PJweb news

印刷産業のトレンドを捉える印刷業界専門紙【印刷ジャーナル】のニュース配信サイト:PJ web news|印刷時報株式会社

トップ > 躍進企業REPORT > 2017年度「SONORA Plate Green Leaf賞」受賞
躍進企業REPORT

アスコン:2017年度「SONORA Plate Green Leaf賞」受賞

印刷ジャーナル 2018年4月15日
コダック・藤原社長(右)から記念の楯を受け取るアスコン・中原社長
B縦半裁輪転機
菊全8色両面機

 コダックジャパン(藤原浩社長)は4月3日、「2017年度SONORA Plate Green Leaf Award」を日本企業として唯一受賞した(株)アスコン(本社/広島県福山市、中原貴裕社長)の授賞式を同社府中工場において開催。藤原社長から中原社長に記念の盾が授与された。また、授賞式後は、アスコンの環境負荷軽減への取り組みが紹介され、その中核をなすSONORA XJプロセスフリープレートの導入の背景や効果などが報告された。同社では、2016年10月からB縦半裁輪転機4台と菊全8色両面機2台すべてで完全無処理版SONORA XJを全面採用し、月平均1万3,000版を使用。耐刷性能も輪転機で56万通しという実績を達成している。

「職場改善」から「環境改善」へ

 「SONORA Plate Green Leaf Award」は、様々な環境対策を通して環境負荷の軽減に取り組み、とくに優れた実績を挙げているユーザーを米イーストマン・コダック社が表彰するもの。2014年に創設され、今回で4回目となった2017年度は全世界から14社が選出された。日本企業唯一の受賞となったアスコンでは、SONORA採用企業としての総合的な環境負荷低減への取り組みが評価された。
 青山商事のグループ企業として流通小売支援企業を標榜し、チラシ・DMの印刷から店舗演出用販促ツールの制作、タウン情報誌の出版、Web・映像制作、クロスメディアまで幅広い事業を展開するアスコン。環境負荷低減に向けた取り組みとして、照明のLED化やソーラーパネルの設置、低温乾燥インキ採用、電力監視装置設置などによる「CO2排出量の削減」をはじめ、90%以上の達成率を誇る「廃棄物の再資源化」、環境社会検定試験を活用した「環境への取り組みのための人材育成」という3つを重点項目に掲げ、環境対応に取り組んでいる。
 授賞式の席で挨拶に立ったコダック・藤原社長は、「138年の歴史の中でコダックは、一貫して環境負荷低減に向けた製品開発を続け、SONORAはその環境面で印刷業界に大きなインパクトを与える製品である」と述べた上で、アスコンのアワード受賞について「瀬戸内というロケーションで環境負荷低減に取り組むアスコン様が、SONORAの採用によって、大きな成果を上げられていることは大きな意義あり、非常に嬉しく思う。今後も同様の取り組みが市場のトレンドとなることを期待している」と述べ、今後も生産性かつ品質を保ちながら環境面で社会貢献できる完全無処理プレートの訴求に注力する考えを示した。
 これを受け、挨拶に立ったアスコン・中原社長は、「企業の社会的責任が増す中、働き方改革や環境への取り組みもそのひとつだと考える。正直SONORAの採用は、当初『環境』ではなく『職場改善』が目的だった。現像工程にともなうケミカル液の管理、メンテナンス、運用、廃棄という職場における作業負荷を排除したかった。その取り組みで、結果、このような環境の賞をいただき、さらに業務の省人化、効率化にも繋がっている」と説明。「今回の受賞を誇らしいと思う面もあるが、さらなる取り組みへの重責も感じている。今後も備後地区を代表する企業として、職場・環境改善を推進していきたい」と語った。
 SONORA XJプロセスフリープレートは、2015年6月の販売開始以来、既に350社を超えるユーザーが導入、優れた視認性や耐刷性、印刷適性、機上現像性能に高い評価を得ている。視認性は従来比1.5倍に向上し、耐刷性に関しても省電力UV印刷で5万枚、油性枚葉機で10万枚、オフ輪では30万枚を超える耐刷実績を持つ。
 また、コダック独自の単層構造のプレートであるため、酸素遮断層や感光層が湿し水に溶け出して、湿し水を汚染することもない。従来の現像有りプレートと同様に何の違和感もなく普通に印刷できるプレートとして印刷オペレータからも評価を得ている。
 さらに今年2月には、これまで一部のユーザーで課題とされていた耐刷性や耐傷性を大幅に向上させた「SONORA CX」を発表。耐刷性に関しては、従来の1.5倍から2倍に向上し、耐傷性も従来の現像有りプレートと同等のレベルを達成している。

当初の懸念事項をすべてクリア

 アスコンは、年間通し枚数7億超という生産量を誇り、チラシ対応のB縦半裁輪転機4台と菊全8色両面機2台を擁する府中工場(広島県府中市)がその中核を担っている。
 SONORA XJのテストは、仮運用を含めて2016年8月から約2ヵ月間行われた。まず標準カラーチャートを使ったテスト印刷を枚葉機と輪転機で各2回ずつ実施。結果はスムーズな機上現像で、損紙の増加もなかった。心配していたドットゲインの太りもなく、印刷品質も安定していたため、実際の仕事で試用しながら耐刷性を確認していった。そして、当初最低基準としていた20万通しの印刷実績も達成でき、9月に枚葉機で、10月に輪転機で刷版をSONORA XJへと完全に切り替えた。テスト期間同様、実際の仕事でもその刷り出しの早さは現像有りプレートと遜色なく、印刷品質も問題なかった。
 工場長の檀浦道征氏は、品質について「当初、ポジタイプの刷版を使っていたので、ネガタイプのSONORAの再現性を心配していた。しかし、『現像』という不安定要素がなくなったことで品質は非常に安定。平網の再現性や写真品質なども向上している」。また、インキの着肉性が高いため水を絞れる。そのためインキ乾燥時間が短縮され、輪転機ではガスの使用量削減、枚葉機では作業の効率化といったメリットに繋がっている。
 一方、視認性については当初、「現像有りプレートと比べて見にくい」と戸惑うオペレータもいたが、実際見えないことはないため、すぐに慣れたという。版面を良く確認するようになり、小さな傷にも事前に気がつくようなった。
 さらに耐傷性については、今まで以上に刷版の取り扱いが丁寧になり、品質保持の面では逆にメリットだったという。
 現在では月平均1万3,000版を使い、輪転機では56万通しという耐刷性能も達成している。

コスト削減効果は年間約200万円

 SONORAを全面採用する以前は、週に一度日曜日の夜に3時間かけて現像機の水替え作業を行い、また月に一度は2人がかりで5〜6時間かけてローラ洗浄を含む徹底した清掃作業が必要だった。こうしたメンテナンスの手間と時間が一切なくなったことで、生産性向上とコスト削減が図れている。
 現像処理工程がなくなって、製版部門ではトータル1.5人分の業務改善が図れ、その人員を他の業務に振り分けることができている。会社全体で見ると人員の適性配置によって、生産効率の向上、生産性の向上にも確実につながっている。
 さらに年間1万2,000リットルという現像液の購入費、廃液処理費などを考慮するとコストは年間で約200万円削減されている。