PJweb news

印刷産業のトレンドを捉える印刷業界専門紙【印刷ジャーナル】のニュース配信サイト:PJ web news|印刷時報株式会社

トップ > 躍進企業REPORT > POD専用工場が完成〜M&Aを起点に事業再構築
躍進企業REPORT

遊文舎:POD専用工場が完成〜M&Aを起点に事業再構築

印刷ジャーナル 2023年3月15日
木原 社長
1階に完成したPOD+製本専用工場
本社工場をリノベーション

 文字物の小ロットに強みを持つ(株)遊文舎(本社/大阪市淀川区木川東4-17-31、木原庸裕社長)は、M&Aを起点とした抜本的な事業再構築において、本社工場のリノベーションを実施。このほど、POD+製本の専用工場が完成した。

 遊文舎は、文字組版に注力し、頁物に強みを持つ印刷会社。同社が中長期的な課題としていたのが「現状の社屋にはこれ以上設備投資がスペース的に困難で、限界利益率が上がらない」ということ。木原社長は「建物も老朽化し、工場も設備が稼働しているため抜本的なリノベーションは難しい。とはいえ、新社屋に建て替えるにしても作業改善はできるかもしれないが、印刷機の設置スペースは変わらないため、生産性の飛躍的な向上は見込めないことからリスクがあると考えていた」と振り返る。

 そこで抜本的な施策に打って出る。2021年1月、京都の商業印刷会社「双林(株)」をグループ化し、M&Aによる事業拡大に乗り出した。双林は、100坪の工業用地に位置する売上2〜3億円の印刷会社で、遊文舎の本社には設置できない菊全判4色機を設備。即戦力となる16名のスタッフとともに「京都」という新たな商圏、販路も取得した。

 「双林には制作と製版部門がなく、遊文舎には菊全判4色機がない」。これらを互いに補完しあうことで協業を進めていたが、昨年10月、それまでグループ会社として走らせてきた双林を吸収合併し、遊文舎 京都工場として新たなスタートを切った。その目的は限界利益率および売上の向上、中長期的なコア人材の確保である。

 これを機に、大阪本社にあったオフセット印刷機3台を売却し、CTP出力機を京都工場に移設。さらに省エネ補助金を活用して2台のオフセット印刷機をこの京都工場に新設し、既設の菊全機とあわせて3台体制とした。

 一方、オフセット印刷機を全廃した本社工場では、リノベーションを実施して、2〜3階に点在していたPODや製本設備を1階に集約。POD+製本の専用工場として多能工化も進めていく考えだ。

 「同時に部署の再配置を実施したことで本社工場全体の動線が改善され、品質管理も含め、非常に発展性のある事業体が完成した。また、POD案件については、製造、保管、アッセンブルまでのすべてを本社工場内で完結できるようになったため、秘匿性の高い仕事も自信を持って受注できるようになった」(木原社長)

 一方、各部署の再配置を行った結果、さらに余剰スペースを確保。売上が伸びている同社では今後、制作やWeb、集客に関わる人材の増員を進めていく考えだ。

 「当社は12月決算。今期は、社員とともに課題をひとつひとつ潰しながら、合併および生産体制見直しの効果を数字として出さなければならない。これに関しては十分な手応えを感じている」(木原社長)