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躍進企業REPORT

あさひ高速印刷:「断裁機は製本・後加工の『肝』」:勝田製断裁機導入

印刷ジャーナル 2020年12月5日
岡 社長
断裁後の工程とニアライン接続し、生産効率を高めている
フィンガーセンサーを搭載しているため、安全な断裁作業を実現できる

フィンガーセンサー搭載機を選択〜安全配慮は生産性向上に

 「断裁機は陰に隠れた存在だが、製本・後加工の『肝』となる重要な役割を担っている」。断裁機の重要性をこのように語るのは、あさひ高速印刷(株)(本社/大阪市西区江戸堀2-1-13)の岡達也社長だ。同社は今年8月、20年以上使用していた断裁機を勝田製作所の断裁機に入れ替えで導入した。同断裁機にはフィンガーセンサーが搭載されているため、オペレーターは指詰めなどの怪我を気にすることなく、本来の断裁作業に集中できる。岡社長は「安全性への配慮は生産性向上につながると判断した」と導入に至ったポイントについて話しており、製本・後加工のさらなる効率化を推進していく。

 同社の断裁設備は現在、勝田製作所が3台と他社製のものが1台。印刷製本グループの水野一郎課長は「私が入社した30年前には、すでに勝田製断裁機は設備されていたと記憶している」と話しており、勝田ユーザーとしての歴史はかなり古いと言えるだろう。

 そもそも断裁機は寿命が長く、10年〜20年は普通に使用できる。このため、岡社長も「私が家業に戻ってから20年になるが、断裁機を買い換えたのは今回が初めて」とのこと。今回、勝田断裁機と入れ替えで出した他メーカーの断裁機についても「使おうと思えばまだまだ使えた。しかし断裁機はなかなか壊れないため、買い換えのタイミングが難しい。今回、現場から買い換えたいとの要望があったため、新しい断裁機に更新することにした」。基本的に、設備の導入については現場の意見を第一に尊重するのが岡社長の方針であるようだ。

 今回、同社が導入した勝田断裁機には、フィンガーセンサー(オプション機能)が搭載されており、岡社長は「断裁作業の安全性が保証された分、オペレーターは本来の断裁作業に集中できるようになり、生産性向上につながると判断した」と話す。また、水野課長も「実際、オペレーターの精神的不安はかなり軽減されたのではないか」とフィンガーセンサーについて評価している。

商社から「勝田を選べば間違いない」と太鼓判

 同社は社内一貫生産で様々な印刷・製本、関連サービスを展開する総合印刷会社。とくに小ロット冊子などの頁物を得意としており、「今ではオンデマンド印刷機がワンフロアを占めるまでになった」と岡社長。3台のオフセット印刷機のほか、オンデマンド印刷機はカラー4台、モノクロ2台を所有している。今年9月には、業界注目のプロダクションプリンター「Iridesse」も導入したようだ。
 岡社長は「断裁機はいわば陰の存在。しかしオフセットでもオンデマンドでも避けては通れない工程が断裁であり、その断裁精度や生産性はそのさらに後工程にも影響を及ぼす。つまり、後加工の『肝』ともなる重要な役割を担っているのが断裁である」と、断裁工程の重要性を強調する。

 そして、そのメーカー選定については「断裁機を買うのは初めてであったが仲介の販売商社からも『勝田製作所を選んでおけば間違いない』と太鼓判を押され、あえて別のメーカーを選ぶ理由も見つからなかった」(岡社長)と説明する。

3台の断裁機を中綴じライン、無線綴じラインに組み込んで活用

 同社では、無線綴じライン、中綴じラインをそれぞれニアライン接続となるように配置しており、これにより印刷物の移動の手間を省き、生産効率を高めている。

 このため、3台の勝田断裁機についても、無線ライン専用、中綴じライン専用と化粧裁ち専用に分けて使用している。オペレーターも可能な限り、無線綴じと中綴じで専任の慣れた担当者が作業することで生産性を高めている。ちなみに他社メーカーの断裁機については、段ボールや板紙の専用機として活用しているようだ。

 これらの断裁機を使用する際、同社ではフィンガーセンサー搭載機も含めて勝田製作所製の紙を押さえる「コツ」(まもるくん)を使用しているが、同社ではこれをオペレーターの身長や手の大きさなどに応じて使いやすいサイズ、形の製作を依頼。水野課長は「これにより、オペレーターはさらに快適な断裁作業を行えるようになった」と評価する。
また、水野課長は「勝田断裁機は力を入れなくても『アテ』の部分をパワステのように動かすことができる(送りパルスハンドル操作)。他社製に比べると動きもスムーズで、作業を早くできるように感じる」と話す。

 さらに、断裁刃を交換する際もタッチパネルのモニターに作業手順が表示されるため「熟練工でなくても、作業手順に従うだけで断裁刃の交換ができる」とその使いやすさを評価している。

環境配慮の紙を推奨しながら本の価値をPR

 同社は徹底した環境基準を達成した「グリーンプリンティング認定工場」である。コロナ禍は印刷業界全体に甚大な打撃を与えたが、岡社長は「当社ではコロナよりもむしろ、環境保全に対する世間の意識に危機感を抱いている」としており、FSC認証紙や環境対応インキなどを利用した印刷物をクライアントに提案しながら地球環境保全に貢献していく考えだ。

 「環境負荷の少ない紙の価値を訴えていきながら、付加価値の高い冊子などをクライアントに提案していきたい。当社はDTPから製本・後加工までを一貫生産することを強みとしているが、印刷物に付加価値を与えられるのは『後加工』の部分であり、クライアントが付加価値を感じるのもその部分である。一貫生産できる当社の強みの意味合いをもう一度、改めて考えながら後加工に力を入れていきたい」(岡社長)

 岡社長の言葉のとおり、断裁機は主役というよりはむしろ裏方。しかしその重要性は説明するまでもなく、後加工の重要な役割を担っている。後加工にさらに力を入れていく同社にとって、勝田断裁機を選択した判断に間違いはなかったようだ。