することになったエピソードを話してくれた。
「どのようにすれば人を動かすことなく無駄のないレイアウトにできるかを相談したところ親身になって聞いていただき、紆余曲折を経て今のレイアウトが完成した。UV印刷機から紙揃え機、断裁機の導線が無駄のないようになっており、効率的な作業環境を実現することができた」(鳥居工場長)

             ◇                 ◇

 コロナ禍により、世の中で必要とされる印刷物が変化する中、有定社長は「何が世の中に必要なのかを改めて見つめ直し、自社も変革しながら世の中で必要とされるものを見つけ、それを顧客に提案していきたい」としている。全社員一丸となっての企画力に、今後の命運がかかっている。