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[シリーズ]我が社の働き方改革

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京都美術化工、従来の1日作業が2時間に[ブランキング装置「KBD Mussy950」導入]

ステ刃が不要になり、トムソンの回転が向上〜作業負荷軽減と生産性向上に威力

印刷ジャーナル 2021年4月15日号掲載

 トムソン打抜きの後に行う「ムシリ作業(落丁)」。大型の高速トムソン機には、インラインで落丁を行えるブランキング装置が内蔵されているが、多くのトムソン機では、打抜きの後、不要な部分をハンマーで叩いていく落丁作業が必要になる。高級印刷物表面加工の京都美術化工(株)(本社/京都市伏見区、荻原眞人社長)は今年1月、この落丁作業を自動化するブランキング装置「KBD Mussy950」を導入。従来は1人で行うと1日中かかった落丁作業を2時間で行えるようになったほか、ステ刃が不要になったことでトムソンの回転が向上するなど、大幅な作業負荷軽減と生産性向上に威力を発揮している。

従来は丸1日かかった作業も2時間で処理が可能になった

 同社は昭和26年に創業した「特殊加工のコーディネーター」。表面加工から最終の完成品になるまでの一貫生産を強みとしており、印刷物の価値を高めるという使命に徹してきた。その結果、現在は印刷会社から頼られるアドバイザー的な加工企業として信頼を勝ち得ている。また、昨今はアパレルメーカーのグッズ制作や、和紙とPET素材を貼り合わせた自社開発の特殊紙「薄雲紙」によるマスクケースの制作など、新たな事業展開でコロナ禍における厳しい経営環境に挑戦している。

 そして今年1月、同社は落丁の自動化による作業負荷軽減と生産性向上などを目的に、光文堂のブランキング装置「KBD Mussy950」を導入。導入直後からその効果を余すことなく発揮している。

KBD Mussy950の前で荻原社長


一度に100ミリ厚の落丁が可能


 同社は本社工場に4台、吉祥院工場に2台のトムソン機を所有しているが、このうち、本社工場の1台だけがブランキング装置を内蔵したトムソン機で、これまで、その他の5台のトムソン機で抜いた落丁作業はすべてハンマーで叩いていた。

 このため、同社では数年前にもブランキング装置の導入を検討した時期があったようだが、荻原社長は「そのブランキング装置では、落丁する隙間のドブが最低10ミリ必要だった。当社は印刷会社の下請けであり、その中にはドブの調整に対応していない印刷会社もあったため、当時はブランキング装置の導入を見送ることにした」と振り返る。

 しかし昨今は、様々なメーカーからブランキング装置が発売されてきた。さらにこの間、ブランキング装置の技術開発も進み、どこのメーカーのブランキング装置もドブ幅は6ミリに対応するようになっていた。そこで同社は再度、ブランキング装置の導入を検討。そのような中、「KBD Mussy950」を選択するポイントの1つになったのは、一度に落丁できる枚数の多さとコンパクトな筐体サイズであったようだ。

 「スペックを比較したところ、一度に落丁できる紙厚は、他メーカーが60ミリ前後であったのに対し、光文堂のブランキング装置は100ミリまで対応しており、一度に落丁できる枚数がずば抜けて多かった。その一方、筐体サイズは同等の落丁サイズに対応する他のメーカーのブランキング装置よりコンパクトで、設置場所の少ない当社にとってはこれがベストではないかとの結論に達した」(荻原社長)

100mm厚までのブランキングに対応する

 なお、「KBD Mussy950」の筐体サイズは、W3,100×L1,800×H1,950ミリ。落丁サイズは最小30×30〜最大360×360ミリ。紙積み高さは最小40〜最大100ミリとなっている。


タッチパネルで簡単操作。セット替えは30分


 現在、ブランキング装置で落丁しているシートは全体の3割。大型でサイズが対応していないものと、薄紙以外の大半に活用しているという。そして、その中でも荻原社長が「ブランキング装置を導入して良かったと改めて感じる」としているのが、小サイズに多数の丁合いがしてあるシートの落丁だ。

 「定期の受注で14丁のものがあるのだが、これを1人で落丁する場合、これまでは一日中かかっていた。それが今ではわずか2時間で作業を終わることができるようになった」(荻原社長)

 これにより、作業者の多能工が可能になったことから、落丁だけでなく工場全体の生産性向上につながった。さらに落丁は大サイズよりも、むしろ小サイズで丁付けの多いもののほうがストレスを伴うようで、これを自動化できる効果を最大限に評価している。
 
 また、セット替えも非常に楽なようで「タッチパネル入力は1〜2分で完了する。ガイドヘッドが旋回するため入れ子にも対応し、アームにより自動搬出装置も付いている。これらの便利な機能により、セット替えは30分程度で完了する」と荻原社長。多品種・小ロット化が進む昨今の傾向にも、難なく対応できているようだ。
 
 さらに、ブランキング装置の導入により、これまでのようにステ刃を入れる必要がなくなったため、トムソンの回転の向上にもつながった。
 
 「シートにステ刃を入れるとバラツキやすくなるため、トムソンのスピードを上げることができなかった。しかし、ブランキング装置の導入でその心配がなくなったため、トムソンの回転を上げることができるようになった」(荻原社長)
 
 「KBD Mussy950」の導入による落丁の自動化は、同社に大きな「働き方改革」をもたらしている。