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創立30周年特別インタビュー|ジーティービー・大西幹雄社長

2021年1月25日

印刷業界とともに30年 - 画像処理技術で技術革新に寄与

 画像処理技術で印刷業界の技術革新に寄与してきた(株)ジーティービー(本社/神戸市中央区)は2020年12月、創立30周年を迎えた。この間、印刷業界はDTPが普及し、CTPが登場。昨今では、ネット入稿が浸透するなど激変を遂げた。また、社会全般の情勢を振り返ると、阪神・淡路大震災やリーマンショック、現在のコロナ禍など幾多の荒波に見舞われながらも印刷業界とともに乗り越えていきたい考えだ。そこで今回、ジーティービーの創業メンバーの1人として、印刷業界の技術革新に寄与する様々なソフト開発に携わってきた大西社長にインタビューし、同社の軌跡を赤裸々に語っていただくとともに、次代に向けた展開などについてお話を伺った。

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北野異人館街の本社屋上にて大西社長


画像切り抜きソフト「シザーハンズ」が数千本を売り上げる大ヒットに

 大西社長がプログラミングの世界に足を踏み入れたのは30数年前。独立系の開発会社に入社して、そこでプログラムのイロハを学んだ。そのときの上司の1人であったのが、ジーティービーの創業者である松木宏会長だ。

 「松木会長ともう1人、ハードウェアの技術者の上司がいたのだが、その開発会社は某メーカーに吸収合併され、その会社を3人とも退職した。その1年後に元上司の2人がジーティービーを立ち上げた。そのタイミングで私も合流して創業メンバーの1人として働くことになった」

 ジーティービーの創業は1990年。社名の由来は「極楽とんぼ」。ふわふわと空中を漂いながら世間を俯瞰し、世の中に必要なものや新しいものを産み出したい思いが込められていたが「対外的な体裁として『Graphic Technology Basis』という2つ名を名付けた。まぁ、当時の英語の名刺には極楽とんぼの文字を入れていたのだが」。

 当時のMacintoshは、ようやくMac2が発売されたかどうかという時代。当初は画像処理とハードウェアの技術を強みに、いわゆる68K Macで演算する画像処理システムを提供していたという。そして1994年3月、以前からのアイデアであったという、印刷製版用画像切り抜きシステム「ScissorsHands(シザーハンズ)」を初の自社開発のソフトとして開発。これを150万円の価格で売り出したところ、数千本を売り上げる大ヒットとなった。

 「当時、印刷会社はMacを買ったものの有効に活用できない『仏壇Mac』と言われた時代で、画像の切り抜きは専用機で切るか、手で切るかで行われていた。そこでMacの標準の機構を使いながらリアルタイムに切ることができるソフトを開発したところ、爆発的な大ヒットとなった」

 そして、翌年の1995年には、1月に阪神・淡路大震災という未曾有の大災害に遭いながらも、5月に海外向けの画像切り抜きシステム「PhotoMask(フォトマスク)」を開発。これらの画像切り抜きシステムには、ラスターデータからパスデータに変換する機能が入っていたが、そのパスデータに変換する技術を使用して、昔の版下やロゴ、書家に書いてもらった商号などをベクトル化できないかという相談があった。そして同年8月には、印刷製版用高速ベクトル化システム「FontCamera(フォントカメラ)」を開発。これは元々あった「シザーハンズ」の機能を応用したものであったため非常に短時間で開発でき、スキャナとセットで販売され、数千本が売れるヒット商品になったという。

CTP時代の到来と合わせ、「1bitTIFFワークフロー」提唱

 転機の1つとなったのは、CTP時代の到来ともいわれた2000年だ。この年に開催されたdrupa2000は「CTP drupa」と称され話題となったが、この2000年に1bitTIFFワークフロー「Bit-Through(ビットスルー)シリーズ」を発売している。

 「CTPが登場したことにより、フィルムがないから刷版が出力されるまでチェックができないという問題が出てきた。そこで、1bitのワークフローで行えば、フィルムと同じ感覚で確認できるということで提唱した。当時は、PDFを印刷製版に関わるデータとして本当に大丈夫なのかと言われていた時代であった。製版処理やRIPの過程でPDFが化けてしまうトラブルが山ほどあったからである。このため、1bitTIFFに関する特集記事をJAGATで組んでもらうなど、啓蒙活動的なことも行っていた」

