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躍進企業REPORT

ヨシダ印刷:レーザー加工機「KBD Pro-vision340SⅡ」でデザイン・提案幅が拡大

印刷ジャーナル 2023年4月10日
「KBD Pro-vision340SII」の前で金沢生産部印刷課 並田課長(左)と岡田オペレーター
石田 部長
是安 部長
杉山 氏
データと「誤差」のないカッティングが可能
「紙の可能性」を拡げることができる

原点回帰-「紙」の印刷需要創出へ〜BtoC、インバウンド狙いの商材も


 ヨシダ印刷(株)(金沢本社/石川県金沢市御影町19-1、吉田克也社長)は、情報提供の手段が紙からWebに移行する中、原点回帰し、改めて「紙」の印刷需要を創出していくための取り組みを展開している。その手段の1つとして、同社は2023年2月にレーザー加工機「KBD Pro-vision340S II」(光文堂)を導入し、新たな高付加価値商材の開発に乗り出した。現在、様々なサンプル作成を進めているが、超微細なデザインでも抜く・彫るなどの加工ができる同機の導入は、デザイン・提案の幅を大きく拡げることにつながったようで、マーケティンググループの石田俊典部長は「紙の可能性を拡げることができる」として、同機の活用による紙の印刷需要創出に期待している。


 同社は1906年、紙卸商として創業。2022年よりYPG(ヨシダ印刷グループ)としてブランディングを展開しており、総合印刷のヨシダ印刷(株)、紙・包装資材販売の(株)ヨシダ洋紙、ICTサービスのワイピービズインプルーブ(株)のグループ3社の連携により、急速に変革する社会ニーズにスピーディーに対応している。

 とくに環境には先進的に取り組んでおり、1992年には水なし印刷への取り組みを開始。2012年にはそのノウハウを活かし、日本初の「水なしエコUV印刷」を開始した。カーボンオフセットなどSDGsにも積極的に取り組んでいる。昨年には社内にマーケティンググループを立ち上げ、生産部と連携してコピー偽造抑止用紙「dpペーパー」やデコプリント「Kasane」などを開発。さらに懐かしい童話と紙を楽しむ「童話ノート」をクラウドファンディングで作成するなど、「YPGの総力を結集して様々な取り組みに着手し、ブランディングを展開している」と石田部長。「童話ノート」についてマーケティンググループの杉山美幸氏は「BtoCの初めての取り組みだったが、昨年12月に目標金額を達成し、無事に成功させることができた。今後もBtoCのビジネスを展開していきたい」と話す。今年4月にはECサイトを立ち上げる予定だ。そこで販売する商材についても「KBD Pro-vision340S II」を活用した高付加価値な商材を用意する予定。コロナ禍が落ち着いたため、インバウンド向けの商材も視野に入れているということだ。


北陸地区初導入をアドバンテージに


 同社が初めて「KBD Pro-vision340S II」を知ったのは2022年の光文堂新春機材展「PrintDoors2022」。石田部長は「インターネットにより情報は手軽に入手できる時代。逆に言えば有益な情報を発信すれば届きやすい時代であるといえる」と、大量生産の時代ではない現在、高付加価値を生むためのヒントを求めて同展に視察に行ったところ、光文堂から推奨されたのが同機であったという。

 「その後、光文堂から実際に導入している企業を紹介してもらって下見に行った。現実的な話を聞くことができ、導入を後押しした。さらに、北陸地区では導入企業はないと聞き、アドバンテージになると考えた」(石田部長)

 そして、アイデア次第で同社が求める「紙の印刷需要創出」を実現できることを確信し、同機の導入を決断。2023年2月に導入後、数日間の調整期間を経て、営業用やECサイト掲載用に様々なサンプルの作成を進めている。これまでに切り絵御朱印や切り抜き文字POP、金沢駅 鼓門の販促カードや寺院のしおり、紙製クリップなどのサンプルを作成した。石田部長は「企画要素が大切な商品。昨今は金沢への観光も増えているため、記念入場券など観光関連の商品を企画していく。インバウンドの商品も企画していきたい」としている。超微細な加工が可能な同機の機能を最大限に活用していく考えだ。


データと「誤差なし」で最小0.3mm幅のレーザー加工が可能


 実際にサンプルを作成しているオペレーターに聞くと、「KBD Pro-vision340S II」の最大に評価できるポイントは、超微細なデザインでも、データと「誤差なし」でレーザー加工できる精度の高さだ。抜く・彫るなどの加工を最小0.3mm幅まで行うことができ、金沢生産部の是安大樹部長は「同じものを何十枚と抜いても、まったく同じものを作成できる」と、精密な加工精度をアピールする。

 そして、その精密な加工精度を裏付けるコメントがある。紙によってはレーザーを当てると熱で焦げてしまう場合もあるが、その対策として同社の岡田オペレーターは「出力の強度を弱くして、数回なぞるようにして抜いている」。誤差があればそれは不可能なことであり、同機の加工精度の高さを証明していると言えるだろう。「紙によって最適な出力の強度があると思うので、経験を重ねながらノウハウを積んでいきたい」(岡田オペレーター)

 また、加工スピードについてはデザインによって異なるが、実演してもらうと、名刺ほどのサイズで20秒程度、ハガキほどのサイズで37秒程度であった。岡田オペレーターは、「体感としては、十分な速度だと納得している」と話した。


紙の価値を生む新商材の開発へ


 同社では、「紙の可能性を拡げる」ための新商材を開発するプロジェクトチームを発足している。是安部長は「マーケティンググループと協力しながら意見も聞きつつ、既存設備を活用した新商材を開発していきたい」としており、「KBD Pro-vision340S II」がその重要なファクターを握っていることは間違いない。是安部長は「展開次第では、東京本社にも同機を導入したい」と話す。

 また、杉山氏は「BtoCを展開するための女性のチームも立ち上げた。BtoCの商材はBtoBにも活用できると思うので、シナジー効果を生んでいける商品を開発したい」と展望する。そして石田部長は「紙の可能性を拡げていくため、質感など材質も追求していきたい」としており、これにより紙の需要創出に努めていく考えだ。同社では、デザイン・提案の幅を拡げる「KBD Pro-vision340S II」へ大きな期待を抱いており、これによる高付加価値商材の開発に注目したい。