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躍進企業REPORT

セントラルプロフィックス:「KBD V-Color」で特色インキを簡単に調色

印刷ジャーナル 2024年6月25日
2台の「KBD V-Color」を効率的に活用
佐野 工場長
高橋 氏

手間とコスト、時間を削減、生産性も向上


 プロセスインキでは表現できない色鮮やかな色域も表現できる「特色インキ」。しかし、価格の値上げで一層コストがかかるようになった上に、手間もかかるため、敬遠する印刷会社も少なくない。そんな中、(株)セントラルプロフィックス(本社/東京都中央区、田畠義之社長)は、(株)光文堂が提供するカラーステーションシリーズ「V-Color(印刷インキ用CCMシステム)」を活用することで、特色インキを自社で高精度に調色できる体制を整え、多くの特色印刷をストレスの低減を実現しつつ受注している。今回、同システムの活用により、同社がどのようなメリットを享受しているのか話を聞いた。


製版業から総合印刷業へ、近年はデジタル印刷機で新たな展開


 同社は、1950年に製版業としてスタートした企業である。当時の社名は「(株)セントラル・プロセス社」。現在の社名は、プロフェッショナルとグラフィックスからの造語であるという。豊洲工場(東京都江東区)の佐野正浩工場長は「当社はアナログ製版から始まり、高品質の写真製版に非常に強みを持っていた」と自社の歴史を振り返る。しかし、時代の流れとともに製版の仕事だけでは限界を感じ、印刷業へのシフトが不可避となった。そして、DTPが台頭し始めたころから製版だけでなく、印刷も一貫して対応できるように手を広げるようになった。

 2008年に豊洲工場を立ち上げ、四六全判印刷機を導入したことで、大判での本機校正・印刷というビジネスモデルを展開した。これは都内でも数少ない四六全判も含め24時間操業の本機校正・印刷ができる工場としてスタートしたものである。佐野工場長は「当社は一社で仕事を完結できることが大きな強みである。本機校正するような品質要求度の高い印刷物で、品質的な問題が出た時、データなのか版なのか、インキなのか、紙なのか、はたまた印刷機の問題なのか、しっかり判断ができ、正しく修正を加えられる。それぞれの分野の強みを合わせたシナジー効果により、安定した高品質な印刷を行うビジネスモデルを確立した」と説明する。

 同社は、その後も印刷機の増設を続けてきたが、コロナ禍により大きな赤字を出す事態となった。そんな状況下、兼ねてからテスト検討していたデジタル印刷機Jetpress750sを2021年に導入し、オフセットレベルの印刷品質を維持しつつ、B2サイズの小ロットにも対応できる新たな体制を整えた。同社はこれまでもデジタル印刷機としてIndigoを活用していたが、「Jetpress750sはサイズや品質安定性、ガモットの広さにおいて我々にとっても大きなメリットである」と佐野工場長は話す。

 これにより、同社はオフセットとデジタル印刷の両方をさらに活用することができるようになり、得意先のリクエストへの対応力をより高めることができたのである。


「直感的」な操作により高品質な特色の調色が可能に


 同社は平台校正部において、長年にわたり「手練り」による職人技術で調色を行ってきた。豊洲工場のプレス課 スペシャリストの高橋正和氏は、その肩書きが示すとおり、30年以上にわたって調色を行ってきたベテランである。ただ、それでも手練りによる特色調色にはある程度の時間がかかる上に、リピート仕事などの場合に同じ色を作るのは手間がかかったという。そんな中、同社が代理店から紹介されたのが、光文堂が提供するカラーステーションシリーズ「V-Color」であった。高橋氏は「誰でも直感的に操作できるところが導入のポイントになった」と話す。V-Colorは画面上の操作が直感的で特別な技術や知識がなくても、すぐに使い始めることができるのだ。

 そして現在、同社では高い色再現が求められる特色印刷の現場において、常にΔE2以内を達成できているという。これは、V-Colorの貢献度が非常に大きいと高橋氏は評価しており、「V-Colorで管理するようになってからは、以前に保存したデータから一発で色調を合わせ込めるようになり、大変助かっている」と大満足の様子だ。

 さらに、V-Colorを導入した2010年頃、同社では油性印刷機とUV印刷機を兼用していたため、油性用とUV用として2台のV-Colorを導入したが、現在は全印刷機をUV化しているため、1台を調色用、もう1台を生産用とすることで、インキを吐出する装置にデータを送信している間も、別の調色をすることができ、効率化と生産性の向上につながっているという。

 「V-Colorは直感的に操作できるため、私だけでなく、他のオペレーターでも調色ができるようになったことも大きなメリット。このため、2台のV-Colorで別々の調色を2人で行うこともある」(高橋氏)

 同社では5色機を中心に印刷機を導入しているが、2回通しや多い時は3回通しを行うこともあるようだが、例えば、映画関連の各種商材や、アニメなどの蛍光色は、複数の特色を加えないと表現できない世界であり、そこでの色管理は大変難しいものがあったようだ。そんな中、同社ではV-Colorを導入したことで、調色の迅速化と無駄なインキコストの削減を実現している。

 そして、万が一のトラブルの際も、光文堂のカラーステーション事業部の対応は迅速であるため、安心して使用できることを評価している。「不具合があった場合も、直感的に操作できる画面構成のため、電話しながら指示してもらい、その場で問題解決できる。このため、調色の作業を止めることなく、安心して使い続けることができる」(高橋氏)


カスタマイズ性の高さによる検索機能、一時保留機能なども評価


 さらに、V-Colorはカスタマイズ性の高さも大きなメリットだと高橋氏は強調している。「V-Colorはカスタマイズ性が高いため、会社独自の調色データを年々蓄積していくことで、検索機能を活用して迅速な対応が可能になる」(高橋氏)。これは特色インキの調色において、顧客の要望に合わせた調整が容易にできることを意味している。

 さらに、V-Colorの「一時保留」の機能も便利であるようで、高橋氏は「調色の途中で急ぎの調色が入ってきた場合、作業途中のデータを一時的に保留して急ぎの仕事にすぐに取り掛かることができるため、顧客を待たせることなく調色の仕事に取り掛かることができる」と、その利便性を評価する。


千葉工場への調色部門創設も検討


 同社はコロナ禍からの復帰を果たし、現在は業績も回復傾向にある。佐野工場長は、「当社は今後も高品質な特色インキを提供し続けることで、お客様の要求に応えることを第一に考えていく」と話しており、特色インキ調色技術・対応力のさらなる向上を目指してく考えだ。

 また、同社は今後、千葉工場にも調色部門を設けることを検討している。これにより、24時間対応体制を強化し、さらに多くの顧客ニーズに応えることが可能になる。佐野工場長は「調色オペレーターの育成も重要な課題と捉えており、全社一丸で取り組んでいきたい」と展望している。


 同社のV-Color導入事例は、特色インキの調色に課題を抱える印刷会社にとって大きな参考となるだろう。特色インキの調色技術の向上と業務の効率化を図ることで、同社は今後もさらなる成長を遂げることが期待される。

 なお、光文堂では「カラーステーションシリーズ」として、今回の「V-Color」の他、インキ吐出システム「KBDインキディスペンサー」、インキ混合装置「KBDスピンミキサー」なども提供している。その他、KBDスーパークリスタルインキ、KBDプロフェッショナルインキなど、各種インキとインキ周辺装置の提供で印刷会社の品質向上に貢献している。