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竹田印刷、IPAに2年連続入賞〜印刷を通じて誰もが輝ける社会の創造へ

2023年4月24日

アール・ブリュットとSDGsを融合


 「アール・ブリュット」(障がい者の表現)の活用促進を通じてダイバーシティ&インクルージョン(D&I)の活動を推進する竹田印刷(株)(本社/愛知県名古屋市)は、2022年度の「Innovation Print Awards(以下、IPA)」において、「SDGs貢献製品 デザインを活かして誰もが活躍できる社会を-障がい者アートの活用-」で「ダイレクトメール部門」で第1位を獲得した。障がい者アートと廃棄される素材を原料としたエシカルペーパーを融合した同作品には、「誰もが輝ける社会の創造」と「SDGsへの貢献」への想いが込められている。

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左から飯塚氏、安井氏、坂下氏


3月7日に表彰セレモニーを挙行


 IPAは、富士フイルムビジネスイノベーション(富士フイルムBI)が2008年からアジア・パシフィック地域で毎年開催しているデジタル印刷コンテストプログラムで、富士フイルムBIのプロダクションプリンターまたは富士フイルムの「Jet Pressシリーズ」や「Acuityシリーズ」を使って制作された印刷物が作品として評価される。応募作品は、印刷やグラフィックデザインなど各分野の識者で構成される第三者委員会により評価され、その品質、デジタル印刷技術の活用、革新性、ビジネス有効性、全体的な美しさといった基準に基づいて入賞作品が決定される。

 通算で15回目の開催となる2022年度は、アジア・パシフィックの12の国と地域から193作品の応募があり、その中から47作品が入賞。日本からは8社12作品がエントリーし、その中から竹田印刷を含む2社2作品が入賞を果たした。さらに竹田印刷は、前回の環境部門第1位に続き、2年連続の入賞となる。

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木田執行役員から飯塚氏に記念トロフィーを授与


 3月7日には、竹田印刷において今回の入賞作品制作に携わった印刷製造部兼プリプレス部 部長の飯塚洋史氏、プリプレス部POD課 課長の坂下博章氏、デザイナーの安井和男氏の3氏と富士フイルムBIの木田裕士執行役員ほか担当スタッフらが出席のもと表彰セレモニーが挙行され、記念トロフィーと表彰状が手渡された。


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記念プレートは坂下氏に


 表彰セレモニーの席上、挨拶した木田執行役員は、「個性溢れるアール・ブリュット作品とSDGsを組み合わせることで竹田印刷様が目指す方向性をカタチにした作品と言える。ぜひ、今後も素晴らしい作品を出品してもらいたい」と今回の入賞作品を評価するとともに、今後も優れた作品でのエントリーを呼びかけた。


アール・ブリュットの魅力を広く社会に発信


 今回、デザイナーとして作品制作に参加した安井氏が、本格的にアール・ブリュット作品、つまり障がい者作家のアート作品を手掛けるようになったのは約2年前のこと。ある展示会に出展する企業からの「出展ブースにアール・ブリュットを使った展示をしたい」という依頼がきっかけだったという。

 「アール・ブリュット」とは、「生の芸術」を意味するフランス語で、「正規の美術教育を受けていない人の芸術」など、その解釈は様々だが、日本では「障がい者の表現」として知られている。

 その企業は当初、多くの障がい者作家のアート作品をプロダクト化して提供している団体に依頼をしたが、予算面で折り合いが合わず断念したという。

 学生時代からアール・ブリュットに高い関心を寄せていた安井氏は、「コストを理由に素晴らしいアート作品が、世に出る機会を失っていることが非常に残念」との想いから、自身でアート作品を提供できるルートを開拓しようと活動を開始。そして学生時代の友人から、ある福祉施設を紹介された。以後、安井氏は福祉施設への訪問を重ねると同時に真摯に自身の想いを伝えた結果、アート作品提供の協力を得ることができた。

 安井氏は、そのアート作品を使用したデザインほか、数点の展示ブースデザイン を出展企業に提案し、最終的に採用されたのは障がい者作家のアート作品であった。そして、そのデザインこそが今回のIPA2022において、ダイレクトメール部門第1位の作品に採用されているアール・ブリュット作品だ。

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ダイレクトメール部門第1位作品


 「初めてアール・ブリュットを実際のビジネスに活用するきっかけとなった作品でIPAに入賞できたことは、非常に感慨深い」(安井氏)

 第1位獲得の吉報は、作家とその両親にも伝えられ、喜びと感謝のことばを述べていたという。また、今回は、作家にも同様に表彰状が贈られている。


アート作品を生かす印刷


 今回の入賞作品は、アール・ブリュットの採用のほか、用紙にエシカルペーパーを使用したSDGsに貢献するダイレクトメールとして制作されていることも大きな特徴の1つだ。

 印刷に使用した富士フイルムBIの1パス6色エンジン搭載のプロダクションプリンターは、その優れた用紙対応力をもって、表面に凹凸感のあるエシカルペーパーに対しても問題なく高品質に印刷することができた。

