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躍進企業REPORT

日本印刷:エコリカLEDランプで色校正環境を継続的に標準化

印刷ジャーナル 2020年1月25日
1994年に竣工した本社外観
色見台では従来の蛍光管より本数を間引いて設置
若山営業本部長(左)と竹中部長
工務、デザイン、製版、印刷管理室などの各現場でRa97を維持

工務、デザイン、製版、印刷管理室、色見台に300本採用
5万時間の長寿命とRa97評価

 日本印刷(株)(本社/岐阜県本巣市、若山雅彦社長)は2019年12月、継続的・安定的に標準光の下で色校正を行う環境の構築を目的に、工務、デザイン、製版、印刷管理室、印刷の色見台に計300本のエコリカLEDランプを設置した。5万時間の長寿命と平均演色評価数Ra97(注1)を実現していることなどが採用のポイントになったようで、同社の若山竜也取締役 営業本部長は「当社はJapanColorを色管理の1つのルールとしているが、蛍光管のように時間とともに照度が劣化する心配がないため、色校正環境の標準化という面でも安心できるようになった」と、エコリカLEDランプの採用は品質管理の強化にもつながっていることを高く評価している。


 同社は1912年に文具・印刷業の若山商店として創業した100年以上の歴史をもつ総合印刷会社である。「ソリューション営業」を得意としており、クライアントの困りごとをハード面・ソフト面の両面から支援し、紙媒体を中心としながらもWebとの連携を行い、情報産業を担う企業としてクライアントのビジネスをサポートしている。その一方、近年では環境やSDGsもキーワードとして地域に愛される企業を目指しており、その一環として社内の予防保全、環境にやさしい商品の提供、SDGsに取り組んでいる。

 岐阜本社のほか、東京、名古屋にも営業所を構える同社では、東京の仕事などで美術館関係やキャラクター関係の仕事など、シビアな「色合わせ」を求められる仕事も多いという。若山営業本部長は「色校正会社に頼むこともあるが、近年は本機・本紙で出力したものを校正としてクライアントに確認してもらい、校正と実際の印刷物の差が出ないようにしている。コストはかかってしまうが、校正と実際の印刷物の色合いが違うことによる最終的な版の焼き直しや印刷物の刷り直しなどを行うリスクを考えると、その方が安心できる」としており、忠実な色再現を安定して出せることを強みとしてクライアントの信頼を獲得し、さらなる受注拡大につなげていきたい考えだ。

「色相の違い」の問題を継続的・安定的に解決

 同社は2010年、中部地区1号機となるハイブリッドUV印刷機を導入。また、2015年にはオンデマンド印刷機を導入したが、現場サイドではこれによる「色相の違い」の問題が出てきたという。UV印刷機と油性印刷機、オフ輪、オンデマンド印刷機では、印刷物の色の見え方に違いがでてくるという。

 そこで同社がこの問題を解決するために取り組んだのが、「JapanColor」を色管理のルールの1つとしたことだ。標準光の下で、標準濃度で刷ったものを自社の標準的な印刷物としていこうという認識のもと2016年にスタートした。しかし、それでも難しかったのがオンデマンド印刷の色相の違いであったと同社・生産管理統括の竹中裕一部長は振り返る。

 「この問題を解決するため、2015年頃からデザイン、製版部門の蛍光管を演色AAA(注2)のものに交換した。しかし、蛍光管は新しいうちはRa95以上あっても、劣化してくるに従って90台前半、へたをすると80台後半にまで落ちることもあり、印刷物を見る場所によって色が違ってくるという課題があった」と、標準光を継続的・安定的に供給するには欠けていた蛍光管のデメリットについて指摘している。

満を持して色見台のLED化を実現

 そんな同社では、これまでも色見台の蛍光管をLEDランプに交換することを様々なメーカーから提案されてきたという。しかし現場サイドではLEDランプに交換する必要性を感じながらも、予算の都合から設備費の捻出ができないもどかしさがあったという。

 そんな中、今期経営方針の柱として挙げているSDGsの取り組みとして、まず2019年11月に竣工25年目となる本社工場全館のエアコン交換と同時に、蛍光管をLED化する計画を実行した。竹中部長は「この絶好のタイミングのお陰で、色見台をはじめ、工務、デザイン、製版、印刷管理室など、色校正に関連する部署の300本の蛍光管をエコリカのLEDランプに交換することの承認を得ることができた。3社から比較検討したが、5万時間の長寿命とRa97を実現していることが当社のニーズにマッチした。また、交換作業も簡単にできそうなのがエコリカであった」とエコリカのLEDランプを選択したポイントについて説明する。

 そして同社は2019年12月、エコリカLEDランプを設置完了。その効果について竹中部長は「現場のオペレーターは、『すべての機械の色が合った。また、これまでのように見る場所によって色が違うということはなく、どこで見ても色の見え方は同じで安定している』と驚いていた」と話している。

本数の「間引き」によりさらなる省エネ化

 エコリカのLEDランプを採用したことによる期待について、若山営業本部長は「まだ採用したばかりだが、消費電力は確実に落ちるはずである。5万時間ということは、午前9時から午後5時までの日勤なら7〜8年は交換する必要がないという計算になる。また、照度が落ちることを気にする必要もないため、色校正環境の標準化という面からも、品質管理の強化にもつながっていくと期待している」と話す。

 さらに、特筆すべきはエコリカのLEDランプは十分な照度(lux)があるため、部署によっては本数を「間引き」して設置していることだ。印刷機の色見台では従来、平均6本の蛍光管を設置していたが、エコリカのLEDランプでは照度(lux)が明るすぎるため、4〜5本に間引きして設置しており、竹中部長は「6本取り付けると明るすぎて逆に色が飛ぶほどである。測定機で測ったところ3,000luxもあり、従来の倍になっていた」と説明する。

 また、同社では明るさの目安を800luxとしているため、工務と製版では、その数値に合わせた本数に「間引き」して設置しているとのことで、Ra97の演色性と2,100lmの明るさを両立しているその効果を実感しているようだ。

潜在的なクライアントの課題を見つけ、解決する企業へ

 今後の展開として若山営業本部長は「情報産業を担う企業として、クライアントや社会のニーズに応えられるよう取り組んできた。これからはクライアント自身が見つけられていない課題を見つけ、それを解決していける企業を目指したい。また、環境やSDGsなど社会的責任を果たしながら、さらなる発展に努めたい」と話す。同社の今後の取り組みに注目したい。

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(注1)Ra:演色性の単位。照明光が及ぼす物体の見え方のことで、太陽光の平均演色評価数をRa100としている。
(注2)演色AAA:JIS Z 9112に定める蛍光ランプの演色性の種類。平均演色評価数Raの最低値95以上、演色評価数R9〜R15の最低値の設定など、厳しい基準が設けられている。
(注3)ルクス(lux):照明の明るさを表す単位。