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商印の仕事8割カバー:進化続ける完全無処理版「SONORA」

2018年6月15日

コダック ジャパン 畑信雄上席執行役員に聞く


kodak_hata_2018.jpg コダックジャパン(藤原浩社長)が発売から3年にして2回の性能改良によって市場適性を高めてきた完全無処理サーマルCTPプレート「SONORA」。刷版工程でのメリットに加え、その耐刷性や機上現像の早さ、刷りやすさといった印刷工程でのメリットが幅広い印刷分野で受け入れられ、現在400社で採用されている。そこで今回、プリントシステム営業本部長で上席執行役員の畑信雄氏にインタビューし、「SONORA」の改良の歩みや市場評価について聞いた。


優先開発項目は「視認性」「耐刷性」「耐傷性」


 コダックは、drupa2004で機上現像タイプの「THERMAL DIRECT(サーマルダイレクト)」を発表。翌年、日本市場に投入するも、2015年までに導入した印刷会社は90社程度。一方、海外ではこのTHERMAL DIRECTが抱えていた課題・制約を解決した「SONORA XP」と「SONORA News(新聞印刷用)」がdrupa2012で発表され、2013年に発売。日本でも大きな期待が寄せられたが、当時はLED-UVやH-UVといった省電力UVの機運が高まり出した時期で、UV印刷の耐刷性が不充分だったことから日本市場への投入は見送られた。

 そこで当社では、群馬事業所の研究開発部門で独自開発に着手。3年の月日を費やし、UV印刷・省電力UV印刷適性も持つSONORA XJを完成させ、2015年に販売を開始した。とは言え、当時はまだまだ経験値がなく、ユーザーのニーズも多岐にわたることから、1社1社丁寧に対応することで日々製品に自信を深めていった。

 そして発売から3年で400社に採用いただいた大きな要因として、2016年発売の改良品で実施した「視認性の改善」が挙げられる。「視認性は運用上問題ない」というユーザーも多かったが、使用量の多いユーザーや東京地区の出版系のユーザーの要望に応える形で視認性を従来比1.5倍以上に高めたことで、飛躍的に採用が進んだ。同時に「国産化」もその勢いを後押ししたと言える。SONORAの製造は当初、中国・シャーメン工場で行われていたが、より安定した供給、よりサポートを強化するという観点で、2017年から群馬工場で生産が開始された。

 そして今年2月、2回目の製品改良版として「SONORA CX」を発表した。これは一部のユーザーで課題とされていた耐刷性と耐傷性を大幅に向上させたもの。いずれも開発における最優先項目だった。耐刷性に関しては、従来の1.5〜2倍に向上し、耐傷性も従来の現像有りプレートと同等のレベルに達している。徐々にXJからの移行を進めており、今夏からは全面的に切り替わる予定だ。

 SONORA CXでは、2重の陽極酸化被膜層を採用。1層目は感光層との接着性を向上させて耐刷性を高め、2層目は堅牢性の高い皮膜を生成し、耐傷性を大幅に向上させている。


チラシで50万枚以上の耐刷実績


 SONORA導入による刷版工程でのメリットはいまさら言うまでもないが、ユーザーの導入事例からは、印刷工程におけるメリットも非常に大きいことが分かる。


sonora_merit.jpg
 まず、「刷り出しの早さ」。SONORAは、従来の高感度ネガタイプのCTPプレートに必須であった酸素遮断層を必要としない「Kodak Press Ready Technology」を採用している。

 通常の高感度ネガプレートは、アルミ基板の上に塗布された感光層の上に、この感光層を保護するための酸素遮断層が設けられ、二層構造になっている。そのため、湿し水の浸透性が悪く、機上現像が遅くなる。また、酸素遮断層の成分は水溶性のため、湿し水に溶け込んでしまい、結果、印刷の汚れに。さらに、層がひとつ多いことから解像度の低下を招き、高精細印刷には向かない。

 一方、SONORAはネガタイプ特有の高い硬化性と独自に開発された感光層との組み合わせで、高い耐刷性・耐薬品性を兼ね備えているシンプルな単層構造のため、湿し水の浸透性がよく、かつインキの着肉性も高めたため、インキの剥離性も向上。機上現像性に優れ、現像有りタイプと同等の刷り出しの早さを実現し、1枚目からインキが乗り、10枚目でターゲットの濃度に達する。もちろん高精細印刷にも対応でき、しかも従来通りの印刷機のセッティングのままで使用できる。

 次は「水幅の広さ」。SONORAの感光層はインキの着肉性が極めて高いため最適なインキ量を供給する。結果、最適な水量を保持し、水を絞っても汚れにくい印刷環境を実現。理想的な水/インキバランスによりメリハリのある高品位な印刷が可能となるわけだ。油性の速乾印刷にも適し、「後工程でのトラブルがなくなった」という報告も受けている。

 さらに「耐刷性が高い」という点。チラシ需要が低迷する中、輪転機においてもコスト削減を狙ったSONORAの採用が進んでいる。SONORA CXの耐刷性のスペックは、輪転機30万枚、枚葉機15万枚、省電力UV機5万枚。とくに輪転機との相性が良く、チラシで50万枚以上の実績もある。

 また「UV印刷適性」も大きな特長だ。プラスチックやアルミ蒸着紙などの特殊原反や金・銀・白といった特色インキ、さらに耐刷が落ちるメジュームの入ったインキでもSONORAを使用するユーザーが増えており、省電力UV印刷での実績が増加している。

 最後は「高い再現性」。広い機上現像ラチチュードと硬調な網点再現を可能にする感光層コーティング量の最適化、砂目形状により、ムラの少ない安定した網点を再現でき、とくに平網の均一性が高い評価を得ている。また、ネガタイプのためハイライトの点付きがよく、メリハリのある仕上がりが得られる。


          ◇         ◇


 コダックの全プレートにおけるSONORAの出荷量は、2017年で10%だったが、さらに性能が強化されたSONORA CXは商業印刷のほぼ8割の仕事をこなせる高い性能を備えたことで、さらに加速度的に導入が進み、2018年末の時点では出荷量は22%まで伸びると予測。導入社数も500社に迫る勢いである。

 IGAS2018では、新聞印刷用のSONORA NXを初披露する予定。今後も市場のニーズに応じた様々な改善を行っていく。

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