 「ビットスルーシリーズ」は、殖版やストリップ修正、ドットゲイン処理などを1bitになってからでも行えるワークフロー。同シリーズが生成する2値画像の品質は世界的に評価を受けており、現在もメーカーやバージョンに依存しないフォーマットとして国内外の印刷会社で活用されている。

 そして、これをリリースする中で、今度は1bitのデータと刷版を比較したいという要望が出てきたという。そこで大床製作所(当時)の刷版用スキャナと比較検査するソフトを開発した。

 その一方、グラビア印刷の会社から「クライアントの要望で、刷り出し検査をやる必要が出てきたので、印刷用紙を検査したい」という要望が出てきたという。

 「その印刷は版ズレが大きく、位置はバラバラ、さらに、水を吸うと伸びが出るなど多くの問題があった。そんな中、本当のエラーを見つけたいという要望であった。それにトライして完成したのが、のちの『Hallmarkerシリーズ』などの検査ソフトの原型となるものであった」

 この頃から、今でいうデジアナ(デジタル×アナログ)、アナアナ(アナログ×アナログ)の双方の検査を実現できる検査システムメーカーとしての、ジーティービーの歴史が始まったということができそうだ。

ロングセラーの印刷物検査ソフト「Hallmarkerシリーズ」が登場

 ジーティービーの検査ソフトの代表作といえば、2004年12月に開発されたロングセラーの印刷物検査ソフト「Hallmarker(ホールマーカー)シリーズ」といって間違いないだろう。その名前の由来は、純金であるということの保証の極印を英語で「ホールマーク」ということから来ている。純金を保証するように、印刷品質を保証するという自信の表れであるということができそうだ。

 「最大の特長といえるのは、独自開発の画像検査エンジン『EyeMine(アイマイン)』を搭載していることである。デジアナ検査ができるだけでなく『本当の不良だけが見える検査機』であることが現在も業界シェアNo1のシリーズとして注目を集めている理由だと自負している」

 ただ、ホールマーカーシリーズのような検査ソフトは、あくまでも「ソフトウェア」であるため、DTPの現場では導入が進んでも、先の刷り出し検査のような現場では、入力を含めたシステムとして提案する必要がある。

 「印刷現場で検査ソフトだけが購入されることはまずないと言える。印刷現場で認知されるためには、ハードを含めた設備としての『検査装置』を開発する必要があった」

 そして、このために開発したのが2010年に開発したカメラ入力式検査システム「CorrectEye(コレクトアイ)」である。この検査装置の開発により、ジーティービーは従来のプリプレス工程を中心とした検査ソフトだけではなく、刷り出し検査、抜き取り検査など「印刷現場」に導入される検査装置メーカーとしても認知されていくことになる。

 「この頃はまだ、UV印刷が十分に普及しておらず、インキが乾いていない状態でもすぐに刷り出し検査ができる装置が求められていた。カメラについては、FA機器で要求する精度を求めると大変高価になるため、民生品のカメラを使用して検査をする仕組みを開発することができた。ただ、撮影は一瞬だが、歪の無い画像を生成するのに時間がかかることと、環境光が画質に影響を与えるという課題が残っていた」

 その後、これらの問題を大型CISの採用などで解決したのが、2017年3月に登場した非接触スキャナー入力印刷物検査機「CorrectEye SIS(コレクトアイ シス)」である。

コレクトアイ シスに「マスター画像自動呼び出し機能」を追加

 ここ数年、商印・紙器印刷業界はもちろん、軟包材印刷業界などでも導入が進んでいる「コレクトアイ シス」。1台で複数印刷機の印刷物とRIP後データの比較を可能としており、スキャナーは印刷面に触れないため、乾いていない状態でも検査が可能である。さらに、スキャン開始から検査終了までは約45秒という早さだ。そして現在、ジーティービーではさらに高速化すべく開発を進めているようである。

 「緊急事態宣言で中止になってしまったpage2021で発表する予定であったが、スピードはかなり上がっているので期待していただきたい。また今回、コレクトアイ シスの新機能として『マスター画像自動呼び出し機能』を追加した。これにより、印刷物をスキャンするとそれに似たマスター画像をコレクトアイ シスが自動的に呼び出してくれるため、マスター画像をたくさんのジョブから探してくるような手間がなく、早く簡単になる。似たような画像が複数ある場合、オペレーターは候補から正しいマスターを選択するだけで良いようになっている」

