PJweb news

印刷産業のトレンドを捉える印刷業界専門紙【印刷ジャーナル】のニュース配信サイト:PJ web news|印刷時報株式会社

トップ > 特集 > [シリーズ]印刷通販サービス:「HappyPrinting」、グローバルな情報共有で差別化

[シリーズ]印刷通販サービス

特集一覧へ

みんなの印刷通販「HappyPrinting」、グローバルな情報共有で差別化

大洞印刷、「紙」の印刷受注拡大へ

印刷ジャーナル 2021年2月5日号掲載

 オランダで発祥したグローバルな印刷通販ネットワーク「HappyPrinting」。同サイトは現在、世界各国の印刷会社とパートナー契約を結びながらグローバル展開を進めており、すでに10ヵ国以上で運営が行われている。クリアファイルの印刷通販「ボラネット」などで知られる大洞印刷(株)(本社/岐阜県本巣市、大洞正和社長)は、2020年12月に同ネットワークとパートナー契約し、「みんなの印刷通販 HappyPrinting」としてグランドオープンした。グローバルな情報共有を強みとする総合印刷通販として展開し、「紙」の印刷受注拡大を狙う。


「HappyPrinting」のスタッフ(左から3番目が大洞専務)


 「HappyPrinting」は、各国の印刷パートナーがブランドやマーケティングなどの知識を共有しながら、ともに印刷会社のグローバルなネットワークを創っていくことをビジョンとするもの。大洞印刷の大洞広和専務取締役は「印刷物を通して喜びを伝えていくというHappyPrintingのコンセプトは素晴らしく、グローバルなネットワークに参加できることを誇りに思う」と話す。

 現在、パートナー企業を持つ国は、ジョージア、フィリピン、ニュージーランド、オランダ、スペイン、ノルウェー、メキシコ、ブルガリア、エクアドル、そして日本の10ヵ国。簡単に表現すると「印刷通販のフランチャイズ」ということになる。基本的には1つの国に1社のみが展開できるルールになっているようだが、今後、アメリカなどの広大な国で展開される場合、エリアを分散して2社以上で展開される可能性もあるということだ。

 当然、国や地域によってニーズや環境は異なってくるため、取扱い商品の選定などは各々の国でパートナー企業が開発していくことになる。

 「幸福感を感じられる印刷通販にするというブランドポリシーはあるが、レギュレーションの範囲内でアレンジできる。日本では『みんなの印刷通販 HappyPrinting』のキャッチフレーズで展開し、世界各国のパートナー企業とブランドとマーケティング、商品などを共有しながらグローバルな情報共有により競争力を強化していく」(大洞専務)


シンプルな操作で簡単にオンライン注文が可能
​ ​


「プラスチック印刷」のブランドイメージ払拭へ


 大洞印刷がクリアファイルの通販「ボラネット」を開設したのは2005年。クリアファイルの通販ではトップシェアとなるまで成長できたが「競合他社も頑張っているし、シェアはどこかで頭打ちとなる。このため、トップシェアを維持できたとしても、市場規模が縮小すれば、売上は下がることになる」(大洞専務)

 そのような中、売上を拡大するにはクリアファイルだけでなく「紙」の印刷もこれまで以上に拡大する必要がある。しかし、ボラネットのブランドイメージにより、大洞印刷は良くも悪くもクリアファイルなどの「プラスチック印刷」のイメージが強く、このため紙製品を売るのが難しいところがあったようだ。

 このため、新たに名刺やカタログなどの一般的な紙製品の印刷通販を立ち上げたくても「プラスチック印刷のイメージを払拭しなければ、単独での開設は難しいと考えていた」と大洞専務。そのような中、飛ぶ鳥を落とす勢いでグローバル展開を進める「HappyPrinting」からのグローバルパートナーの打診は、同社にとっても思いがけない展開であったようである。

 大洞印刷がHPのデジタル印刷機「Indigo」のユーザーであることは今さら説明するまでもないが、同社はHPデジタル印刷機のグローバル規模のユーザー会「Dscoop(Digital Solutions Cooperative)」の会員専用サイトに設備やサービスなどの会社紹介を登録していたという。これがHPのオフィシャルパートナーであるHappyPrintingの目にとまったことが運命的な出会いのきっかけとなった。

 「英語版のサイトであるため、日本企業の登録も少ないのだが、グローバルな最新マーケティング情報を共有化できることは、企業としても大きくパワーアップすることができ、紙の受注を拡大していく上でも大きな強みになると考え、パートナー契約を結ぶことにした」(大洞専務)


「成果」で差別化できる印刷通販を目指して


 「印刷業界はコモディティ化しているため、もはや商品だけで差別化を図っていくことは難しい。現在は、販促物であれば集客という成果、販売物であれば商品が売れるという成果が求められている」(大洞専務)

 このような中、「みんなの印刷通販 HappyPrinting」では、グローバルなマーケティング情報によるユーザーサポートだけでなく、大洞印刷の「印刷業界のプラットフォーマー」としてのマーケティング力やカスタマーサポートなどのサービスを融合させながら、集客や商品の販売など、印刷物の本来の目的を達成できる印刷通販を目指す。

 また、印刷品質については「ボラネットですでに分かってもらっているはず」と大洞専務。今さらアピールする必要はないということだろう。

 「高品質な製品を提供するのは当り前のことで、ユーザーにとって本当の印刷通販の価値というものは、発注が便利であったり、データのやりとりが便利で仕事がはかどったりすることだと考えている。ユーザーのビジネスに溶け込めるサービスを提供し、ボラネットに並ぶ印刷通販に成長させていく」(大洞専務)

 この点、「みんなの印刷通販 HappyPrinting」のサイトは非常にシンプルで分かりやすいデザインになっているため、初めて印刷通販を活用するユーザーでもスムーズに注文作業を進めることができそうである。「シンプルな操作で簡単にオンライン注文を行える。オンラインエディターを利用すれば、スマートかつスピーディーなデザイン制作も可能」(大洞専務)

 今後の展開について大洞専務は「今後も印刷のプラットフォーマーとして、印刷物を使ったビジネスを提供する企業を支援するサービスを提供していきたい」。大洞印刷にとっては、HappyPrintingへの参画もプラットフォーマーとしての力を強化していくための取り組みの一端に過ぎないということだ。しかし、それは大洞専務の言葉のとおり、印刷通販だけでなく、企業体としても大きくパワーアップするきっかけとなることは間違いなく、今後の動向が注目される。