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パッケージ印刷の世界市場規模は、2020年の3,521億米ドルからCAGR4.2%で成長し、2025年には4,334億米ドルに達すると予測されている。国内では、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、2020年度は久々のマイナス成長となったものの、商品のブランド価値向上につながるパッケージ分野の印刷市場は紙器・軟包装を含め、食品・飲料や医薬品が牽引する形で、今後も成長が期待されている。そこで弊紙「印刷ジャーナル」では、「成長市場を追う − パッケージ印刷ビジネス」として特集を企画。昨今ではデジタル印刷技術を活用したパッケージ印刷の取り組みも拡大しており、その事業化に向けたソリューションや具体的な取り組み事例を紹介する。

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シンク・ラボラトリー、ブランドオーナーも認める印刷品質を「FXIJ」で実現

潜在需要の開拓を支援〜水性インクジェットで次世代軟包装印刷を提案

印刷ジャーナル 2022年6月25日号掲載

 2016年、世界初となるVOCレス設計の水性インクジェットプリンター「FXIJ」を開発し、軟包装パッケージ印刷における環境負荷低減と快適な作業環境を提案してきた(株)シンク・ラボラトリー(本社/千葉県柏市、重田龍男社長)。環境対応や多品種小ロット化といったニーズに対し、技術開発で応えてきた同社は2021年5月、自社内に水性インクジェットプリンターを活用したビジネスモデル工場「FXIJ BMF」を構築し、水性インクジェットによる理想的な軟包装パッケージ製造工場として稼働を開始し、これまで対応できなかった新たなマーケットの開拓を推し進めている。

水性インクジェットプリンターを活用したビジネスモデル工場「FXIJ BMF」

 水性インクジェットプリンター「FXIJ」は、従来グラビア印刷では、対応が難しかった極小ロット印刷と後加工工程品質、運用コストを満たす軟包装用水性インクジェットプリンター。500mm幅の印刷から始まった「FXIJ」は、1,000mm幅までの印刷に対応するなど進化を続けてきた。2019年には、FXIJ製造工場を竣工し、生産能力を強化。総床面積2,700平米に大型マシニングセンターから複合旋盤まで11機を設備し、部品の自動加工、内製化を実現し、月産最大5セットの供給体制を整えている。

 現在、「FXIJ」は3モデルをラインアップしている。「FXIJ type500」は、対応基材幅600mm(印刷幅500mm)の本体長さ6m×2mのコンパクトモデル。「FXIJ type1000 FullAuto」は、対応基材幅1,100mm(印刷幅1,000mm)のターレット搭載(自動基材交換機能付)モデル。両機ともに、CMYK+W(白)の5色機で出力解像度は1,200dpi。印刷速度は、白ありで30〜50m/分、白無しで40〜70m/分となっている。

BMFに設置されているFXIJ

 対応基材は、PET、OPP、紙に加え、「type1000」では、ナイロン、シュリンクなどにも印刷することができる。

 さらに同社では、最上位機種として表刷り/裏刷り対応ターレット搭載型「FXIJ type1000 FullAuto SP」の正式リリースも予定している。


赤字領域とされるロットにビジネスチャンス


 同社が水性インクジェットプリンターによる軟包装パッケージ印刷を提唱する狙いの1つは、潜在需要の掘り起こしによる市場の拡大だ。現在の市場では、2,000m以下の小ロットニーズがあるものの従来グラビア印刷では、コストメリットがないことから敬遠されている。さらに近年では、ブランドオーナー側の販売戦略として、季節限定や期間・地域限定といった用途など、1,000m程度の軟包装パッケージ印刷へのニーズも高まっている。

 これら限定商品は、フレキシブルな対応、つまり短納期対応が必須となる。製版工程を必要とする従来グラビア印刷では、そのコストだけでなく、オペレータの作業負荷も膨大となる。

グミの印刷サンプル

 同社は、従来グラビア印刷では、赤字領域とされる2,000m以下の小ロットをターゲットとして、デジタル印刷機の強みを生かして需要を開拓し、新たな市場創出を支援している。

