藤原製本:RFIDタグで出版業界に革新〜表紙貼り工程で自動貼付
印刷ジャーナル 2024年6月25日
特注製本ラインの前で藤原社長(中央)とオペレーター
RFIDタグを表紙に自動貼付できる
表紙に貼付されたRFIDタグ
RFIDタグを活用して、パレットや工具を探す時間を削減するなどの社内DXを推進してきた藤原製本(株)(本社/京都市西京区、藤原智之社長)は、その利便性を活用して出版業界に革新を起こすべく、取り組みを加速させた。今年5月にRFIDタグを表紙に自動で貼り付けることができる芳野YMマシナリーの特注製本ラインを導入し、首都圏をはじめ、関西エリアの出版社にもRFIDのメリットを訴求していく。藤原社長は「出版業界全体の効率化と新たな付加価値の提供に努めていきたい」と話している。
出版業界のDX実現へ〜様々なマーケティングに活用が可能
同社は、長年にわたり出版物の製本を手がけてきたが、今年5月に芳野YMマシナリーの特注製本ラインを導入し、RFIDタグを表紙に自動で貼り付ける機能を持つ新ラインの稼働を開始した。この新ラインにより、正確・高速にRFIDタグを貼り付けることが可能になった。
特注製本ラインの導入について藤原社長は、「従来のように挟み込み方式でなく、表紙に貼り付けることで、RFIDタグの効果を最大限に活用できるようになった」と説明する。この新ラインはRFIDタグを自動で貼り付けることができる初の製本ラインとして注目を集めている。
RFID普及の動きはパブテックス社を中心に首都圏で開始されているが、同社はその流れを全国に普及させるべく、営業活動を展開していこうとしており、関西ではまだRFIDを採用している製本会社や出版社は少ないが、藤原社長は「RFIDを活用した効率的な在庫管理や防犯対策などのメリットを訴求していきたい」と話す。
RFIDタグを導入すれば、出版業界には様々なメリットがもたらされる。藤原社長は「RFIDタグを使用することで、在庫管理や物流が効率化され、万引き防止や自動レジなどにも対応できるようになる。また、立ち読みの頻度や、どの本がどれだけ棚から引き出されたかなどのデータも収集でき、マーケティング戦略にも活用できる」と説明する。まさに"出版業界のDX"が実現できるのである。さらに、消費者の行動データを収集することで、ターゲットを絞ったマーケティングが可能となり、出版物の売上向上にも寄与する。
毎時8,000回転の高速回転を維持しながらRFIDタグ貼付が可能
同社は今回、芳野YMマシナリーの製本ラインを初めて導入したという。藤原社長は「当社のニーズを伝えたところ、柔軟に対応してもらえたため、最適な製本ラインを開発してもらった。特許出願中の技術も含め、RFIDタグの自動貼り付けを実現したことは、業界初の取り組みとなった」と経緯を話す。
同社は今回、老朽化した製本ラインから芳野YMマシナリーの新ラインに切り替え、製本ラインの効率化と生産性向上も実現した。新しい製本ラインは、毎時8,000回転のスピードでRFIDタグを自動で貼り付けることができ、生産速度を維持しながら高精度な作業を実現できる。この高い生産性と正確性により、多くの出版社や書店と取引を拡大し、RFIDの普及を推進していきたい考えだ。今後、同社はRFIDタグの普及を通じて出版業界全体の効率化と付加価値向上を目指す。藤原社長は「出版社や書店との協力を深めながら、RFIDタグの導入を進めていきたい」と話す。
さらに、同社はRFIDタグの活用による新たなビジネスモデルの構築にも力を入れる。藤原社長は「RFIDタグを用いた新しいサービスを提供することで、出版業界だけでなく、印刷・製本業界にも新たな価値を提供していきたい」と展望する。RFIDタグの活用により、同社は出版社や書店だけでなく、物流や倉庫管理、イベントやプロモーションの分野にも市場創出の可能性を見出していく。
同社の取り組みは、出版業界に新たなイノベーションを巻き起こすだけでなく、製本会社の新たなビジネスモデルとして注目を集めそうだ。