 エシカルペーパーへの対応については、とくに問題視していなかった坂下氏が一番懸念していたのは、「アート作品を生かす印刷」だという。

 「デザインと用紙の色が似ているときなど、ホワイトトナーを下刷りしてCMYKの上刷りし、鮮明な印刷を行っていた。しかし、実際に印刷してみると思っていたイメージと違う。そこでホワイトトナーを使用せず、CMYKだけで印刷をしてみたらデザインと用紙の風合いを活かした印刷ができた。このように試行錯誤を繰り返しながら作業を続けてきた」(坂下氏)

 飯塚氏も「エシカルペーパーなどは、印刷をしてみて初めてそのデザインとマッチングした表現力が確認できる。色紙だからホワイトトナーを下刷りする、といった従来の概念を払拭し、さまざまな表現方法を試していく。その工程がワクワクする」と、様々な視点から印刷表現の可能性を模索することで新たな価値が生まれてくると説明する。


「作家ファースト」への理解が不可欠


 安井氏は、アール・ブリュット作品を採用する際に、クライアントに対し、必ず伝えることがある。それは、「作家ファースト」への理解だ。

 通常の印刷物では、制作段階において「もう少し明るく」や「もっと赤を強調して」など、クライアントからの指示を反映させることが基本となっている。

 しかし、アール・ブリュット作品は、作家の創造性や独創性を表現したものであり、この表現に加工を施してしまうことは、その作品自体を否定することとなる。そのため安井氏は、作家の作品イメージを変えるようなことは、いっさい受け付けないということを事前に説明し、理解を得た上で作業を進めている。

 また、作品を描いてもらう場合でも、作家の創作活動を基本としたスケジュール調整が大前提となる。

 「納期を優先するのではなく、作家のコンディションなどが最優先となる。これに対する理解が得られなければ、アール・ブリュット作品を使うことはできない。つまりクライアントファーストではなく、作家ファーストのスタンスがクライアントや印刷会社に求められる」(安井氏)

 この2年間の活動の中で安井氏は、障がい者の家族や社会福祉施設のスタッフから、アート・ブリュット作品の提供に際し、感じた嫌な思いや感想を真摯に聞くことを実践してきた。その中で著作権譲渡要求や承諾を得ないままでの二次利用など、作家側の意向を一切無視したようなやりとりが横行していることを知る。

 同社では、これらの行為を完全否定するとともに、アート・ブリュット作品を活用するための正規のやり方を実践で社会に示している。当然、その対価を支払っている。

 「この仕組みが社会的に確立することで障がい者の自立支援につながればと考えている」(安井氏)


IPAはグローバル視点での評価を確認できる場


 IPAで2年連続入賞を果たした同社だが、このアワードプログラムに参加した理由について坂下氏は、「これまで行ってきた作品制作は、自分達の中では満点評価で、実際にクライアントからの評価も得ていた。しかし、グローバルな観点からは、どのように評価されるのか、ということに興味を感じた」と説明する。

 また、グローバルな視点で評価を得たことで社内全体のモチベーションアップにつながったという。

 飯塚氏は「前回の入賞を契機に、営業が持ち込んできた案件に対し、さまざまな企画・提案を行えるようになった。入賞後は、当社はもっと良いものを創り出せるという『自信』から『確信』に社内全体の意識が変わった」と、この意識の変化は、受注活動にもつながったと説明する。

 その同社では、2023年度のIPAについてもエントリーを予定している。当然、目指すのは最優秀賞の獲得だ。

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富士フイルムBIのスタッフを交えて表彰セレモニーで記念撮影


2024年に創業100周年


 2024年に創業100周年を迎える同社では、日常の中からSDGsにつながる項目をピックアップして活動を浸透させていく「創業100周年までに取り組む100のSDGs活動」を掲げ、取り組みを開始した。この活動は普段の業務や生活の中で、どんな些細なことであってもSDGsに貢献できることであれば、提案・実践していくというもの。

 「新しいことに挑戦することも大切ですが、これまでの活動を継続していくなかで、新たなことを発見することが重要。100個のSDGsについても、新しい取り組みや、当たり前のように過ごしている日常の中から、各従業員が気づいたことを改善しながら、SDGsにつなげていければと考えている」(飯塚氏)

 これに先立ち同社では、これまで廃棄していたロール紙の紙管やダンボールなどを集め、福祉施設に寄贈する活動を実践している。

 さらに従業員に協力を呼びかけ、自宅などにある各種紙袋を集めて図書館に寄贈する取り組みも行っている。集められた紙袋は、貸出や返却時に利用者が自由に使えるもので、図書館および利用者双方にメリットを提供している。

 そして安井氏は、100周年の節目を記念して、東海地区の100名のアール・ブリュット作家を集めた作品集を制作し、国内だけではなく世界に向けてアール・ブリュットの魅力を発信していく活動の実現を目指しているという。100周年とその先に向けた同社の取り組みに引き続き期待が寄せられる。

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