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躍進企業REPORT

田中紙工:戸田工場7台・本社工場4台 - 全11台の勝田断裁機設備

印刷ジャーナル 2019年11月5日
田中 社長
岡田 取締役
2019年1月に本社工場に導入した勝田断裁機
戸田工場では全7台の勝田断裁機を設備している
戸田工場外観

迅速なサポート体制評価〜台風19号による被害 即日対応で復旧へ

 (株)田中紙工(本社/東京都板橋区、田中眞文社長)は、長年にわたり培われた高精度な裁ちと抜きの技術により、トランプ、カルタ、トレーディングカードなどの加工を得意とする「技と匠の集団」である。そんな同社の裁ちの技術を支えているのが、戸田工場に7台、本社工場に4台を設備する勝田製作所製の断裁機だ。コンマ1mmのズレでクレームにつながるというカード業界の世界で「クランプの圧が全体に均等にかかるため、他メーカーと比べても精度が出やすい」と製造統括役員の岡田忠義取締役。一方で田中社長は迅速なサポート体制を最大限に評価しており、「10月の台風19号の際も、河川の氾濫で戸田工場のすべての断裁機が故障してしまったが、休日であるにもかかわらず迅速な対応により最小限の期間で復旧できた」として、万が一の災害時にも頼れるメーカーとして、今後も勝田製断裁機を使い続けていく考えだ。

 同社の創業は昭和35年。勝田製断裁機の1号機を導入して35〜36年が経つという。田中社長は「先代はドイツ製の断裁機への憧れがあったようでボーレンを使い続けていたが、勝田製作所がスタッカーを開発し、その1号機として初めて勝田製断裁機を導入したところ、予想以上に使いやすいことが分かり、そこから徐々に勝田製断裁機を増やしてきた」とこれまでの経緯について説明する。

 当時、関東圏で勝田製断裁機を導入している製本会社はほとんどなかったが、同社の導入を機に関東圏での導入企業も増えてきたという。田中社長は「数十年前は海外製の断裁機の方が堅牢性に優れていて長持ちしていたが、現在は国産機も同様の寿命になってきている。そのような理由もあり、当社でも順次、断裁機を勝田製に切り替えていった」と話す。そして現在では、埼玉県の戸田工場に7台、本社工場に4台の全11台の勝田製断裁機を設備するヘビーユーザーになり、単純なトランプやトレーディングカードであれば、1日600万枚を抜くことができるという。実際、1ヵ月で1億枚を抜いたこともあるようだ。

 同社製造統括役員の岡田取締役は、「基本的には断裁精度は各メーカーともに大差はない」としながらも、勝田製作所の断裁機について「他のメーカーに比べて、クランプに圧が均等にかかるため精度が出やすい。チラシの断裁などでは、コンマ1ミリ程度のズレは問題ないかも知れないが、当社は高精度な断裁技術が求められるカード関係が主となっているため、当社には勝田製断裁機が向いているのではないだろうか」と話している。

髪の毛を真上から縦に断裁〜カード業界からも絶賛される品質と信頼

 「髪の毛を真上から縦に断裁」。これは、同社の卓越した断裁技術を表現するキャッチフレーズである。もちろん、勝田製断裁機を導入すればどの企業でも可能という訳ではない。長年にわたる経験とノウハウをOJTによりベテランから若手に伝授し続けていくとともに、「慎重、かつ丁寧に仕事を行う」という同社の企業精神から可能になる技術と言えるだろう。

 田中社長は「カードの大裁ちについては、落とす刃の入る位置を一刀一刀確認しながら落とさせている。一刀目と二刀目は非常に重要になる。また、当社では刷り本の不良や印刷のピンホールなども確認し、丁寧に見ながら切るようにしている。印刷不良があれば、結局作り直しになるからである。このため、当社の断裁のスピードは他社より遅いと認識している」とその慎重、かつ丁寧な作業について説明している。また、カードも紙であり伸び縮みするため、入力した寸法で切っているだけだと、コンマ1mmなどはすぐにずれてしまうため、慎重な微調整が必要になるという。

 また、その仕事への丁寧さは「パレット」の似姿にも現れるという。田中社長は「得意先の版元に言わせると、『田中さんから入ってきた仕事は一目瞭然で分かる』と言われる。これは仕事の丁寧さが評価されているものだと自負している」と話している。同社の断裁技術は、断裁機の性能に加えて、その使い手の技術と慎重、かつ丁寧さが合わさっているからこそ、「髪の毛を真上から縦に断裁」という技術を実現していると言えそうだ。

良心的なアフターサービスにより「現場も安心して作業」

 今年10月、各地に甚大な被害をもたらした台風19号。印刷・製本会社でも被害に遭った工場は少なくない。埼玉県戸田市の同社戸田工場においても、河川の氾濫により被害は及んだ。全7台の勝田製断裁機と他社製断裁機のすべてが故障するという被害を受けたが、同社は今回、勝田製作所の迅速なアフターサービスを改めて再確認することになったようだ。

 「10月13日の日曜日の朝、戸田工場に行くとすでに水は引いた後だったが、床上50cmほど水が入っており、すべての断裁機が使いものにならなくなっていた。すぐに大阪の勝田製作所に電話したところ、日曜日であるにもかかわらず、東京の勝田機械販売の社長が来てくれ、それから毎日対応してくれた。月曜日と火曜日で工場内を清掃後は、1日2台のペースで復旧。そのお陰で、戸田工場の製造停止期間は最小限に抑えられたと感謝している」(田中社長)

 断裁機メーカーを選択するポイントとして田中社長は「断裁機の精度はもちろんだが、アフターサービスが良心的であることが大前提だと考えている。そうでなければ現場は安心して作業することができない。その対応に関して、勝田製作所はまったく申し分ない」と迅速なサービスを最大限に評価している。

Web通販サービス「オンデマンドトランプ.com」をリニューアル

 同社は2013年からWebとデジタル印刷を融合させた「オンデマンドトランプ.com」を運営しているが、来年に向けて受注窓口の大幅なリニューアルを進めているという。

 「これまではアップロードに時間がかかったり編集の使い勝手も十分でなかったのか離脱もあったので、感覚的にサクサクできるものにリニューアルする。もちろんスマホでも操作が可能である。ニッチな商材に特化しており、一般企業からの受注を増やすためのフロントとなる窓口であるため、良いものに作り上げていきたい」(田中社長)

 また、田中社長は昨年5月、トランプやカルタなど様々なオリジナル紙製カードを製造する(株)昇文堂(本社/東京都千代田区)を個人M&Aしたが、これによる相乗効果も出てきているようだ。

 「従来、昇文堂では小ロット対応が難しかったが、現在はオンデマンドトランプの部署でオンデマンド印刷することにより、小ロットも受注可能になっている。『カードゲームファクトリー』のブランドを軸に、カードゲーム製作は川上から川下までできるようになり、今後はお客様への販売もサポートする体制を構築していく」(田中社長)

 過去には、1ヵ月に1億5,000万枚のカードを抜いたこともあるという同社。今後もカードを軸に「総合デジタル加工業」として、製本業界の先駆を走り続けていく考えだ。