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躍進企業REPORT

田中手帳:断裁中の微調整、手送りハンドルで安定した断裁品質を実現 - 勝田断裁機を活用

印刷ジャーナル 2023年9月25日
今年2月に導入した4号機の前で田中社長
「10年経っているとは思えない」という1号機の前で田中社長(中央)とオペレーター
断裁中でも「送りパルスハンドル」で微調整が可能

 「業界のために断裁機安全講習会を開催してくれるなど、本当に感謝しているんですよ」。田中手帳(株)(本社/大阪市住之江区)の田中尚寛社長は、断裁機メーカーである(株)勝田製作所の業界貢献姿勢をこのように高く評価する。しかしながら、同社では長年にわたり他社メーカーの断裁機を使用していた経緯があり、そして断裁機は寿命が長いため、導入のタイミングがなかなかなかったようだ。このため、同社が初めて勝田断裁機を導入したのは約10年前の2013年3月になるが、実際に導入した結果、断裁しながらの微調整が可能なことや、断裁刃の交換が簡単で使いやすいなど、オペレーターは断裁機としての性能を高く評価しているという。現在は全4台の勝田断裁機が稼働しており、さらに現在は5台目も発注するなど、断裁設備の主力となっている。


メーカーとしての業界貢献姿勢を高く評価


 同社は昭和12年4月に創業して以来、「手帳製本」というものづくりに情熱を注ぎ、多くの顧客企業へ製品を提供することを通じて、信用と信頼を築いてきた。そして近年はワンストップサービスによる手帳製造、そして得意のインデックス加工で事業展開を図っている。田中社長は、「綴」の文字をモチーフとした同社のシンボルマークについて「ものづくりに真摯な糸綴じにより、色々なものを束ねて、世の中に良いものをつくっていきたい。糸綴じ、かがりで開きの良い手帳を愚直につくっていきたいという思いを込めている」と話す。

 そんな田中社長は、大阪府製本工業組合では副理事長という立場にあり、業界発展への熱い思いを持っている人である。それは印刷・紙加工などの業者だけではなく、メーカーに対しても同じであり、勝田製作所については「賛助会員になっていただいているだけでも有難いのに、ほとんどボランティアで断裁機安全講習会を定期的に開催していただいていることには本当に感謝している。しかし当社では長い期間、勝田断裁機を導入することができず、申し訳ない思いを感じていた」(田中社長)との思いを打ち明ける。

 さらに、「製本組合に対して協力的なだけでなく、勝田社長の人柄や、担当していただいている営業の方のスピーディーな対応など、勝田断裁機の性能は詳しく知らなかったが、企業としての姿勢を信頼して1台目は買ったようなものである」(田中社長)と話す。そして、同社は満を持して2013年3月に1号機となる1,160mm幅の勝田断裁機を導入。この断裁機について同社のオペレーターは「とても10年経っているとは思えず、まだまだ新台という感覚」との感想を話しており、断裁機の性能としての評価を話してくれた。


100分の1mmの調整が「断裁中」でも可能


 まず、2人のオペレーターが口を揃えて評価していたのは、断裁作業の途中であっても機械を止めることなく、微調整が可能であることだ。勝田断裁機では、断裁精度の調整に自動と手動の2種類を選ぶことができ、オペレーターは「断裁の途中でも、微調整が必要だと思ったら手動に切り替え、送りパルスハンドルを回すことにより0.01mm単位で微調整が行える。当社では他メーカーの断裁機も使用しているが、断裁中でも機械を止めずにこのパルスハンドル調整ができるのは勝田断裁機だけである」と評価する。

 そして、次に評価していたのが、ソフトクランプの搭載による万が一の場合の安全性である。これは、見当ペダルによる押さえ圧力を最小限に軽くし、オペレーターの安全を守る勝田断裁機の標準装備機能で、「万が一クランプに挟まれても『イタイ』レベルで済むというと言い過ぎかも知れないが、他メーカーの断裁機よりもクランプの抑え圧力は比較にならないほど軽いので、安心して断裁作業を行うことができる」(オペレーター)。そして田中社長は「安全性に配慮する、メーカーとしての真摯な企業姿勢には信頼感を抱くことができる」と話した。

 さらにオペレーターが評価していたのは、断裁刃を取り替える際に、断裁機のタッチパネルを見ながら、誰でも簡単に交換作業が行える「スマートチェンジ機能」である。

 オペレーターは「操作を覚えたらいいと思われるかも知れないが、断裁刃の交換も頻繁に行うわけではないので、やはり時間短縮の効果も含めて便利な機能である」と評価していた。


新事業を目的に5号機を発注。同業の業界人として信頼


 同社は2013年3月に勝田断裁機の1号機を導入した後、2019年9月に880mm幅の2号機を導入、2022年2月に1,370mm幅の3号機を導入、2023年2月には880mm幅の4号機を導入し、今では断裁設備の主力は勝田断裁機となっている。

 さらに、「この度、ある新事業の計画で事業再構築補助金の採択を受けることができ、そのために5号機も発注した」(田中社長)。同社は「防災のために手帳ができること」をテーマに「TEAM EXPO 2025 共創チャレンジ 自然災害伝承碑スタンプラリープロジェクト」などを展開しているが、2023年9月1日、TEAM BUD「防災ユニバーサルデザインブック制作委員会」を設立した。

 田中社長は「平時、有事の両局面において、誰かを助け、誰かに助けられる共助の精神を持って、一人ひとりが協力し合い、共に学び合うことで、安全で持続可能な"防災社会"を築いていく。そのためにユニバーサルデザインの視点に立ち、一人ひとりの防災能力を高めていきたい」と話しており、今後も異業種とのアライアンスも組みながら、防災に役立つ取り組みを進めるとともに、企業としても「製本産業ビジョン2025」に掲げられている「第3の市場」への拡大を狙っていきたい考えだ。


 勝田製作所の企業姿勢もさながら、「勝田社長の人柄も大好きなんですよ」と田中社長。単なるメーカーとユーザーという関係ではなく、ともに製本業界、組合の発展を願う同じ業界人としての信頼は厚い。今後も業界のパートナーとして、共存共栄を目指していく考えだ。