スナック菓子の印刷サンプル

 実際に大手食品メーカー2社が、すでに「FXIJ」を導入し、極小ロットを中心に軟包装パッケージの内製化を図っている。この導入2社は、印刷品質はもちろんだが、自社のマーケティング戦略に迅速に対応できる軟包装パッケージ生産に対して高く評価しているという。

 加えて、VOCレスの水性インクの使用、無駄な予備や在庫を発生させないフレキシブルな生産体制など、SDGsへの対応を消費者にアピールできることも魅力となっているようだ。


自社内に軟包装パッケージ印刷のビジネスモデル工場を開設


 「FXIJ BMF(Business Model Factory)」は、700平米のスペースに2台の「FXIJ」(1,000mm幅、500mm幅)の水性インクジェットプリンターとノンソルラミネーター2台をはじめ、スリッター、巻返検査装置、三方シール自動製袋機、熱風シュリンク装置などの後加工機器を設置した本格的な水性、溶剤レスの軟包装パッケージ製造工場。デザイン部門も併設しており、印刷データを制作して印刷することにも対応している。

ノルドメカニカ製ノンソルラミネーターも設置

 同工場では、ラミネートパッケージやシュリンクラベルなど多種多様な軟包装パッケージの印刷から後加工までの一貫生産をワンストップで対応している。

 また、デジタル印刷機の強みを生かした多面付けによる複数ジョブを掛け合わせたワンパス印刷による高効率生産や、切れ目のない連続印刷、さらには同一デザイン内での色変更やナンバリング、QRコードなどバリアブル印刷機能を生かし、多品種小ロット対応だけでなく、軟包装パッケージの高付加価値化を自社実践で提案している。

バリアブル印刷やエンドレス印刷で差別化

 同社の重田社長は、「ロールtoロールによるエンドレス印刷が可能なので、長尺タイプのパッケージなども生産することもできる。さらにバリアブル印刷などを融合することで他にはない差別化パッケージとして提案できる」と、軟包装パッケージ印刷におけるFXIJの優位性について説明する。

 近年では「脱プラ」を背景に、日本製紙との連携による紙パッケージの生産にも取り組んでいる。さらに新たな市場領域への進出として、壁紙印刷などのインテリア商材も水性インクジェットで印刷し、提案を行っている。

紙製パッケージの印刷サンプル

 現在では、テスト検証やサンプル制作といった用途とは別に、ブランドオーナーからの要望があれば、実製品としての小ロット軟包装パッケージ生産も行っている。

 「印刷データをPDFに変換して印刷するだけなので、刷版などの工程を完全に排除でき、さらにデジタル印刷機の強みを生かし、校正刷りから本印刷までを柔軟かつタイムリーに対応できる」(重田社長)

 また、「FXIJ BMF」では、リモート対応もしているので遠隔地からでも印刷データ送信するだけでテスト検証を行うことも可能だ。

 さらにFXIJでは、軟包装グラビア印刷特有の高い白濃度レベルをインクジェットで再現するため、白ヘッドの解像度を下げた独自方式の特許が成立した。想定では、他社のデジタル機に対してインク使用量が1/2以下となり、ランニングコストを大幅に削減できる。


さらなる環境対応へ〜水性インクの生産も開始


 開発当初は、花王製の水性インクを使用していたが、「FXIJ」の印刷品質や後加工適性などのさらなる向上を図るため、同社では、水性インクの自社開発にも着手。2022年3月には、水性インク製造工場を建設し、本格的な自社生産を開始している。同工場は、1,000t/年の製造能力を有し、さらに天井部にはソーラーパネルを設置し、太陽光発電を利用したエコ稼働を実践している。

 さらに同社では、この水性インクの技術をグラビア印刷用途に水平展開し、VOCレス水性グラビア印刷への取り組みも行っている。この取り組みが実現することで、グラビア印刷業界全体の環境負荷低減にも寄与することができる。

 現在もさらなる機能性の強化に向け、開発継続中であるが、すでにFXIJによって生産された軟包装パッケージは、市場に提供されている。同社では、今後も「FXIJ BMF」を通じて、環境に優しく、安心・安全で、作業負荷を大幅に削減する次世代の軟包装パッケージビジネスを提案していく方針だ。