 また、ウイズコロナに対応する検査ソフトとして幅広くアナウンスしているのが、2020年秋に正式リリースした「HallmarkerElements(ホールマーカーエレメンツ)」である。プレリリースしたpage2020では検査機能を最低限にとどめて安価に活用できるシステムとしていたが、その後のコロナ禍により、現在はテレワーク環境下でも利用できる検査ソフトとして広く活用を呼び掛けているようだ。

 「印刷会社だけではなく、印刷を発注するブランドオーナーや一般企業の法務文書の突き合わせなど、検査の必要性は数多くある。ところが昨今のコロナ禍により、テレワークになっている企業が多い。ホールマーカーエレメンツはネットワークアクティベーションで同時起動数を購入するサブスクリプション製品のため、時差ワーク、テレワークに最適なシステムだといえる」

 また、ジーティービーは2016年1月、CTP出力前のプルーフ確認をモニター上で行うため紙出し不要な「Digital Plate Checker(デジタルプレートチェッカー)」を開発しており、これも昨今のコロナ禍によるテレワークに対応するシステムとして今後の普及が期待できそうだ。

 「セキュアなネットワークで職場と接続する環境も急速に整いつつある。ワークフローRIPの操作も環境さえ整備されれば、自宅からでも可能になっている。RIP済み刷版出力用データを自宅からでも見られるようにし、そこに製版指示通りかのチェックリストや手書きの注釈などを入れてエビデンスを残せる。OKであればCTP出力の指示を出すところまで行えば、製版・刷版部門のオペレーターでもリモートワークが可能になる」

失敗を恐れずに、オリジナリティを持たせた企画・製品開発がポリシー

 ジーティービーの製品開発のポリシーは、「オリジナリティを持たせた製品づくり」。システムを開発するための様々なツールが揃っている現在、それらを組み合わせるとある程度のシステムはどこの開発会社でも作れてしまうようだが、「そのような中でも、どこかにオリジナリティを持たせていきたい」。プログラミングのプロとしてのプライドを感じさせる言葉である。これを社内でも周知しているため、ジーティービーの新製品には、必ずどこかに「競合他社にはない新しいもの」が入っているようだ。「それが必ずしも世の中に受け入れられるとは限らないですけどね」。

 そんなジーティービーの積極的な企業姿勢を感じることができる、あまり軌道に乗らなかった事例を紹介する。2007年5月、ジーティービーは、Web工房と呼ぶプロダクトとしてウォルト・ディズニー・ジャパンと協業した「マイ・ディズニー・スタジオ」を開設した。これはユーザーがWEB上でキャラクターを使用して自由にデザインしたオリジナルグッズを発注できるサイト。「初めてのBtoCのビジネスへの挑戦であった。ファンも多かったのだが、時代が早すぎたのか商売としては成り立たず、撤退することになった」。

 しかしながらも「勉強にはなった」と、この失敗を糧にして次の新たな製品開発への資産にしていくと前向きだ。「これまで市場に出ることなくお払い箱になったソフトは山ほどあるが、これらはすべて次の成功への財産である。技術は残っている。無駄ではない。それをベースに今の環境にあった新しいものを作っていくことができると確信している。製品開発とは、製品のことだけではなく、仕組みや市場を含んでいる」

印刷品質の向上と無事故の仕組み、業界の「転換」に役立つ製品を開発

 万国共通である「画像」を通じて30年にわたって印刷業界の技術革新に貢献してきたジーティービー。その中で一貫してあるのは、印刷品質を高めながら、確実で事故が起きない仕組みを提供してきたという想いであるという。

 「ジーティービーとしての事業が軌道に乗り始めた頃に、阪神・淡路大震災が起きた。そのとき、自分たちの仕事の意義は何なのかと真剣に考えさせられた。被災地では水も出ないなどの状況である中、実態のない我々のシステムが本当に社会に貢献できているのか、と。そのとき、某販売店の社長から『オペレーターのレタッチの時間、作業負荷の軽減にどれだけ貢献してきたと思っているんだ、自信を持て』と、厳しくも温かく激励してもらった。これからも印刷業界の何かしらの転換に役立つシステムを開発していきたい」

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