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躍進企業REPORT

東京パック:トヨテック製自動給紙カッティングプロッターで事業領域拡大に挑戦

印刷ジャーナル 2023年4月10日
見当をカメラで読み込むため、高精度なカッティングが可能
「DG-4060IIPlus」の前で菊地次長
自動給紙で作業負荷を大幅に軽減

手軽にサンプル作成、新規案件受注に効果
事務用印刷物製造企業から脱却へ


 (株)東京パック(東京都豊島区池袋、武藤雄吾社長)は、高付加価値印刷による事業領域拡大を目指し、2022年8月にトヨテック製 自動給紙A2カッティングプロッター「DG-4060 II Plus」(以下DG-4060)を導入し、事務用印刷物を中心とした印刷会社から脱却する取り組みを展開している。導入から半年でパッケージやタグ、シール等、サンプル作成を含めると70〜80の新規案件を受注した。営業部次長の菊地洋平氏は「型が不要なため、手軽にサンプルを制作できる。実際に現物を見せて提案できるため、新規案件の受注にもつながりやすい」と話しており、事務用印刷の落ち込みをカバーするものとして期待している。

 同社は一般印刷及び紙器の製造販売を目的として創業し、今年で60周年を迎える。事務用印刷を手掛ける一方、独自の顧客を獲得していくため、2017年にはオンデマンド印刷機を導入。また、高付加価値印刷にも対応するため、断裁や折り、箔押し、PPなどの設備も導入し、現在はDTPから印刷・加工・検品・発送までを一貫生産できる体制を整えている。さらにプライバシーマークも取得しているため、DMや挨拶状、賞状などの可変印刷も手掛けている。封筒については、ECサイト「封筒印刷専門店 パーソンズプラザ」も運営している。

 ただ、近年はコロナ禍により名刺印刷の受注が激減。菊地次長は「名刺印刷が売上の3割を占めていたが、それが2割にまで落ち込んだ」と話す。この売上の落ち込みをカバーする手段として考えたのが、カッティングプロッターによる高付加価値印刷物の製造で事業領域を拡大し、事務用印刷物を中心とした印刷会社から脱却することだ。菊地次長は「折りと断裁だけでは、インパクトのある加工はできない。カッティングプロッターにより成形までを行い、より付加価値の高い印刷物を製作していくことで、事業領域を拡大できると考えた」と話す。

 そして同社は2022年8月に「DG-4060」を導入。菊地次長は「内製化の『底上げ』を図ることができた」としており、他の加工機とのシナジー効果により、設備力が足し算ではなく、掛け算的に向上したことを強調している。


自動給紙と見当精度、スピードを評価


 同社がカッティングプロッターに「DG-4060」を選んだポイントの1つは「自動給紙」であることだ。菊地次長は「自動給紙がないと生産性が非常に悪い。何社か比較したが、当社が求めていたA2に対応し、さらに見当精度やスピードを含めて検討した結果、DG-4060が最適と判断した」と話す。自動給紙のフィーダーは最大120mmまで積むことができる。

 DG-4060は、見当をカメラで読み込むため、カッティング精度に非常に優れており、それと比べると「他社製品はサンプル作成用のレベルから抜けきれていないイメージ」(菊地次長)。

 また、DG-4060はカッティングの見当精度の良さに加えて、押し圧についてもパラメーターで5段階から調整することが可能で、メディアに最適な強度を選択できる。菊地次長は「メディアごとに最適な押し圧は異なると思うので、ノウハウとして積み上げていきたい」と話す。スピードは毎秒2メートルまでの速度が可能で、パソコンに数値を入力して調整できる。菊地部長は、「他のカッティングプロッターと比較してもかなり速い。軽量のメディアの場合、速すぎて紙が持っていかれそうになるほど」。スピードについてもメディアごとに最適なスピードを見つけていく考えだ。

 また、DG-4060はファイル名と紐付けたQRコードを入れることで、異なるカットデータを読み込み、連続処理を行える。菊地次長は「数百部までの小ロット受注がメインのため、この機能により、多品種・小ロットの作業を非常に効率的に行えるようになった」と、オペレーターに作業負荷をかけずに加工が行えることを評価している。


「型」が不要で低コストにサンプル作成


 同社では、これまでもビク抜きなどの加工をともなう案件がきたことはあった。しかし、「コストや型の作成に時間がかかることから、立ち消えになることが多かった」(菊地次長)。それがDG-4060を導入してからは、型が不要で低コストかつ手軽にサンプルを作成できるため、「営業に行ってもスムーズに話が進むことが多く、実際の受注につながる確率も増えた。クライアントと商談する中、DG-4060でできそうと思えば、すぐにサンプルを作成して持っていくことも多い」(菊地次長)。これまでに70〜80件の新規案件を手掛けたということだ。

 そして、DG-4060の導入により、トナーの思わぬ使用方法を発見できたことも副産物であったという。

 「DG-4060は非常にキレイに筋入れができることも評価できるポイントだが、メディアに筋を入れたときにトナー割れが起きたことがあった。思索した結果、クリアトナーを引いてから筋入れすることで、トナー割れすることなく筋入れできることを発見した」(菊地次長)。DG-4060の導入は、同社の印刷会社としての技術力向上にもつながったようだ。

 さらに、「DG-4060を導入して半年経つが、まだまだその機能を活かしきれていない」(菊地次長)としており、今後もメーカーの(株)トヨテックと商社の(株)大塚商会のサポートを得ながら、その機能を最大限に活用していく考えだ。これにより「事務用印刷の受注もできる限り維持しながら、パッケージなど新たな事業領域に挑戦していきたい」(菊地次長)と展望する。

 さらに、「将来的には当社だけのオンリーワン製品の開発にも挑戦していきたい」(菊地次長)と期待は大きい。DG-4060は、その期待に応えるに十分な機能を秘めている。